精選版 日本国語大辞典 「塵」の意味・読み・例文・類語
ちり【塵】
〘名〙
① 粉末状や粒子状になってとびちるもの。くだけてとびちるもの。ほこり。
※平家(13C前)一「たけき者も遂にはほろびぬ、偏(ひとへ)に風の前の塵に同じ」
② 小さなごみ。あくた。
※枕(10C終)一五一「二つ三つばかりなるちごの、いそぎてはひ来る道に、いとちひさきちりのありけるを目ざとに見つけて」
③ ねうちのないもの。とるにたらないもの。→塵の身。
④ よごれ。けがれ。また、くもり。汚点。
※新古今(1205)釈教・一九二六「にごりなきかめ井の水を結びあげて心のちりをすすぎつる哉〈上東門院〉」
⑥ きわめてわずかな物事のたとえ。いささか。ほんの少し。わずかばかり。
※源氏(1001‐14頃)椎本「髪〈略〉末までちりのまよひなく、つやつやとこちたう美しげなり」
⑦ さわぎ。みだれ。→塵治まる。
⑧ 先人のした仕事。遺業。→塵に継ぐ。
⑨ 残りもの。お流れ。
※年中定例記(1525頃)「御憑み今日悉く御返しすみて、残りたる物を右筆両人・御使人・同朋、御ちりとて、鬮にて給候」
⑩ 相撲で、土俵上にあがり、清めの塩をまいたあと徳俵(とくだわら)の内側にしゃがんで、両手をすりあわせて塵をひねり落とし、ぱっとひらく動作をいう。
※東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉一月暦「やがて二力士は土俵口で例のチリと云ふ挨拶をして、それから土俵の中へ進んだのださうな」
⑪ 「ちりがみ(塵紙)」の略。
※随筆・こがねぐさ(1830頃か)「なにとは知らず、ちりといへるいやしげなる紙に包みたるものを投げ入れて、その人はいづち行きけん。影だに見えず」
じん ヂン【塵】
〘名〙
① ちり。土ぼこり。ごみ。
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉二「側らに在る塵(ヂン)を取って摘(つま)み」
※法華義疏(7C前)一「衆生従来迷レ塵。神根不レ利」
※正法眼蔵(1231‐53)自証三昧「乃至眼耳鼻舌身意、根・識・塵等もかくのごとし」
④ 一の十億分の一の数。沙の十分の一、埃の十倍の数。
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