デジタル大辞泉 「例」の意味・読み・例文・類語

れい【例】

[名]
以前からのやり方。しきたり。ならわし。慣習。「長年にならう」
過去または現在の事実で、典拠・標準とするに足る事柄。「古今を見ない」
他を説明するために、同類の中から引いて示す事柄。「を挙げて説明する」「そのに漏れない」
いつものとおりであること。「によって話が大きい」
[副]いつも。つねづね。
「―ある所にはなくて」〈・二八〉
[類語](1習い習わし仕来しきた慣行慣例常例定例通例世の常世の習い例によって例のごとし如し/(2ためし先例前例先蹤せんしょう事例類例るい/(3実例一例・具体例・例証たとえ引き合いケース例外特例用例事例類例好例先例前例作例語例引例症例例示

れい【例】[漢字項目]

[音]レイ(漢) [訓]たとえる ためし
学習漢字]4年
同類の事柄。引き比べて参照すべき事柄。「例外事例前例典例判例範例類例
きまり。規定。「条例凡例はんれい法例
以前から行われている事柄。ならわし。いつもどおり。「例会例祭例年慣例吉例月例古例恒例通例定例不例
説明のため引き合いに出す事柄。「例示例証例題例文一例引例挙例実例適例文例
[名のり]ただ・つね・とも・みち

ためし【例/様】

前にすでにあったこと。先例。前例。「けんかで勝った―がない」
手本になるようなこと。模範規範
「かの御教へこそ、長き―にはありけれ」〈梅枝
[類語]先例前例先蹤せんしょう事例類例るい

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精選版 日本国語大辞典 「例」の意味・読み・例文・類語

れい【例】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 慣習となっていることがら。しきたり。以前から広く世に行なわれていること。ならわし。
      1. [初出の実例]「世の中のれいとして、思ふをば思ひ、思はぬをば思はぬものを」(出典:伊勢物語(10C前)六三)
      2. [その他の文献]〔杜預‐春秋左氏伝序〕
    2. いつもの通りであること。通常であること。普通であること。ふだん。つね。
      1. [初出の実例]「れいのおまし所にはあらで、廂におまし敷きて」(出典:大和物語(947‐957頃)一四〇)
    3. 世間によく知られていること。また、話し手と聞き手の間ですでに了解ずみのことやはっきり口に出せないことをさしていうことば。
      1. [初出の実例]「このすみよしの明神は、れいのかみぞかし」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月五日)
    4. 標準やよりどころとなる過去または現在の事柄。典例。先例。
      1. [初出の実例]「后・大殿・大臣・公卿たち心を一つにれいをひきてこれをと申さんには、何の疑ひかあらむ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲中)
      2. [その他の文献]〔史記‐礼書〕
    5. 同じような種類・内容の多くのものの中から、特にとりあげ提示して他を類推させるもの。いちれい。
      1. [初出の実例]「此方等(こちら)が様な素町人身の上に、古今公家武家の盛衰を、例(レイ)に引は勿体ない」(出典:談義本銭湯新話(1754)二)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙 いつも。つねづね。不断に。
    1. [初出の実例]「れいわずらひ侍る脚病のわづらひてなん、日頃暇文奉りて、参らず侍る」(出典:宇津保物語(970‐999頃)嵯峨院)

ためし【例・様】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 現在と比較する際に想起される ) 以前あった事柄。先例。前例。また、習慣。ならい。
    1. [初出の実例]「いにしへにありきあらずは知らねどもちとせのためし君にはじめむ〈素性〉」(出典:古今和歌集(905‐914)賀・三五三)
    2. 「楊貴妃のためしもひき出でつべくなりゆくに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
  3. てほんとなる事柄。ひきごと。引例。故事。
    1. [初出の実例]「又卜書(うらのふみ)暦本(こよみのタメシ)種々(くさくさ)の薬物(くすり)、付送る可し」(出典:日本書紀(720)欽明一四年六月(北野本訓))
    2. 「『雪は野原をうづめども、老たる馬ぞ道はしる』と云ためしあり」(出典:平家物語(13C前)九)
  4. しるし。証拠。
    1. [初出の実例]「凡受納調庸雑物者。〈略〉其絁絲綿布者。毎国品別割置為(ためし)。至于後年此比挍。違即勘返」(出典:延喜式(927)三〇)
    2. 「左の根の中にことに長きを、ためしにもとて持たせ給へり」(出典:堤中納言物語(11C中‐13C頃)逢坂越えぬ権中納言)
  5. 江戸時代の検見(けみ)の一方法。租率をきめるため、田地の任意の一坪を刈りとり、その総収穫高を推しはかること。坪刈(つぼがり)
    1. [初出の実例]「歩刈〈坪刈春穂刈、ためしとも云〉」(出典:地方要集録(1741)手代小撿見之事(古事類苑・政治七九))

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普及版 字通 「例」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

[字音] レイ・レツ
[字訓] ためし・しきたり・たとえ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は列(れつ)。列は裂骨・裂肉の意。例とは、これを以て呪禁とすることをいう。〔周礼、秋官、司隷、注〕に「例(しやれつ)なり」とあって、例を(れつ)の意に用いる。〔説文〕八上に「比なり」と比例の意とするのは、その転義。のち遮にはを用い、例は比例・慣例の意に用いる。

[訓義]
1. ためし、たぐい。
2. しきたり、ならわし。
3. おおむね、みな。
4. 国語で、たとえる、たとえ。

[古辞書の訓]
名義抄〕例 ツネナリ・トモガラ・ナラブ・モトヨリ・イカル 〔字鏡集〕例 ツネ・トモガラ・タグヒ・ツネナリ・イカル・ウカナフ・モトヨリ・ナラブ

[熟語]
例案・例仮・例外・例規・例禁・例言・例行・例刻・例子・例出・例証・例転・例話
[下接語]
悪例・異例・違例・一例・引例・恩例・家例・嘉例・慣例・義例・吉例・旧例・挙例・古例・恒例・罪例・作例・事例・実例・釈例・諸例・少例・条例・常例・正例・先例・前例・大例・断例・通例・定例・適例・典例・特例・発例・凡例・判例・範例・比例・品例・不例・文例・変例・法例・用例・流例・類例

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改訂新版 世界大百科事典 「例」の意味・わかりやすい解説

例 (れい)

律令時代に編纂された施行細則集。《弘仁式》に先立って編纂されたものとして〈八十一例〉〈式部省例〉〈治部省例〉〈民部省例〉〈刑部省例〉〈囚獄司例〉〈弾例〉などが逸文を残しており,ほかに〈六十一例〉の名も知られている。このうち〈八十一例〉は720年代の成立と推定され,律令や式と同様に〈凡〉字を冠した条文構成をとり,令文の不備を補い解釈を明確化しようとしたものであったらしい。〈式部省例〉以下の例はいわば諸司例とも総称すべきもので,その編纂の時期は各個に異なり,また同一の名称のものが2回以上にわたって編纂された可能性もあるが,おそらく720年代の後半にそれぞれ第1回の編纂が行われたと推定される。各官司ごとにその庶務執行に必要な細則を収録していて式と同一の性格を持つが,個々の条文は単行法として発令されたままの形態をのこしていて,むしろ格(きやく)に類した体裁となっている。ただし〈弾例〉は,弾正台(だんじようだい)の庶務執行に必要な細則をも含むが,大部分は行政監察や官人の非違の摘発のための基準を示したもので,勅によって下賜された。これには,旧弾例(成立年不詳,713年以後),延暦11年新弾例(792年施行),大同2年弾例(807年下賜)の3種あったことが知られる。

 以上の〈例〉の内容は,多く《弘仁式》の編纂にあたって条文として取り入れられ,《貞観式》《延喜式》へと引き継がれたためか,9世紀には〈例〉の編纂は行われた形跡がない。しかし10世紀以後には再び〈例〉が編纂されたらしく,〈延喜例〉〈御厨子所例〉〈進物所例〉〈雑例〉などの名が知られており,それぞれ若干の逸文を残している。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「例」の解説


れい

令文(りょうぶん)の不備を補ったり,令文の解釈を明確化するために出された施行細則,ないしそれらを集めた法典。式に類似する。大宝律令の施行にともない,令師(りょうのし)とよばれる明法家(みょうぼうか)の発した施行細則を整理した「八十一例」のほか,「六十一例」「弾例」「式部省例」「治部省例」「刑部省例」「囚獄司例」,和気清麻呂が撰したという「民部省例」などが知られる。体裁や内容はさまざまだが,令文と同様「凡(およそ)」の字を冠する完成形のものもある。多くは「弘仁式」にうけつがれた。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【則例】より

…中国,清代の基本行政法典である会典の運用上とくに生じた新例・疑義・補足などを各官庁ごとに編集して刊行した行政法典。中国には古来種々な法令があり,清代に及んで律・会典・例となった。…

【律令格式】より

…漢代の令は律の補足的な法規であったが,晋の泰始律令において,令は初めて律から独立し,行政法のごときものとなったといわれる。唐にいたって令は律よりも重要な根本法典となったが,ただその順序は慣例に従って律令と呼ばれた。唐初の政治には高邁な理想があり,耕す者には田ありの主義に従って均田法があり,国防には全国の壮丁が当たるという国民皆兵主義の府兵制があり,上古3代聖王の黄金時代の復活を志している。…

※「例」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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