山梨(市)(読み)やまなし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「山梨(市)」の意味・わかりやすい解説

山梨(市)
やまなし

山梨県中北部、甲府盆地の北東部にある市。1954年(昭和29)日下部(くさかべ)、加納岩(かのいわ)の2町と八幡(やわた)、山梨、岩手(いわで)、日川(ひかわ)、後屋敷(ごやしき)の5村が合併して市制施行。市の名は古代以来の郡名による。2005年(平成17)東山梨郡牧丘町(まきおかちょう)、三富村(みとみむら)を合併。JR中央本線山梨市駅と東山梨駅があり、国道140号が市域を横断し、411号が南端を走る。笛吹川(ふえふきがわ)が秩父(ちちぶ)山地の山間から甲府盆地に流下する位置にあり、重(おも)川、日川などの支流とともにつくった複合的な扇状地状の低地と、西側の帯那(おびな)山地からなる。平地肥沃(ひよく)な水田、畑作地帯で、かつては米作養蚕が盛んであったが、1955年以降、隣接する甲州(こうしゅう)市勝沼(かつぬま)町地区や笛吹市のブドウ、モモ栽培の発展に影響されて急速に果樹園化が進み、いまでは耕地面積の94%を占める。西部の山麓(さんろく)斜面も開墾されてブドウ園が広がったが、南向きの日照に恵まれた位置にあるので、ビニルハウスによる促成栽培も進んでいる。市の中心地は、山梨市駅のある加納岩地区と、明治以降に官公署の集まっていた日下部地区とにあったが、新都市計画により、2地区は統合され新しい都市の景観がみられつつある。カーボン工場、ぶどう酒醸造工場のほかに電機・精密工業などの工場が進出し発展している。

 笛吹川畔の西側には古歌で名高い差出の磯(さしでのいそ)や、万力林(まんりきばやし)などの景勝地がある。清白寺(せいはくじ)仏殿は室町中期の建築遺構として国宝に、八幡の窪八幡神社(くぼはちまんじんじゃ)の本殿と神門などは室町中期の作として国の重要文化財に指定されている。兜山(かぶとやま)山麓に岩下温泉がある。また万力公園には旧山梨村出身の実業家根津嘉一郎(ねづかいちろう)(初代)の銅像がある。面積289.80平方キロメートル、人口3万3435(2020)。

[横田忠夫]

『『山梨市誌』(1985・山梨市)』


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