吹く(読み)フク

デジタル大辞泉 「吹く」の意味・読み・例文・類語

ふ・く【吹く/噴く】

[動カ五(四)]

㋐(吹く)空気が流れ動く。風が起こる。風が通ってゆく。「そよ風が―・く」
㋑内部から水や蒸気などが勢いよくとび出す。ふき出す。「血が―・く」「なべが―・く」
㋒今まで見えなかったものが外や表面に現れ出る。「新芽が―・く」「粉が―・いた干し柿
㋓相場が上がる。「小豆相場が―・く」

㋐(吹く)口をすぼめて、強く息を出す。また、そのようにして物に当てる。「風車かざぐるまを―・いて回す」
㋑細い口から勢いよく出す。ほとばしり出す。「銃が火を―・く」「エンジンが白煙を―・く」
㋒息と一緒に口から出す。「タバコの煙を―・く」
㋓(吹く)出す息で音をたてる。「口笛を―・く」
㋔今まで見えなかったものを外や表面に現し出す。「柳が芽を―・く」「緑青を―・いた銅像
㋕(吹く)出まかせや大げさなことを言う。「ほらを―・く」
㋖(吹く)鉱石を溶かして金属を分離させる。精錬する。「銅を―・く」
㋗(吹く)鋳造する。「鐘を―・く」
息をする。〈名義抄
[補説](1) 風が吹きわたるときの音、または口をすぼめて息を出すときの音がもとになってできた語という。(2) 1㋒と2㋔とは、結果は同じ状態を意味するが、2㋔は内部からの力や勢いがそのような状態にするという観点に基づくもの。(3) 2㋕は「また、調子に乗ってふいている」のように自動詞的にも用いる。
[可能]ふける
[下接句]明日あしたは明日の風が吹くあつものりてなますを吹く勝手な熱を吹くを吹く熱を吹く火を吹く一泡ひとあわ吹かせる法螺ほらを吹く喇叭らっぱを吹く
[類語](1吹き付ける吹き上げる吹き下ろす吹き込む吹き抜ける吹き荒れる吹きすさぶ吹き募るそよ吹く立つ起こる出る/(2吐く話す語るしゃべる物言う口を利く伝える告げる言う述べる物語る明かす説明する述懐する告白する口外こうがいする他言たごんする言い出す発言する口に出す口にする漏らす口走る抜かすほざくうそぶく

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「吹く」の意味・読み・例文・類語

ふ・く【吹・噴・嘯】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙
    1. 気体が動く。風がおこる。風が出る。
      1. [初出の実例]「狭井河よ 雲立ち渡り 畝火山 木の葉さやぎぬ 風布加(フカ)むとす」(出典古事記(712)中・歌謡)
    2. 息をする。うそぶく。〔観智院本名義抄(1241)〕
    3. 鳴く。
      1. [初出の実例]「は熊虎の声ぞ。玉篇には咆(フ)くぞ。咆は鳴なり」(出典:石山寺本法華経玄賛平安中期点(950頃)六)
    4. 水や蒸気などが勢いよく出る。噴出する。また、汗がふきだす。
      1. [初出の実例]「矢庭に胸を突かれ、疲れた総身に汗の噴く思ひをしたが」(出典:青電車(1950)〈永井龍男〉C)
    5. 水や煮物が沸騰して湯や汁が鍋・釜からこぼれる。
      1. [初出の実例]「ときのこゑほどふく風呂の中 しかけぬる茶の湯もにゆる精進食〈賀和〉」(出典:俳諧・鷹筑波(1638)一)
    6. 草木の芽が出る。
      1. [初出の実例]「臭橘(からたち)に薄緑の芽の吹いてゐるのが見える」(出典:ヰタ・セクスアリス(1909)〈森鴎外〉)
    7. 吹出物ができる。
    8. かび、粉、塩などが表面に現われ出る。
      1. [初出の実例]「青い色の丸い物で白う粉のふいた物ぢゃ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
    9. 相場が騰貴する。〔取引所用語字彙(1917)〕
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行五(四) 〙
    1. 口をすぼめて呼気を出す。また、細めにあいた口から息とともに吐き出す。
      1. [初出の実例]「ヒヲ fuqu(フク)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    2. 内部から勢いよく出す。わくように出す。
      1. [初出の実例]「を吐いて風を生して野を欲(す)う、山を(フク)」(出典:猿投本文選正安四年点(1302))
    3. すぼめた口から出す息で音をたてる。笛などの管楽器を鳴らす。
      1. [初出の実例]「枚方(ひらかた)ゆ 笛輔枳(フキ)上る 近江のや 毛野(けな)若子(わくご)い 笛符枳(フキ)上る」(出典:日本書紀(720)継体二四年是歳・歌謡)
      2. 「物の師ども、ことにすぐれたるかぎり、双調(さうでう)ふきて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)胡蝶)
    4. 大げさなことをいう。誇張していう。大言をはく。でまかせをいう。自慢する。
      1. [初出の実例]「コチワ ソラウソ fuite(フイテ) イテ」(出典:天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事)
    5. 買い手に物の値段を高くいう。ふっかける。
      1. [初出の実例]「日本人だと見りゃア百文の物を壱両ぐらいにゃアふくだらうから」(出典:西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一一)
    6. 風があたって物を動かす。
      1. [初出の実例]「わが屋戸のいささ群竹布久(フク)風の音のかそけきこの夕かも」(出典:万葉集(8C後)一九・四二九一)
    7. 金属をとりだすため、強い風を送り、火力をあげて、鉱石を溶かす。金属を精錬する。
      1. [初出の実例]「真金(まかね)布久(フク)丹生(にふ)の真朱(まそほ)の色に出て言はなくのみそ吾(あ)が恋ふらくは」(出典:万葉集(8C後)一四・三五六〇)
    8. 金属を鋳(い)て貨幣や器具をつくる。鋳造する。
      1. [初出の実例]「カネヲ fuqu(フク)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    9. 草木が芽を出す。
      1. [初出の実例]「此ほどや舞台くすせは木の芽吹」(出典:俳諧・春鴻句集(1803頃)春)
    10. かび、粉、塩などを、表面に現わし出す。「柿が粉をふく」
      1. [初出の実例]「剥げた中から緑青を吹いた様な味(み)が出てゐる」(出典:坑夫(1908)〈夏目漱石〉)
    11. (あか)をかきとる。
      1. [初出の実例]「太閤御所、風呂に御入ありつるを、〈略〉御垢にまゐらんとて吹かれけるやう」(出典:咄本・醒睡笑(1628)八)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

スキマバイト

働き手が自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事に就くこと。「スポットワーク」とも呼ばれる。単発の仕事を請け負う働き方「ギグワーク」のうち、雇用契約を結んで働く形態を指す場合が多い。働き手と企...

スキマバイトの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android