普及版 字通 「興(漢字)」の読み・字形・画数・意味
興
常用漢字 16画
[字訓] おこる・おこなう・おもむき
[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[字形] 会意
同+(きよく)+廾(きよう)。同は酒器。と廾は四手。酒器である同を、上下よりもつ形。儀礼のとき、地に酒をそそいで、地霊を慰撫することが行われた。〔礼記、楽記〕に「上下(しやうか)のを興す」とあり、上帝には(降)、地霊には興という。〔周礼、地官、舞師〕に「小祭祀には則ち興せず」とあり、小祭祀のときにはその礼を略した。地霊に酒をいで祀るとき、おそらく呪詞が唱えられたと思われるが、その語はのち〔詩〕の発想法として一の定型をなし、これを興(きよう)という。わが国の序詞・枕詞の成立と相似た関係のものである。酒を人にそそぐことを(きん)といい、新しい建造の物や器物の制作の際にも用いる。〔礼記、文王世子〕に「を興(きん)するにを用ふ」とある興は、の略体とみてよい。〔説文〕三上に「すなり」とし、字を(よ)(かつぐ)に従い同に従うもので、共同してものを起こす意とするが、地霊をよび興すのが字の原義である。それよりして、すべてものが発動し、興起する意に用いる。興趣の意は、発想としての興の引伸義であろう。
[訓義]
1. おこす、地霊をよびおこす、酒をそそいで地霊をよびおこす。
2. おきる、おきあがる。
3. おこる、はじまる、さかんになる、うごく、あらわれる。
4. おこなう、用いる。
5. たのしむ、おもむき、おもしろい。
6. 詩の発想法。主題に入るための、序詞的な表現。もとは地霊にはたらきかける呪詞的な語で〔詩〕の国風に多く遺存する。
7. と通じ、はらう、きよめる。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕興 オコル・オコス・タトヒ・タフトブ・サカユ・タトフ・オホカタ・タカシ・タクラブ 〔字鏡集〕興 サカリ・オコル・ハジメ・ヨシ・タツ・コト・シルス・ムサボル・タトヒ・ウマル・ウゴカス・ツカサドル・クシノオモ・オコス・タトフ・タフトブ・サカユ・オホカリ・タカシ・タクラブ
[声系]
〔説文〕十二下に興声として一字を収める。は「(よろこ)ぶなり」と訓し、おそらく女巫が興舞することをいう字であろう。〔文選〕の李善の〔注〕などに「興は(えつ)なり」とみえる訓は、この字であると〔段注〕にいう。またを〔説文〕に爨部三上に属し、はその省文に従って、竈(かまど)を祭るに象る字とするが、字は興に従い、鬯(かんちよう)の儀を示すもので、その声義に関係がある。
[熟語]
興悦▶・興会▶・興▶・興玩▶・興寄▶・興趣▶・興尽▶・興託▶・興致▶・興味▶・興雨▶・興雲▶・興役▶・興家▶・興化▶・興壊▶・興懐▶・興革▶・興学▶・興感▶・興起▶・興義▶・興居▶・興挙▶・興業▶・興啓▶・興慶▶・興芸▶・興建▶・興功▶・興行▶・興国▶・興作▶・興讚▶・興師▶・興思▶・興事▶・興首▶・興戎▶・興鋤▶・興昌▶・興譲▶・興寝▶・興仁▶・興衰▶・興積▶・興羨▶・興繕▶・興替▶・興治▶・興築▶・興長▶・興騰▶・興動▶・興道▶・興廃▶・興敗▶・興発▶・興富▶・興舞▶・興奮▶・興文▶・興兵▶・興輔▶・興慕▶・興邦▶・興謗▶・興亡▶・興勃▶・興名▶・興滅▶・興門▶・興妖▶・興利▶・興立▶・興隆▶・興慮▶
[下接語]
一興・逸興・雲興・佳興・感興・義興・吟興・降興・高興・座興・再興・作興・詩興・酒興・秋興・夙興・春興・振興・新興・酔興・清興・盛興・即興・中興・迭興・日興・廃興・比興・悲興・不興・風興・復興・勃興・遊興・余興・隆興
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報