(読み)めずらしい

精選版 日本国語大辞典 「珍」の意味・読み・例文・類語

めずらし・い めづらしい【珍】

〘形口〙 めづらし 〘形シク〙 (動詞「めでる(愛)」から派生)
① 賞美する価値がある。珍重に価する。好ましい。すばらしい。結構である。
※万葉(8C後)五・八二八「人毎に折りかざしつつ遊べどもいや米豆良之岐(メヅラシキ)梅の花かも」
源氏(1001‐14頃)常夏「めづらしき世語りになむ人々もし侍なる」
② 見ることがまれである。めったにない。
(イ) あまり例がない。見なれない。
※万葉(8C後)一九・四二八五「大宮の内にも外にも米都良之久(メヅラシク)降れる大雪な踏みそねをし」
※源氏(1001‐14頃)手習「大きなる木のいとあらあらしきに寄りゐていみじう泣く。めづらしきことにも侍かな」
(ロ) 風変わりである。珍奇である。
蜻蛉(974頃)上「人にもあらぬ身の上まで書き日記して、めづらしきさまにもありなむ」
(ハ) 目新しい。新鮮である。新奇である。
※宇津保(970‐999頃)春日詣「かくすれば、きこしめす人のかぎり、いとめづらしう興ありとおぼす」
(ニ) 久しぶりである。長い間見ることがない。
増鏡(1368‐76頃)九「十月ばかり、斎宮をもわたし奉り給はんとて、本院をもいらせ給べきよし御消息あれば、めづらしくて御幸あり」
めずらし‐が・る
〘自ラ五(四)〙
めずらし‐げ
〘形動〙
めずらし‐さ
〘名〙

うず うづ【珍】

〘名〙 高貴、尊厳、珍貴なもの。
※書紀(720)神代上「吾、御寓(あめのしたしら)すべき珍(ウヅ)の子(みこ)を生まむと欲(おも)ふ。〈珍、此をば于図と云ふ〉」
※万葉(8C後)六・九七三「天皇(すめら)(われ) 宇頭(ウヅ)の御手もち かき撫でそ 労(ね)ぎ賜ふ」
※良寛歌(1835頃)「いくそばくぞうづのみ手もておほみ神にぎりましけむうづのみ手もて」
[語誌](1)「う」は、貴く見事なさまをたたえたほめ言葉。「つ」は上代の格助詞。「うつ木綿」などと慣用されたので、一語と考えられるようになり、濁音化して、さらに格助詞「の」を伴って「うづの幣帛」などのように連体修飾語として用いられたという説がある。
(2)他に、接尾語「なふ」が付いて活用語となった「うづなふ」があるが、これは上代にしか見られない。
(3)「うづ」と意味の近い上代のことばの厳(いつ)、瑞(みづ)が「厳の雄叫(をたけび)」「瑞の御舎(みあらか)」などと使われるのに対し、「うづ」は御子(みこ)、御手(みて)など、人やその身体部分を表わす語を修飾するのに用いられる。

ちん【珍】

〘名〙 (形動)
① めずらしいこと。容易に得られないこと。また、そのさまや、そのもの。珍重。
※十訓抄(1252)二「衣には錦繍のたぐひを重ね、食には海陸の珍を調へ」
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉四〇「蓋し己れの為す所に慣れて心に珍(チン)とせざればなり」 〔礼記‐儒行〕
② なみはずれていること。変わっていること。異様であること。また、そのさまや、そのもの。珍奇。
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一六「其物語の筋といへば、実に妙奇的烈。珍(チン)、不可思議だヨ」

めずら めづら【珍】

〘形動〙 (形容詞「めずらし」の語幹から) =めずらか(珍━)
※類従本紫式部日記(1010頃か)消息文「いたうこれより老いほれて、はた、めづらにぞ経読まず」

めずらし‐・ぶ めづらし‥【珍】

〘他バ上二〙 めずらしいと思う。賞美すべきものと思う。
※大智度論平安初期点(850頃か)一七「王、此の菓の香色殊異なるを珍(メヅラシビ)たまふ」

めずらし‐・む めづらし‥【珍】

〘他マ四〙 めずらしいと思う。めずらしがる。
※千種本住吉(1221頃か)「中納言殿へもちてまゐりければ、人々めづらしみあへる中に」

めずらめづらし【珍】

〘形シク〙 ⇒めずらしい(珍)

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デジタル大辞泉 「珍」の意味・読み・例文・類語

ちん【珍】

[名・形動]
めずらしいこと。また、そのさまや、そのもの。「とするに足る品」
変わっていること。異様であること。また、そのさま。珍奇。
雪江の親達は観世撚を撚ってるそうだ、一寸―だね」〈二葉亭平凡
[類語]珍しいめずらまれ稀有けう異例珍稀ちんき珍貴珍奇たま得難い貴重珍重貴い高貴大切重要異彩

ちん【珍】[漢字項目]

常用漢字] [音]チン(呉)(漢) [訓]めずらしい うず
めったにない。めずらしい。「珍客珍事珍重珍品珍味袖珍しゅうちん八珍
普通とは変わっている。「珍奇珍説珍妙
[補説]「珎」は異体字。
[名のり]いや・くに・くる・たか・のり・はる・よし

うず〔うづ〕【珍】

珍しいこと。尊いこと。
あれ御㝢あめのしたをしらすべき―の子を生まむ」〈神代紀・上〉

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「珍」の解説


ちん

「宋書」倭国伝に記される倭の五王の1人。5世紀前半頃の王。讃(さん)の弟で,讃の死後に王となった。「梁書」には彌(み)と記される。438年,倭隋(わずい)らを中国南朝の宋に派遣して安東大将軍を自称したが,太祖文帝は安東将軍号を与えた。反正(はんぜい)天皇の名,瑞歯別(みずはわけ)の「ミツ」を漢訳したとする説が有力だが,仁徳(にんとく)天皇や履中天皇にあてる説もある。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「珍」の解説

めずらし【珍】

福岡の人参焼酎。酒名は、「貴重なもの」「大切なもの」という意味を込めて命名。国内で初めて開発された、人参を原料に使用した本格焼酎。原料は米、米麹、人参。アルコール度数25%。蔵元の「研醸」は昭和58年(1983)創業。所在地は三井郡大刀洗町大字栄田。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「珍」の解説

ちん

倭王珍(わおう-ちん)

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旺文社日本史事典 三訂版 「珍」の解説


ちん

5世紀に中国南朝に朝貢した倭の五王の一人
『梁書』には彌 (み) と記されている。仁徳・反正天皇に比定する2説がある。

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デジタル大辞泉プラス 「珍」の解説

珍(めずらし)

福岡県、研醸株式会社が製造する焼酎。原料にニンジンを使用。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「珍」の意味・わかりやすい解説


ちん

倭の五王」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【倭の五王】より

…《宋書》は,430年にも〈倭国王〉が使者を送ったと記しているが,これも倭讃の遣使と考えられる。讃の死後,弟の珍が立ち,438年,使者を派遣して国書を送った。珍はこの国書の中で,使持節・都督倭百済新羅任那秦韓慕韓六国諸軍事・安東大将軍・倭国王と自称して,この官爵号を授けて欲しいと願い出た。…

※「珍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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