惑星(読み)わくせい(英語表記)planet

翻訳|planet

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

惑星(天体)
わくせい
planet

太陽系の惑星は、太陽の周りを公転している比較的大きな8個の天体である。太陽に近い順に、水星、金星、地球、火星木星土星天王星、海王星と名づけられ、太陽を回る天体の主要メンバーをなしている。ほかに、火星と木星の間を中心に多数公転している小惑星、海王星よりも遠い軌道を多数公転している太陽系外縁天体、太陽に近づくと尾を引いて見える彗星(すいせい)、惑星の周りを回る衛星などが、太陽系の構成天体である。
 冥王星(めいおうせい)は1930年の発見以来第9番目の惑星とされてきたが、1992年以降海王星の軌道の外を回る小型の太陽系外縁天体が多数発見され、冥王星はその一つであることが明らかになった。この問題を整理するため、2006年の国際天文学連合(IAU)総会において太陽系の惑星の定義が初めて決定された。その内容は、(1)太陽の周りを直接回っていること、(2)自己重力により球形に近い平衡形状をなすこと、(3)重力作用により自己の軌道領域から他の天体を排除して主要な天体としてふるまうこと、の3条件を満たす天体を惑星とよぶ、というものである。冥王星は小さいため、前記のうち条件(3)を満たしていないので惑星ではなく、惑星の定義のうち(1)および(2)のみを満たす天体である準惑星の一つに位置づけることになった。この結果、太陽系の惑星は上記の8星に決着した。[海部宣男]

歴史

惑星のうち、水星・金星・火星・木星・土星の5惑星は、明るいことや、天球上で恒星がつくる星座の間を移動し、時に行きつ戻りつする不思議な動きが古代から注目され、太陽・月とあわせて日月五惑星、あるいは七曜ともよばれた。5惑星の名称は、西欧ではギリシア神話の主要な神の名前になっているが、日本名は中国の陰陽五行説の五元素(木・火・土・金・水)の名称によるものである。近代以降発見された天王星・海王星・冥王星は、日本でもギリシア神話に基づく訳語が採用された。天球上の惑星の動きから中国では行星、日本では惑星と総称され、明治期には「遊星」とよばれたこともある。英語のプラネットplanetの名も、その語源はギリシア語のplanetai(さまよう人、放浪者の意)にある。
 地球を宇宙の中心とした古代~中世の天動説では、惑星の運行の合理的な説明に非常な努力が払われた。また、惑星は多彩で天球上の運動も複雑だから、神の意志、あるいは地上の王権や個人の未来を予言する天からのメッセージとして、東西の占星術において重要な役割を果たした。そうした惑星の運行は、17世紀のヨーロッパにおける地動説と天体力学の展開によって、最終的に理解されることになる。そこではティコ・ブラーエによる精密観測(~1596)、ヨハネス・ケプラーによる惑星運動の三法則の発見(1609、1618)、ガリレオ・ガリレイの望遠鏡による天体観測(1609~)が大きな役割を果たし、アイザック・ニュートンの万有引力の法則の確立(1687)で完成されたといえる。ここで従来の5惑星に惑星であることが明らかになった地球を加えて6惑星になった。第7番惑星である天王星はウイリアム・ハーシェルによる望遠鏡観測で発見され(1781)、8番目の海王星の発見(1846)ではニュートンの天体力学が主役となった。第9番惑星とされたが現在は準惑星となった冥王星の発見(1930)では、写真術の導入が大きく貢献した。[海部宣男]

惑星の分類

地球より内側(太陽の近く)を公転している水星と金星を内惑星とよび、火星をはじめ地球よりも外側を公転する惑星を外惑星とよんで区別することがある。内惑星は地球より内側の公転軌道を回るので見かけ上も太陽からあまり離れることがなく、夕方の西の空か、明け方の東の空でだけ観察することができる。また、地球と太陽の間を通るときにもっとも地球に接近し(内合)、地球から見て太陽の向こう側を通るときにもっとも地球から離れる(外合)。これに対して外惑星は地球より外側の公転軌道を回るので、地球にもっとも接近するのは地球を挟んで太陽と反対側にあるとき(衝)であり、このときは夜半前後に南中するので一晩中観察することができる。また、内惑星は地球と太陽の間を通る内合時には太陽光の当たらない面をみせ、月のように満ち欠けして見えるが、外惑星はおおむね太陽光の当たる面のみが見えるので、地球から見てあまり欠けることがない。
 惑星の物理的な分類では、8惑星のうち太陽に近い水星、金星、地球、火星の四つは比較的小さくて密度が大きく岩石質の表面をもっており、地球型惑星、あるいは小型岩石惑星とよばれる。自転周期が比較的長いこと、衛星をもっていないかあるいはもっていても数が少ないことなど、共通性が多い。これに対して太陽から遠い木星、土星、天王星、海王星の四つは直径が大きく、多量のガス成分を含んでいるため密度が小さく、また自転周期が短く多数の衛星をもっているなどの共通性が多い。以前はまとめて木星型惑星ともよばれていたが、最近の探査機などによる観測から天王星・海王星は氷ないしは液体の水を多く含む可能性が高いことから、木星・土星を巨大ガス惑星、天王星・海王星を巨大水・氷惑星とよんで区別することが多い。[海部宣男]

無人惑星探査機の成果

惑星の表面地形や大気組成、内部構造は、1960年代以降アメリカとソ連によって次々に試みられた無人惑星探査機による観測や着陸探査によって格段に理解が進み、地球との比較研究を行う比較惑星学がスタートした。火星では、アメリカのマリナー探査機などにより表面の地形が調べられ、巨大な火山や峡谷の存在、極地や地下に大量の氷があること、かつては北極域に大きな海が存在したことなどがわかった。1996年に打ち上げられたアメリカのマーズ・グローバル・サーベイヤーは火星の地下にいまも液体の水がある証拠をとらえたし、バイキング、スピリッツや最近のキュリオシティなど一連の着陸機による火星探査では、古い生命存在の可能性を探る試みも行われている。また金星は、ソ連のベネラ探査機シリーズによる軟着陸、アメリカのマゼラン探査機によるレーダー観測などによって、地表が高温で大規模な火山活動の跡で全面的に覆われていることなどがわかった。さらにアメリカのパイオニア、ボイジャーなどの探査機は、はるか遠方の木星や土星、それらの衛星などについて膨大な情報をもたらし、とくに木星のガリレオ衛星については、イオの全面を覆う火山活動、ユーロパ(エウロパ)における氷地殻の下の海の存在など、きわめて興味ある発見を行った。アメリカのボイジャー2号はさらに1986年に天王星、1989年には海王星に接近して観測を行った。1997年に打ち上げられたアメリカのカッシーニ探査機は土星を周回してその衛星を詳しく探査し、ヨーロッパが製作した子機ホイヘンスが2005年に土星の衛星タイタンに無事着陸して、タイタンの地表風景を含む貴重な映像を送ってくるという快挙を達成した。カッシーニのその後の観測で、タイタンにはメタンの巨大な湖が多数存在することもわかった。2015年にはアメリカのニュー・ホライズンズが準惑星である冥王星近くを通過して、メタンや水の氷で覆われた表面の詳細な写真を送ってきた。[海部宣男]

惑星の形成と太陽系外惑星

惑星は、太陽系だけに存在するのではない。太陽系起源論によれば、固体微粒子を含む暗黒星雲(星間分子雲)からの太陽の誕生に伴い、その周囲に形成された原始太陽系円盤の中で無数の微惑星が生まれ、それらが集積して惑星が形成されたと考えられている。その過程において、地球型惑星、小惑星帯の天体、巨大ガス惑星、巨大水・氷惑星、太陽系外縁天体の形成にも、自然な説明がなされるようになった。そればかりでなく、すばる望遠鏡など8メートルクラスの光赤外線望遠鏡や、2013年に観測を開始した大型電波干渉計ALMA(アルマ)などの観測により、銀河系の中を漂う星間分子雲から誕生する恒星、その周りを取り巻く原始惑星系円盤、円盤の中での惑星の形成も直接観測されるようになってきている。
 近年、恒星の視線速度を詳しく観測する方法が開発され、1995年のマヨールMichel Mayor(1942― )らによるペガスス座51番星を回る惑星の確認を嚆矢(こうし)として、近距離の恒星の周りを回る太陽系外惑星の存在が急速に明らかになってきた。確認された太陽系外惑星の数は2016年末で約3500個となり、観測の進展とともに急速に増えている。これらを通じて、中・小型の恒星の多くは惑星を周りに巡らせていること、わが太陽系はかならずしも惑星系の代表的モデルというわけではなく、銀河系には多様なタイプの惑星系が多数存在することが明らかになり、惑星系形成論が改めて見直されるとともに、太陽系と太陽系外惑星系との比較論である比較惑星系学も始まった。これをうけてさらに大型の30メートルクラス光・赤外線望遠鏡が計画され、またALMAにおけるミリ波サブミリ波観測の高度化などによって、惑星形成の現場の観測、系外惑星の物理状態や大気組成の観測などの大きな進展が期待されている。こうした発見は、太陽系内の惑星・衛星における生命探査の可能性に加え、広大な宇宙における生命の多様な可能性に研究者の目を開かせ、アストロバイオロジーとよぶ新たな分野が開けつつある。[海部宣男]
『宮本英昭他編著『惑星地質学』(2008・東京大学出版会) ▽吉岡一男・海部宣男編著『太陽系の科学』改訂版(2014・放送大学教育振興会) ▽海部宣男他編著『宇宙生命論』(2015・東京大学出版会) ▽岡村定矩他編著『人類の住む宇宙』シリーズ現代の天文学1、第2版(2017・日本評論社)』

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