精選版 日本国語大辞典 「現」の意味・読み・例文・類語
げん‐・ずる【現】
[1] 〘自サ変〙 げん・ず 〘自サ変〙 見えていなかったものや、存在しなかった物事などが、見えるようになる。
① 隠れていた物事が、はっきり見えるようになる。表面に現われる。
※大慈恩寺三蔵法師伝永久四年点(1116)二「盤許りの大なる光有り。現し已りて還りて滅しぬ」
② 仏語。神仏、霊魂やその霊験が現われる。示現する。
※宇津保(970‐999頃)楼上上「薬師仏げむじ給ふとて、多くの人まうでたまふ」
③ それまでなかったものが出現する。
※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)一〇「正しく虹の現せし象に符(かな)へり」
[2] 〘他サ変〙 げん・ず 〘他サ変〙 見えていなかったものや、存在しなかった物事・状況などを、はっきり見えるようにする。
① 隠れていた物事を、見えるようにする。表面に現わす。
※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)一〇「北宮に疾(やまひ)を現せし時」
※平家(13C前)一「既に十二三にならむずる者が、〈略〉か様に尾籠を現じて、入道の悪名をたつ」
② 神仏、霊などが霊験を現わす。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「すべて仏の現し給へる所なれば」
③ 単に、ある状況を呈する。
※妾の半生涯(1904)〈福田英子〉一〇「場内毎日立錐の余地なき盛況を現(ゲン)ぜしにても知らるべし」
[語誌](1)類義の和語動詞に「あらはす」「あらはる」があるが、「現ずる」には、「仏教と関わる」「可視的である」といった意義特徴がある。
(2)中世になると、仏教とは無関係な意味で使用される例も散見されるようになるが、会話文中に限って認められるという特徴があり、漢語が日常語化することによって生じた派生的意味用法であると言えよう。
(2)中世になると、仏教とは無関係な意味で使用される例も散見されるようになるが、会話文中に限って認められるという特徴があり、漢語が日常語化することによって生じた派生的意味用法であると言えよう。
げん【現】
〘名〙
① この世に実際に存在していること。また、現在の段階で該当すること。実在。現実。現在。連体詞的にも用いられる。
※義経記(室町中か)七「判官ならば仔細を知らずして関手をなして通らんと急ぐべし。げんの山伏ならば、よも関手をばなさじ」
※竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生の人生観「僕らはこの現社会なるものを離れてこの世に生きる事の出来ない」
② 「げんせ(現世)」の略。
※源平盛衰記(14C前)三九「普(あまね)く現(ゲン)には千幸万福に楽しみて、当(たう)には補陀洛山に生まれんと誓ひ給へる寺なりけり」
③ ちょうどその場にあること。ありあわせること。
④ 「げんぶつ(現物)」の略。〔取引所用語字彙(1917)〕
⑤ 「げんしょく(現職)」の略。議員選挙などの際に用いる。「自民現」
おつつ をつつ【現】
※万葉(8C後)五・八一三「神ながら 神さび坐す 奇魂(くしみたま) 今の遠都豆(ヲツツ)に 尊きろかむ」
※良寛歌(1835頃)「おつつにも夢にも人の待たなくに訪ひ来るものは老にぞありける」
げん・じる【現】
〘自他ザ上一〙 動詞「げんずる(現)」の上一段化した語。
げん‐・ず【現】
〘自他サ変〙 ⇒げんずる(現)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報