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ラベル らべるJoseph Maurice Ravel

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ラベル(Joseph Maurice Ravel)
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Joseph Maurice Ravel
(1875―1937)

フランスの作曲家。3月7日、スペイン国境に近いバスク地方に生まれる。音楽愛好家の父の勧めで7歳よりピアノを習い、1889年、14歳でパリ音楽院のピアノ予備科に入学する。同年、パリ万国博覧会でアジアやアフリカの異国情緒豊かな音楽に触れ、この経験は、彼が母から受け継いだバスク人の血と相まって、彼の音楽に深い影響を残した。97年からフォーレに作曲を、ジェダルジュに対位法を学ぶ。この時期、ラベルは師フォーレとエリック・サティに大きな感化を受ける。そして98年『耳で聞く風景』で楽壇にデビュー、ピアノ曲『亡(な)き王女のためのパバーヌ』(1899)など異国情緒あふれる個性的な作品を発表する。しかし批評家からはあまり認められず、ローマ賞コンクールには四度とも大賞を獲得できなかった。当時、彼はすでに新進作曲家としての地位を確立し始めていたので、この落選結果は世論の追及の的となり、パリ音楽院の院長らの辞職にまで発展する。彼に対する反感から審査員が不当な評価をしたというのが真相のようである。一方、このころ彼はピアノ曲『水の戯れ』(1901)、弦楽四重奏曲(1902~03)を発表し、新たな世代の作曲家としての名声を獲得し、文学、芸術サロンの寵児(ちょうじ)ともなる。この時期、生涯にわたって尊敬することになるドビュッシーと出会う。そして、ドビュッシーの崇拝者、詩人トリスタン・クリングゾルの詞を伴った管弦楽付き歌曲『シェエラザード』(1903)を発表した。
 その後、第一次世界大戦の勃発(ぼっぱつ)までに、ピアノ曲『鏡』(1904~05)、『夜のガスパール』(1908)、オペラ『スペインの時』(1907~09)、ディアギレフの依頼によるバレエ作品『ダフニスとクロエ』(1909~12)、管弦楽曲『スペイン狂詩曲』(1907~08)、『道化師の朝の歌』(1918)、ピアノ三重奏曲(1914)、歌曲集『博物誌』(1906)などの秀作を次々と生み出す。のちにストラビンスキーによって「スイス時計のように精密」と評されることになるラベルのきわめて明晰(めいせき)で分析的な構築力、精緻(せいち)で微細な客観性は、このころ完成されたといってよいだろう。この特徴は、朗々と歌い上げることよりも、ひそかに語りかけるようなスタイルの歌曲に顕著に現れている。
 1914年、第一次大戦勃発。2年間の野戦病院での体験、加えて17年の母の死は、彼に大きな打撃を与えるが、大戦後は活力みなぎる文化状況に鼓舞され、ラベルはジャズの影響を受けた新たな局面を強調するようになる。一幕の幻想劇『子供と魔法』(1920~25)、バイオリン・ソナタ(1923~27)、左手のためのピアノ協奏曲(1929~30)、ピアノ協奏曲(1929~31)にみられる荒々しいシンコペーション、ブルー・ノート(ブルースの独特な旋法)の使用は、その好例であろう。しかし、彼より若い新古典主義、新即物主義的作曲家と異なり、ジャズの素材は「時計細工」のような職人芸的書法のなかで処理されている。
 1927~28年、約5か月間のアメリカ演奏旅行ののち、彼の作品中もっとも有名な『ボレロ』が作曲され、28年パリのオペラ座で初演、大成功を収めた。
 1932年の自動車事故で受けた頭部の傷がもとで、37年の死までの5年間、創作を行えないばかりか、廃人同様の状態にまで悪化し、不幸な最後を終えた。なお彼には編曲作品も多く、とくにクーセビツキーの依頼によるムソルグスキーのピアノ曲『展覧会の絵』の管弦楽編曲(1922)は有名である。[船山 隆]
『H・ジュルダン・モランジュ著、安川加寿子・嘉乃海隆子訳『ラヴェルと私たち』(1968・音楽之友社) ▽V・ペルルミュテール、H・ジュルダン・モランジュ著、前川幸子訳『ラヴェルのピアノ曲』(1970・音楽之友社) ▽G・レオン著、北原道彦訳『ラヴェル』(1974・音楽之友社) ▽諸井誠著『わたしのラヴェル』(1984・音楽之友社) ▽H・H・シュトゥッケンシュミット著、岩淵達治訳『モリス・ラヴェル――その生涯と作品』(1983・音楽之友社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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