(読み)チン

デジタル大辞泉 「珍」の意味・読み・例文・類語

ちん【珍】

[名・形動]
めずらしいこと。また、そのさまや、そのもの。「とするに足る品」
変わっていること。異様であること。また、そのさま。珍奇
雪江の親達は観世撚を撚ってるそうだ、一寸―だね」〈二葉亭平凡
[類語]珍しいめずらまれ稀有けう異例珍稀ちんき珍貴珍奇たま得難い貴重珍重貴い高貴大切重要異彩

ちん【珍】[漢字項目]

常用漢字] [音]チン(呉)(漢) [訓]めずらしい うず
めったにない。めずらしい。「珍客珍事珍重珍品珍味袖珍しゅうちん八珍
普通とは変わっている。「珍奇珍説珍妙
[補説]「珎」は異体字
[名のり]いや・くに・くる・たか・のり・はる・よし

うず〔うづ〕【珍】

珍しいこと。尊いこと。
あれ御㝢あめのしたをしらすべき―の子を生まむ」〈神代紀・上〉

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精選版 日本国語大辞典 「珍」の意味・読み・例文・類語

うずうづ【珍】

  1. 〘 名詞 〙 高貴、尊厳、珍貴なもの。
    1. [初出の実例]「吾、御寓(あめのしたしら)すべき珍(ウヅ)の子(みこ)を生まむと欲(おも)ふ。〈珍、此をば于図と云ふ〉」(出典:日本書紀(720)神代上)
    2. 「天皇(すめら)(われ) 宇頭(ウヅ)御手もち かき撫でそ 労(ね)ぎ賜ふ」(出典:万葉集(8C後)六・九七三)
    3. 「いくそばくぞうづのみ手もておほみ神にぎりましけむうづのみ手もて」(出典:良寛歌(1835頃))

珍の語誌

( 1 )「う」は、貴く見事なさまをたたえたほめ言葉。「つ」は上代の格助詞。「うつ木綿」などと慣用されたので、一語と考えられるようになり、濁音化して、さらに格助詞「の」を伴って「うづの幣帛」などのように連体修飾語として用いられたという説がある。
( 2 )他に、接尾語「なふ」が付いて活用語となった「うづなふ」があるが、これは上代にしか見られない。
( 3 )「うづ」と意味の近い上代のことばの厳(いつ)、瑞(みづ)が「厳の雄叫(をたけび)」「瑞の御舎(みあらか)」などと使われるのに対し、「うづ」は御子(みこ)、御手(みて)など、人やその身体部分を表わす語を修飾するのに用いられる。


ちん【珍】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 )
  2. めずらしいこと。容易に得られないこと。また、そのさまや、そのもの。珍重。
    1. [初出の実例]「衣には錦繍のたぐひを重ね、食には海陸の珍を調へ」(出典:十訓抄(1252)二)
    2. 「蓋し己れの為す所に慣れて心に珍(チン)とせざればなり」(出典:花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉四〇)
    3. [その他の文献]〔礼記‐儒行〕
  3. なみはずれていること。変わっていること。異様であること。また、そのさまや、そのもの。珍奇。
    1. [初出の実例]「其物語の筋といへば、実に妙奇的烈。珍(チン)、不可思議だヨ」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一六)

めずらめづら【珍】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 形容詞「めずらし」の語幹から ) =めずらか(珍━)
    1. [初出の実例]「いたうこれより老いほれて、はた、めづらにぞ経読まず」(出典:類従本紫式部日記(1010頃か)消息文)

めずらめづらし【珍】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙めずらしい(珍)

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普及版 字通 「珍」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 9画

[字音] チン
[字訓] たから・めずらしい

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(しん)。に趁(ちん)の声がある。卜文に貝を包みこむ形の字があり、もと象形の字であった。箱に収めた形のものを貯という。〔説文〕一上に「寶なり」とあり、珍貴のものをいう。のち珍異・珍怪のものをもいい、〔書、旅〕に「珍禽奇獸」の語がある。玉器は魂振りの器として用いられ、そのような器を珍玩という。

[訓義]
1. たから、たからもの。
2. めずらしい、美しくまれなもの。
3. たっとぶ、よろこぶ、重んずる。
4. おいしい食事。

[古辞書の訓]
名義抄〕珍 タカラ・メヅラシ・メヅラカナリ・ウルハシ・ヨシ・タフトム・タクハフ 〔立〕珍 メヅラシ・ヨロコブ・タカラ・タムトフ・アヤシ・タクハフ 〔字鏡集〕珍 タフトム・タカラ・ヨシ・カサヌ・ヨロコブ・アヤシ・タフトシ・メヅラカナリ・タクラフ・ウルハシ・メヅラシ

[語系]
珍tin、thimは声義近く、〔詩、魯頌、水〕に「來(きた)りて其の(ちん)を獻ず」とみえる。美宝をいう。玉を献ずることには、魂振り的な意味があるとされた。貯tiaは貝を器に収める意。玉を収める珍と、双声の語である。

[熟語]
珍愛・珍異・珍・珍禾・珍華・珍嘉・珍菓・珍貨・珍瑰・珍怪・珍感・珍・珍玩・珍・珍奇・珍貴・珍器・珍・珍・珍玉・珍禽・珍圭・珍肴・珍貢・珍旨・珍侈・珍事・珍滋・珍珠・珍襲・珍羞・珍什・珍獣・珍書・珍祥・珍賞・珍縟・珍新・珍瑞・珍惜・珍説・珍鮮・珍善・珍膳・珍蔵・珍重・珍・珍投・珍美・珍秘・珍品・珍符・珍物・珍幣・珍宝・珍木・珍墨・珍本・珍味・珍薬・珍腴・珍用・珍麗
[下接語]
嘉珍・懐珍・貴珍・兼珍・献珍・貢珍・山珍・至珍・時珍・七珍・殊珍・珠珍・袖珍・掌珍・常珍・水珍・膳珍・酎珍・廚珍・重珍・珍・土珍・八珍・別珍・宝珍・陸珍

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「珍」の意味・わかりやすい解説

珍(倭の五王)
ちん

古代中国南朝の史書にみえる、5人の倭王(わおう)(讃(さん)、珍、済(せい)、興(こう)、武(ぶ))の1人。珍は弥(み)とも記され、反正(はんぜい)か仁徳(にんとく)天皇に擬せられる。

[編集部]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「珍」の解説


ちん

「宋書」倭国伝に記される倭の五王の1人。5世紀前半頃の王。讃(さん)の弟で,讃の死後に王となった。「梁書」には彌(み)と記される。438年,倭隋(わずい)らを中国南朝の宋に派遣して安東大将軍を自称したが,太祖文帝は安東将軍号を与えた。反正(はんぜい)天皇の名,瑞歯別(みずはわけ)の「ミツ」を漢訳したとする説が有力だが,仁徳(にんとく)天皇や履中天皇にあてる説もある。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「珍」の解説

めずらし【珍】

福岡人参焼酎。酒名は、「貴重なもの」「大切なもの」という意味を込めて命名。国内で初めて開発された、人参を原料に使用した本格焼酎。原料は米、米麹、人参。アルコール度数25%。蔵元の「研醸」は昭和58年(1983)創業。所在地は三井郡大刀洗町大字栄田。

出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「珍」の解説


ちん

5世紀に中国南朝に朝貢した倭の五王の一人
『梁書』には彌 (み) と記されている。仁徳・反正天皇に比定する2説がある。

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デジタル大辞泉プラス 「珍」の解説

珍(めずらし)

福岡県、研醸株式会社が製造する焼酎。原料にニンジンを使用。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【倭の五王】より

…《宋書》は,430年にも〈倭国王〉が使者を送ったと記しているが,これも倭讃の遣使と考えられる。讃の死後,弟の珍が立ち,438年,使者を派遣して国書を送った。珍はこの国書の中で,使持節・都督倭百済新羅任那秦韓慕韓六国諸軍事・安東大将軍・倭国王と自称して,この官爵号を授けて欲しいと願い出た。…

※「珍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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