眠る(読み)ネムル

デジタル大辞泉 「眠る」の意味・読み・例文・類語

ねむ・る【眠る/睡る】

[動ラ五(四)]《古くは「ねぶる」》
心身の動きが一時的に低下し、目を閉じて無意識の状態になる。「すやすやと―・る」
一時的に活動をやめた状態になる。利用されない状態のままである。「草木も―・るうし三つ時」「地下に―・る資源
死ぬ。永眠する。「草葉の陰で―・っている」
まぶたを閉じる。目をつぶる。
「目を―・って、何度もこの歌をうたう」〈芥川偸盗
[可能]ねむれる
[用法]ねむる・ねる――「毎晩、よく眠る(寝る)」「ぐっすり眠った(寝た)」のように心身の働きが低下して意識的な活動がない状態をいうときには、相通じて用いられる。◇「眠る」は、体が眠った状態にあることに重点があり、必ずしも横になることを意味しない。「居眠り」のようにすわった状態でも立ったままでもよい。◇「寝る」は、「さあ、寝るか」「もう寝る時間ですよ」のように横になって眠る意がある。また、今眠っていなくても眠る習慣がある場合にも使う。「寝る子は育つ」「どこででもよく寝るなあ」◇「深い眠りから覚める」のように、「眠る」に対しては「覚める」が、また「治ってきたが、まだ寝たり起きたりだ」のように「寝る」に対しては「起きる」が対応する。
[類語](1寝るまどろむ寝付く寝入る寝込む眠り込む眠りこける熟睡する熟眠する安眠する就眠する転寝うたたねする仮寝かりねする仮睡する仮眠する一眠りする一寝入りする就寝する就床する就褥しゅうじょくする床に就くしんに就く・お休みになる・御寝ぎょしんなる/(3死ぬ亡くなる死する没する果てるめいするたおれる事切れる身罷みまか先立つ旅立つ死去する死亡する死没する物故する絶命する絶息する永眠する瞑目めいもくする逝去せいきょする長逝ちょうせいする永逝えいせいする他界する昇天する往生おうじょうする落命する急逝きゅうせいする急死する頓死とんしする横死する憤死する夭折ようせつする夭逝ようせいする息を引き取る冷たくなるえなくなる世を去る帰らぬ人となる不帰の客となる死出の旅に出る亡き数に入る鬼籍に入る幽明さかいことにする黄泉こうせんの客となる命を落とす人死に物化まかくたばる絶え入る消え入るはかなくなる絶え果てる空しくなる仏になる朽ち果てる失命夭死臨終ぽっくりころり突然死即死

ねぶ・る【眠る/睡る】

[動ラ五(四)]ねむる」に同じ。
「怒りの疲労つかれようやく夜も―・るを得にき」〈蘆花不如帰
「眼を―・って運を天に任せて居た」〈漱石吾輩は猫である

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「眠る」の意味・読み・例文・類語

ねむ・る【眠・睡】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 ( 古くは「ねぶる」 )
  2. 心身の活動が低下して、目を閉じて無意識の状態になる。寝る。
    1. [初出の実例]「たそかれに涙の玉をながめつつねむらで夜はにあかすともし火」(出典:書陵部本海人手子良集(970頃))
    2. 「死をばねむると心得、生をばさめたと心得んぞ」(出典:清原国賢書写本荘子抄(1530)三)
  3. ( 多く「目をねむる」の形で用いて ) つむる。閉じる。
    1. [初出の実例]「目を眠(ネムリ)あふむいてしばらくかんがへ」(出典滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
    2. 「人々は母上の目を瞑(ネム)らせ、その掌を合せたり」(出典:即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉花祭)
  4. 死ぬ。永眠する。
    1. [初出の実例]「目が覚て眠った親を思ひ出し」(出典:雑俳・柳多留‐二九(1800))
  5. 活気が衰えたり、活動しなくなったりする。草木の葉が、しぼんだり枯れたりする。
    1. [初出の実例]「政治的野心が眠(ネム)って了った」(出典:嚼氷冷語(1899)〈内田魯庵〉)
  6. 利用、活用されない状態にある。
    1. [初出の実例]「ここに一大油田が眠っている」(出典:ある隷属国の悲劇(1955)〈中野好夫〉)
  7. 蚕が脱皮の前にしばらく活動をやめて桑を食べない状態になる。
    1. [初出の実例]「蚕は〈略〉そのあひだに四どねむります」(出典:尋常小学読本(明治三六年)(1903)五)

眠るの補助注記

類義語としては、上代からネル(ヌ)があり、両者はともにの意味で使われる。しかし、ネムルにあるまぶたを閉じる意がネルにはなく、ネルにある体を横にする意がネムルには見られないなど、意味にずれがある。「源氏物語」では、寝支度をして床に入ることをネルといい、座ったままの状態などで眠ることをネブルというような使いわけがなされているといわれる。


ねぶ・る【眠・睡】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. ねむる(眠)
    1. [初出の実例]「酒を得るに及至(いた)りて頭各一槽(かしらををのをのひとつのさかふねにをとしい)れて飲む。酔ひて睡(ネフル)」(出典:日本書紀(720)神代上(兼方本訓))
    2. 「いらへもせであるに、ねぶるかと思ひし人、いとよくききつけて」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
  3. ねむる(眠)
    1. [初出の実例]「竹取の翁、さばかり語らひつるが、さすがに覚えてねふりをり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  4. ねむる(眠)
  5. ねむる(眠)
    1. [初出の実例]「つい其処に一艘の小舟が眠(ネブ)って居る」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉二)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android