(読み)おおい

精選版 日本国語大辞典 「多」の意味・読み・例文・類語

おお・い おほい【多】

〘形口〙 おほ・し 〘形ク〙 数量が大である。たくさんである。また、程度が大きい。⇔少ない。→多く
※万葉(8C後)一五・三七五九「たちかへり泣けども吾(あれ)はしるし無み思ひわぶれて寝る夜しそ於保伎(オホキ)
※源氏(1001‐14頃)若菜下「つぎつぎ数知らずおほかりけるを、何せむにかは聞きおかむ」
無名抄(1211頃)「国々の歌枕、数も知らずおほかれど、其歌の姿にしたがひてよむべき所のある也」
おお‐さ
〘名〙

おおく おほく【多】

〘名〙 (形容詞おおい」の連用形から)
① 数量の豊富な様子。たくさん。多数。
※源氏(1001‐14頃)桐壺「朝廷(おほやけ)よりも、おほくの物たまはす」
② 全体の中で、すべてとは言えないがそれに近い部分。大部分。ほとんどの物事。
※源氏(1001‐14頃)柏木「陰陽師なども、おほくは女の霊とのみうらなひ申しければ」
③ 少数の特別な存在を除いた平均的な全体。普通。一般。
※大鏡(12C前)三「さしぬきのこしぎはなども、さはいへど、おほくの人よりはけだかく」

た【多】

〘名〙
① おおいこと。おおいもの。⇔
正法眼蔵(1231‐53)古鏡「多にあらず大にあらず」
※日本の下層社会(1899)〈横山源之助〉三「人数の多を占むる下層社会に意を置くことをせず」 〔論語‐子罕〕
② まさっていること。〔礼記‐檀弓上〕
③ ほめること。重んずること。感謝すること。→多とする

まね・し【多】

〘形ク〙 度数が多い。度(たび)重なっている。頻繁(ひんぱん)である。さまねし。
続日本紀‐天応元年(781)四月三日・宣命「天下をも乱り、己が氏門をも滅ぼす人等麻禰久(マネク)在り」

おお・かり おほかり【多】

(形容詞の連用形「多く」に動詞「あり」の付いた「多くあり」の変化したもの) 多くある。→多い
[補注]中古の特に和文では「多し」の形が用いられず、「多かり」が用いられた。

おおけ‐く おほけ‥【多】

(形容詞「おほし」のク語法) 多いこと。
古事記(712)上・歌謡「いちさかき 実の意富祁久(オホケク)を こきだひゑね」

おおし・い おほしい【多】

〘形口〙 多い。重大である。大したことである。
※雲形本狂言・八句連歌(室町末‐近世初)「おほしい事でもない程に、ゆるしてつかはさうと存る」

おお・し おほし【多】

〘形ク〙 ⇒おおい(多)

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デジタル大辞泉 「多」の意味・読み・例文・類語

た【多】[漢字項目]

[音](呉)(漢) [訓]おおい
学習漢字]2年
数や量がおおい。「多寡多少多数多多多忙多様多量過多許多最多雑多繁多
[名のり]おおし・かず・な・なお・まさ・まさる
難読数多あまた歌留多カルタ博多はかた

さわ〔さは〕【多】

[形動ナリ]多いさま。たくさん。
「草深みこほろぎ―に鳴くやどの」〈・二二七一〉

た【多】

多いこと。また、多いもの。
勝ること。重んじること。

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日本歴史地名大系 「多」の解説


たね

古代南島のうち種子島屋久島を主とする地域に置かれた律令国家南端の国。史料には多島・多禰国などとみえ、多の表記もある。八世紀初頭から九世紀前期の天長元年(八二四)まで存続し、同年大隅国に併合された。馭謨ごむ益救やく熊毛くまけ能満のまの四郡があった。島として国に準じた行政区分がなされたのは、ほかに同じく西海道の壱岐島・対馬島があり、日本列島西辺・南辺の対外的・軍事的要地すなわち辺要として位置づけられていたことによる。「日本書紀」天武天皇六年(六七七)二月是月条に多禰島人などが大和飛鳥あすか(現奈良県明日香村)の西で饗されたことが記されている。この頃から朝廷と接触があったことが認められ、同八年一一月二三日、朝廷は多禰島に使者を遣わしている(同書)。同書同一〇年八月二〇日条の帰朝報告によれば、多禰島の地図が提出され、位置について「其の国の、京を去ること五千余里。筑紫の南の海中に居り」とし、産物については「粳稲常豊なり。一たび殖ゑて両たび収む。土毛は支子くちなし莞子かま及び種種の海物等多なり」と伝えている。同書翌一一年七月二五日条には多禰人・阿麻弥人・掖玖人が来朝したことが記され、「続日本紀」文武天皇三年(六九九)七月一九日条にも多夜久やく(屋久島)菴美あまみ(奄美大島か)度感とかむ(徳之島か)が並記されている。多禰(多はこの時期まで種子島をさしていたと推測される。

「続日本紀」大宝二年(七〇二)八月一日条に「薩摩多、隔化逆命、於是発兵征討、遂校戸置吏焉」との記載があり、多島が一国に準じて設置されたとみられる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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