(読み)ラ

デジタル大辞泉 「等」の意味・読み・例文・類語

ら【等】

[接尾]
人を表す名詞代名詞などに付く。
㋐複数で、一つにとどまらないこと、その他にも同類があることの意を表す。「君
「藤原のときざね、橘のすゑひら、長谷部のゆきまさ―なむ御館みたちより出でたうびし日より」〈土佐
謙遜けんそんまたは蔑視の意を表す。「私」「お前
「憶良―は今は罷らむ子泣くらむそれその母も吾を待つらむぞ」〈・三三七〉
㋒親愛の意を表す。
「かもがとが見し子―かくもがとが見し子に」〈・中・歌謡〉
名詞に付く。
㋐語調を整える。「野
「豊国の企救きくの高浜高々に君待つ夜―はさ夜更けにけり」〈・三二二〇〉
㋑事物をおおよそに示す意を表す。「今日
「この男の友だちども集まり来て、言ひなぐさめなどしければ、酒―飲ませけるに」〈平中・一〉
指示代名詞に付いて、事物・方向・場所などをおおよそに示す意を表す。「あち」「ここ」「いく
「山ならねども、これ―にも、猫のあがりて」〈徒然・八九〉
形容詞語幹擬態語などに付いて、その状態であるという意の名詞または形容動詞の語幹をつくる。
「あなみにくさかし―をすと酒飲まぬ人をよく見ば猿にかも似る」〈・三四四〉
「浜に出でて海原見れば白浪の八重折るが上に海人小舟はら―に浮きて」〈・四三六〇〉
たち[用法]
[類語]とう等等

とう【等】[漢字項目]

[音]トウ(呉)(漢) [訓]ひとしい ら など
学習漢字]3年
でこぼこがなくそろっている。ひとしい。「等価等分均等対等同等平等びょうどう不等式
順序段階クラス。「等級高等差等初等上等親等特等品等優等
同列仲間。「等輩郎等ろうどう・ろうとう
[名のり]しな・たか・とし・とも・ひとし
[難読]等閑なおざり

など【等/抔】[副助]

[副助]副助詞なんど」の音変化》名詞、活用語の連用形、一部の助詞などに付く。
一例を挙げ、あるいは、いくつか並べたものを総括して示し、それに限らず、ほかにも同種類のものがあるという意を表す。…なんか。「赤や黄―の落ち葉」「寒くなったのでこたつを出し―する」
「よき程なる人に成りぬれば、髪上げ―さうして」〈竹取
ある事物を例示し、特にそれを軽んじて扱う意を表す。否定的な表現の中で多く使われる。…なんか。…なんて。「わたしのこと―お忘れでしょう」「金―いるものか」
婉曲に言う意を表す。…でも。…なんか。「お茶―召しあがりませんか」「今インフレに―なったら大変だ」
「そこ近くゐて物―うち言ひたる、いとをかし」〈・四〉
(引用句、または文を受けて)それが大体の内容であることを表す。…というようなことを。「断る―とは言っていられまい」→なぞ(副助)なんぞ(副助)なんか
「心あてに、それか、かれか、―問ふなかに」〈・帚木〉
[類語]でもとかなんかなんてなんぞなぞ

とう【等】

[名]段階。等級。階級。「刑罰を減じる」
[接尾]
同種のものを並べて、その他にもまだあることを表す。など。「英・仏・独のEU諸国」
助数詞。階級や順位を数えるのに用いる。「一、二
[類語](1がた等等

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精選版 日本国語大辞典 「等」の意味・読み・例文・類語

ら【等】

  1. 〘 接尾語 〙
  2. 名詞に付いて、語調をととのえる。
    1. [初出の実例]「香ぐはし 花橘(はなたちばな) 下枝(しづえ)(ラ)は 人皆取り 上枝(ほつえ)は 鳥居枯(ゐが)らし」(出典:日本書紀(720)応神一三年三月・歌謡)
  3. 名詞に付いて、それと限定されない意を表わす。
    1. (イ) 事物をおおよそに示す。
      1. [初出の実例]「彌彦神の麓に今日良(ラ)もか鹿の伏すらむかはごろも着て角つきながら」(出典:万葉集(8C後)一六・三八八四)
      2. 「この男のともだちどもあつまり来て、言ひなぐさめなどしければ、酒ら飲ませけるに」(出典:平中物語(965頃)一)
    2. (ロ) 主として人を表わす語また指示代名詞に付いて、複数であること、その他にも同類があることを示す。
      1. [初出の実例]「あみの浦に船乗りすらむをとめ等(ら)が玉裳の裾に潮満つらむか」(出典:万葉集(8C後)一・四〇)
      2. 「秦の趙高、漢の王莽、〈略〉是等は皆旧主先皇の政にもしたがはず」(出典:平家物語(13C前)一)
    3. (ハ) 人を表わす名詞や代名詞に付いて、謙遜また蔑視の意を表わす。自分に対する謙遜の気持は時代を下るとともに強くなり、相手や他人に対する用法は、古代では愛称、中世頃からは軽蔑した気持を表わす。
      1. [初出の実例]「斯(か)もがと 我(わ)が見し子良(ラ) 斯くもがと 吾(あ)が見し子に うたたけだに 向かひ居(を)るかも い副(そ)ひ居るかも」(出典:古事記(712)中・歌謡)
      2. 「憶良等(ら)は今は罷らむ子泣くらむそれその母も吾(わ)を待つらむそ」(出典:万葉集(8C後)三・三三七)
  4. 指示代名詞またはその語根に付いて、事物をおおよそに指す。不定で「いづら、いくら」は上代からあって「どのあたり、どれくらい」の意を表わしていると見られる。また、場所・方角で「ここら、そこら」「これら」「こちら、あちら」などがあり、近世には「ここいら、そこいら」など「いら」となったものもある。
  5. 形容詞の語幹、擬態語などについて、状態性の意の形容動詞語幹をつくる。→らか
    1. [初出の実例]「横臼(よくす)に 醸(か)みし大御酒(おほみき)(うま)(ラ)に 聞こし以ち食(を)せ まろが親(ち)」(出典:古事記(712)中・歌謡)
    2. 「浜に出でて 海原見れば 白浪の 八重折るが上に 海人小舟(あまをぶね) はら良(ラ)に浮きて」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三六〇)

な‐ど【等・抔】

  1. 〘 副詞助 〙 ( 「なにと」が「なんど」を経て変化したもの ) ほかにも同類のもののある中から一例として示す意を表わす。
  2. 体言または体言と同資格の語句を受けて用いられる。
    1. (イ) 体言を受けて、類例を例示または暗示しつつ、代表として指し示す。
      1. [初出の実例]「殿の内の絹・綿・銭などある限り取り出てて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「めったに旅行などしたことのない要は」(出典:蓼喰ふ虫(1928‐29)〈谷崎潤一郎〉九)
    2. (ロ) 引用文を受けて、おおよそのところを示す。
      1. [初出の実例]「此の度はいかでか辞び申さん、人さまもよき人におはすなと言ひゐたり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「仏の御心にとほざかるかたもあるべし、なとさまざまにおぼえ侍りき」(出典:閑居友(1222頃)下)
  3. 体言・形容詞連用形・副詞などを受け、漠然とさすことによって表現をやわらげる。
    1. [初出の実例]「ゆあみなどせんとて、あたりのよろしき所におりてゆく」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月一三日)
    2. 「其頃は方角もよく分らんし、地理抔(ナド)は固より知らん」(出典:倫敦塔(1905)〈夏目漱石〉)
  4. ある事物を取り立てて例示する。
    1. [初出の実例]「我などをばかくなめげにもてなすぞと、むづかり給ふ」(出典:大鏡(12C前)三)
    2. 「女の事など許りくよくよ考へて」(出典:野菊の墓(1906)〈伊藤左千夫〉)

等の語誌

( 1 )根本的な意味は、他にも類例のある中から取り立てて指示するところにある。すなわち、その根本義にもとづく用法がであるが、これから、の漠然と指示する用法を派生する。の取り立て用法も、同類のものが暗示されることによって可能となる。
( 2 )は、暗示される事物を、種類としては同類と認めながら、価値としては相反するものと認めることによって生ずる用法であるが、価値の低いものが例示される場合が多いため、軽蔑を表わす用法などともいわれる。しかし、挙例の「大鏡」のように価値あるものが例示されることもある。
( 3 )語源が「なにと」(→なんど)にあるため、古くは(ロ) のような引用の場合にも下に格助詞「と」の付かないのが普通であったが、語源意識が薄れると、「と」が付くようになり、中世末以降は付く方が一般的になる。
( 4 )中古の訓点資料には例が見られないが、それはこの語の成立が古くないからだといわれる。また、中古の和歌にも用いられていない。


なん‐ど【等・抔】

  1. 〘 副詞助 〙 ( 「なにと(何━)」の変化した語 ) =など(等)
  2. 体言、または体言と同格の語句を受けて、(イ) 類例を例示または暗示しつつ代表としてさし示す。
    1. [初出の実例]「めのと・うなゐ・下仕なんどかたち・心ある中にまさりたるを選り」(出典:宇津保物語(970‐999頃)藤原の君)
    2. (ロ) 引用文を受けて、おおよそのところを示す。
      1. [初出の実例]「『またるるものは』なんどうち笑ひて」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
  3. 体言、用言の連用形、副詞などを受け漠然とさすことによって表現をやわらげる。
    1. [初出の実例]「定めたる里なんどもまうけ給はざなるを」(出典:宇津保物語(970‐999頃)藤原の君)
  4. 体言、用言の連用形などを受け、ある事物を取り立てて例示する。
    1. [初出の実例]「それに取りて身燈入海なんどはことざまもあまりきはやかなり」(出典:発心集(1216頃か)三)

等の補助注記

語源については「何孰(なにど)れ」とする説〔松下大三郎「改撰標準日本文法」〕もあるが、「土左‐承平四年一二月二七日」の「これかれ酒なにともて追ひ来て」に見られる「なにと」を語源とするのが妥当であろう。nanito → nando → nado と変化したと考えられ、むしろ「なんど」は「など」の原型と考えられる。撥音表記の固定していなかった中古に「など」と表記されたものは「なんど」の発音であった可能性もある。


とう【等】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 物事の格付けをさしていう。しな。わかち。
    1. [初出の実例]「死刑に処する罪人でさへ、その情状を酌量して等を減ずるのが今日の趣意ぢゃ」(出典:歌舞伎・月梅薫朧夜(花井お梅)(1888)一幕)
    2. [その他の文献]〔礼記‐学記〕
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙
    1. 物事を列挙する際、その一部だけを示して他を省略するのに用いる。など。たぐい。
      1. [初出の実例]「堂衆に語らふ悪党と云は、諸国の竊盗、強盗、山賊、海賊等(トウ)〈高良本ルビ〉也」(出典:平家物語(13C前)二)
      2. [その他の文献]〔漢書‐韓信伝〕
    2. 階級や順位を数えるのに用いる。
      1. [初出の実例]「大納言 勲一等」(出典:令義解(718)官位)

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普及版 字通 「等」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 12画

[字音] トウ・タイ
[字訓] ひとしい・はかる・まつ・ともがら

[説文解字]

[字形] 形声
声符は寺(じ)。寺に待(たい)・特(とく)の声がある。〔説文〕五上に「齊(ひと)しきなり。竹に從ひ、寺に從ふ。寺は宮曹の等なり」と官寺の意を含むとするが、形声とみてよい。〔孟子、公孫丑上〕「百世の後よりして、百世の王を等(はか)るに、之れに能(よ)く(な)きなり」、〔周礼、夏官、司勲〕「以て其の功を等(はか)る」のように、差等をはかる意。もと木簡の大小を整える意であろう。「まつ」の意は、待と通用の義である。

[訓義]
1. ひとしい、ひとしくする、ととのえる。
2. はかる、大小をはかる、くらべる。
3. 待と通じ、まつ。
4. 等差、貴賤、大小、しな、ともがら、たぐい。
5. なに、どんな、何等。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕等 ラ・ヒトシ・タグヒ・トモガラ/等夷 ヒトシク 〔字鏡集〕等 コレ・ナホシ・トモ・ヒトシ・トモガラ・アマネシ・ナシ

[語系]
等tng、同dongは声義近く、差等をはかってこれを同じうするを等という。また待ddi、俟ziと声近く、いずれも待つ意に用いる。唐・宋以後、等を待つ意に用いることがある。

[熟語]
等夷・等位・等異・等威・等価・等科・等閑・等間・等宜・等級・等極・等契・等候・等差・等殺・等子・等衰・等次・等叙・等身・等親・等人・等儕・等斉・等待・等耐・等第・等儔・等頭・等道・等輩・等伴・等比・等分・等別・等流・等量・等倫・等類・等列
[下接語]
異等・越等・下等・官等・均等・勲等・高等・降等・差等・初等・上等・親等・斉等・儕等・相等・対等・中等・超等・同等・何等・平等・品等・不等・優等・劣等・郎等

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