日本大百科全書(ニッポニカ) 「親鸞(丹羽文雄の小説)」の意味・わかりやすい解説
親鸞(丹羽文雄の小説)
しんらん
丹羽文雄(にわふみお)の長編小説。1965年(昭和40)9月から69年3月『産経新聞』連載。1969年新潮社刊、全4冊。青年親鸞と既成仏教の形式主義への懐疑、師法然(ほうねん)との出会い、仏門に例のない妻帯、妻恵信尼(えしんに)への愛情、2人の間に生まれた子供たちの成長、北陸や東国への流罪とその生活、弟子たちとの関係、息子善鸞の邪教への接近と謀反、晩年の教義理解の深化などを、ただ表面的に描くだけでなく、内面化して造型している。また教義などに重点を置き、時代状況や歴史的環境などを実証的に克明に描写した異色の歴史小説でもある。
[松本鶴雄]
『『親鸞』全4冊(新潮文庫)』