難しい(読み)ムズカシイ

デジタル大辞泉 「難しい」の意味・読み・例文・類語

むずかし・い〔むづかしい〕【難しい】

[形][文]むづか・し[シク]《「むずかるむつかる)」と同語源。「むつかしい」とも》
理解や習得がしにくい。複雑でわかりにくい。難解である。「説明が―・い」「―・い文章」⇔易しい
解決するのが困難である。「―・い事件」「―・い注文」「―・い病気」⇔易しい
実現するのが不可能に近い。「生還は―・い」「登頂は―・い」⇔易しい
状況などが込み入っていて、対処するのがやっかいである。「立場が―・くなる」「事態を―・くする」
人の扱いがめんどうである。「一緒に仕事をするのに―・い相手」「―・い年頃」
好みなどがうるさい。「服装に―・い人」
機嫌である。「―・い顔をする」
不愉快である。うっとうしい。
女君は、暑く―・しとて」〈・若菜下〉
むさくるしい。きたない。
「かく―・しき所にのみこもり侍れば」〈宇津保・吹上上〉
10 気味が悪い。
「あな―・しと思ひける心地皆さめて」〈夕顔
[派生]むずかしがる[動ラ五]むずかしげ[形動]むずかしさ[名]
[類語](1分かりにくい難解詰屈きっくつ晦渋かいじゅう深遠高度ハイブロー歯が立たないしち難しい小難しいちんぷんかんちんぷんかんぷん不可解至難/(2かた困難至難/(3望み薄無理困難不可能・実現不能・駄目だめ出来ない相談絶望的・期しがたい・手詰まり膠着こうちゃくにっちもさっちも八方ふさがり進退これきわまる動きが取れないお先真っ暗行き詰まる切羽詰まる挫折頓挫立ち往生壁に突き当たる暗礁に乗り上げる/(4ややこしい煩わしい煩雑複雑面倒厄介難儀煩瑣はんさ煩多錯雑錯綜さくそうしち難しい入り組んだ込み入った手が込んだ世話手数てかず・てすううるさい面倒臭いやかましいくだくだしいうっとうしいこうるさい気詰まりしち面倒しち面倒臭い気が重い気が進まない気乗り薄うんざり億劫おっくう渋る投げ遣り大儀懶惰らんだ横着怠慢怠惰不精懈怠けたい世話が焼ける手が掛かる冗長繁簡ごたごたもつれる入り乱れる紛糾ごっちゃ乱雑雑然/(5持て余すてこずる苦労困る弱る参る窮するこうずる苦しむ困り果てる困り切る困り抜く困却する往生する難儀する難渋する閉口する困惑する当惑する途方に暮れる手を焼く手に余る手に負えない手が付けられない手が掛かる世話が焼ける始末に負えない始末が悪い如何ともし難い度し難い

むつかし・い【難しい】

[形][文]むつか・し[シク]むずかしい

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精選版 日本国語大辞典 「難しい」の意味・読み・例文・類語

むずかし・いむづかしい【難・六借】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]むづか〘 形容詞シク活用 〙 ( 古くは「むつかしい」→語誌。「むずかる(むつかる)」と同源 )
  2. 機嫌が悪い。不快な表情や態度をあらわに見せている。
    1. [初出の実例]「北の方にはかかる事なんとけしきも見せ奉り給はず、ただおほかたいとむつかしき御けしきにて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)
    2. 「彼は失望に堪へぬ険渋(ムヅカシ)い顔をして」(出典多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉後)
  3. 気に入らず不愉快である。気持が晴れないでうっとうしい。むしゃくしゃする。
    1. [初出の実例]「けふうちへ参らで、こもりものすれば、むつかしうおもほゆるかな」(出典:宇津保物語(970‐999頃)内侍督)
  4. 正体の知れないもの、なじみのないものに対して、気味が悪い。不安で恐ろしい。
    1. [初出の実例]「右近は、ただあなむつかしと思ひける心ち、皆さめて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
  5. 風情がなくてむさくるしい。よごれてきたない。
    1. [初出の実例]「げに、かくむつかしき所にのみ籠り侍れば、いとど拙き心地するを」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上上)
  6. ごたごたとして煩わしい。うるさい。面倒だ。
    1. [初出の実例]「御物忌み何やと、むつかしうつつしませ奉り給」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
  7. 回復しにくいほど病気が重い。
    1. [初出の実例]「宮依風発給、従西京辺還給了。〈略〉若猶六借坐給者、可支度也」(出典:高野山文書‐久安四年(1148)四月三日・御室御所高野山参籠日記)
  8. 理屈論理が複雑で理解しにくい。解きほぐしがたく入りくんでいる。
    1. [初出の実例]「坊主の身持をむつかしう仕置かれて、女房を持たせず、魚を食はせず、嘘をつくな、酒を飲むななど」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)四)
    2. 「『ナショナル』の『フォース』と言へば、なかなか難敷(ムツカシイ)書物だ」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)
  9. 困難でおぼつかない。まったく不可能というわけではないが、それに近い状態である。
    1. [初出の実例]「何ともむつかしき僉儀にて」(出典:浮世草子・西鶴諸国はなし(1685)三)
  10. 意地が悪いなど、性格が素直でなくてとりつきにくい。理屈がちであったりして気軽に接しにくい。
    1. [初出の実例]「事に触れて悪ざまにて、六借からん者をば、仕べからず」(出典:六波羅殿御家訓(13C中)第一条)

難しいの語誌

( 1 )室町期まではムツカシと清音である。ムヅカシが出てきたのは近世末といわれ、以後、両語が並存している。
( 2 )現在、新聞や放送用語、教科書などではムズカシイを採っており、一般にはムズカシイがかなり優勢になってきている。

難しいの派生語

むずかし‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙

難しいの派生語

むずかし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

難しいの派生語

むずかし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

むつかし・い【難】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙むずかしい(難)

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