泥(読み)デイ

デジタル大辞泉 「泥」の意味・読み・例文・類語

でい【泥】[漢字項目]

[常用漢字] [音]デイ(漢) [訓]どろ ひじ なずむ
〈デイ〉
1 どろ。「泥水・泥土・泥濘でいねい/雲泥・汚泥・春泥」
2 どろ状のもの。「泥炭/金泥きんでい・こんでい・銀泥」
3 南海に住むという虫の名。「泥酔」
4 ふんぎりがつかない。こだわる。なずむ。「拘泥」
〈どろ〉「泥沼・泥水」
[難読]泥障あおり・障泥あおり・泥鰌どじょう・泥濘ぬかるみ

どろ【泥】

1 水がまじってやわらかくなった土。粒子は砂よりも細かく、大きさによりシルトと粘土とに分ける。
2 「泥棒」の略。「こそ泥」
[類語]泥んこ

でい【泥】

1 どろ。
2 金・銀の箔を粉末にし、にかわで溶いた絵の具の一種。金泥・銀泥など。
3 中国で、南海にすむと伝える虫の名。骨がなく、水がなくなると、どろのようにぐにゃぐにゃになるという。

ひじ〔ひぢ〕【▽泥/×埿】

水たまりの土。どろ。泥土。
「物語に不義なる恋をかたるも、その濁れる―を愛でてにはあらず」〈逍遥・小説神髄〉

こ‐ひじ〔‐ひぢ〕【▽泥】

どろ。水分の多い土。「恋路」と掛け詞になる場合が多い。
「いかばかり深かりける十市の里の―なるらむ」〈狭衣・一〉

うき【▽泥/×埿】

泥深い地。沼地。
「数ならぬみくり(=水草ノ名)や何の筋なれば―にしもかく根をとどめけむ」〈源・玉鬘〉

ひじり‐こ〔ひぢり‐〕【▽泥】

どろ。ひじ。〈和名抄〉

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精選版 日本国語大辞典 「泥」の意味・読み・例文・類語

でい【泥】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ① どろ。ひじ。ひじりこ。
    1. [初出の実例]「でいの中に生ふるを遙かにその蓮いやしからず」(出典:類従本賀茂女集(10C後))
    2. 「亦、過去の九十一劫の時、毗婆尸仏(びばしぶつ)の涅槃に入給て後、燈指、大長者として一の泥(でい)の像を見るに、一の指落たり」(出典:今昔物語集(1120頃か)二)
    3. 「仙人、でいの上にふしたまひて、御髪をしき、ほとけをとほしたてまつる」(出典:曾我物語(南北朝頃)三)
  3. ② 絵の具の一種で、金銀の粉末をにかわで溶いたもの。金泥、銀泥など。
    1. [初出の実例]「金銀薄泥、用二之公私一、有レ費无レ益、宜レ禁二断之一」(出典:続日本後紀‐承和元年(834)二月癸巳)
    2. 「唐衣に、ひもはり、はかま五重三重、ていにてだみ、下絵して箔おきなど、けしからぬまで見えき」(出典:たまきはる(1219))
  4. ③ 水分を含んで粘りをもつようになったもの。
    1. [初出の実例]「摺二爛魚肉一以為レ泥粘二于小板子一」(出典:本朝食鑑(1697)九)
  5. ④ 南海に住むという、骨のないぐにゃぐにゃした虫。→泥(でい)の如し。〔異物志〕

どろ【泥】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ① 水が混じって軟かくなった土。ひじ。
    1. [初出の実例]「南のつらのいとあしき泥をふみこみて候つれば」(出典:大鏡(12C前)二)
    2. 「父の顔を粘土(ドロ)にてつくれば」(出典:道程(1914)〈高村光太郎〉父の顔)
  3. ② 「どろぼう(泥棒)」の略。
    1. [初出の実例]「むかしの旦那今のどろ、ほへねばわたしが役目がかける。わんわん」(出典:黄表紙・心学早染艸(1790)下)
  4. ③ 山城国伏見(京都市伏見区)の遊郭柳町、俗称泥町の遊女の称。
    1. [初出の実例]「髪のえん有柳町伏見の泥(ドロ)に身をよごせと、橘屋にたづねて」(出典:浮世草子・好色産毛(1695頃)二)
  5. ④ 南海に住むという虫の名「泥(でい)」の訓読み。→でい(泥)の如し。
  6. ⑤ 植物「どろのき(泥木)」の異名。
    1. [初出の実例]「白楊(ドロ)、蘆、などの叢が」(出典:藁草履(1902)〈島崎藤村〉序)

どろんこ【泥】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ① 泥。
    1. [初出の実例]「泥んこでよごれた手で」(出典:途上(1932)〈嘉村礒多〉)
  3. ② ( 形動 ) 泥だらけな様子。どろどろな状態。また、そうなったものや、そのさま。
    1. [初出の実例]「トンビも着物も泥んこぢゃアありませんか?」(出典:コップ酒(1933)〈浅見淵〉)

ひじひぢ【泥・埿】

  1. 〘 名詞 〙 水分のまじった土。どろ。ぬかるみ。泥土(でいど)。ひじのこ。ひじりこ。
    1. [初出の実例]「ちり比治(ヒヂ)の数にもあらぬわれ故に思ひわぶらむ妹が悲しさ」(出典:万葉集(8C後)一五・三七二七)

ひじり‐こひぢり‥【泥】

  1. 〘 名詞 〙 =ひじ(泥)
    1. [初出の実例]「馬能く抜けて埿(ヒチリコ)を出づ」(出典:日本書紀(720)天武元年七月(北野本訓))

こ‐ひじ‥ひぢ【泥】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「こ」は接頭語 ) どろ。どろつち。ひじりこ。〔十巻本和名抄(934頃)〕
    1. [初出の実例]「浜も砂子白くなどもなく、こひぢのやうにて」(出典:更級日記(1059頃))

なずまし【泥】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 ⇒なずましい(泥)

こいじこひぢ【泥】

  1. 〘 名詞 〙 ⇒こひじ(泥)

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普及版 字通 「泥」の読み・字形・画数・意味

泥
常用漢字 8画

[字音] デイ
[字訓] どろ・ぬかるみ・なずむ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は尼(じ)。〔説文〕十一上に川の名とするが、字は汚泥の意。〔釈名、釈宮室〕に「泥は邇(ちか)きなり。邇なり。水を以て土に沃(そそ)ぎ、相ひ黏(でんきん)せしむるなり」とあり、邇近・黏近の意があるという。尼は人の後ろより接する形で、親昵(しんじつ)する意があり、泥の黏着する性質よりして、尼声を用いるのであろう。

[訓義]
1. どろ、どろひじ、ぬかるみ。
2. なずむ、まみれる、ねばる。
3. ぬる、けがれる、つく。
4. ちかづく、ちかい。
5. 涅(でつ)と通じ、くろい、くろむ。

[古辞書の訓]
〔和名抄〕泥 比知利己(ひぢりこ)、一に云ふ、古比知(こひぢ)〔名義抄〕泥 ナク・アツシ・ツチクレ・ミダル・ナヅム・ヌル・ヒヂ・トドコホル・ヒヂリコ・クリニス・カコツ・コヒヂ・カタシ・ナヤマス/垂泥 クルマノツチハラヒ

[語系]
泥nyei、脂tjieiは声近く、ともにどろどろした状態にあるものをいう。遲(遅)dieiも停滞した状態をいい、同系の語と思われる。

[熟語]
泥飲▶・泥淤▶・泥▶・泥海▶・泥▶・泥滑▶・泥緘▶・泥丸▶・泥牛▶・泥金▶・泥屐▶・泥古▶・泥垢▶・泥溝▶・泥行▶・泥痕▶・泥沙▶・泥滓▶・泥湿▶・泥首▶・泥詔▶・泥障▶・泥漿▶・泥掌▶・泥人▶・泥酔▶・泥銭▶・泥塑▶・泥窓▶・泥像▶・泥滞▶・泥胎▶・泥▶・泥中▶・泥▶・泥塗▶・泥土▶・泥頭▶・泥濘▶・泥封▶・泥壁▶・泥鏝▶・泥俑▶・泥爛▶・泥流▶・泥竜▶・泥淪▶・泥▶・泥潦▶
[下接語]
委泥・印泥・雲泥・泥・淤泥・花泥・滑泥・銜泥・金泥・銀泥・拘泥・黄泥・沙泥・朱泥・春泥・塵泥・雪泥・白泥・封泥・壁泥・芳泥

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「泥」の意味・わかりやすい解説

泥
どろ
mud

水分をかなり含み、固結していない微細な粒(コロイド粒子が主体)からなり、無機質粘土に多少の有機物が混合しているもの。泥土(でいど)ともいう。湖沼、海、河川の底部に沈積して生じ、これを採取して空中に放置すればやがて固化する。微細な粒子が水中で沈降速度の違いで淘汰(とうた)分級され、その結果長期間に沈殿し成層した厚い泥の層ができる。分級は湖沼底でもっともよくみられ、流れのある海湾や河床では砂礫(されき)の上や間に薄層をなして沈積している。泥を有機物との混合状態などから次のように分類する。(1)黒泥(こくでい)muck 湖沼底の泥炭が無機質粘土の混入のもとに、植物組織が識別されない程度に分解した泥で、暗黒色を呈する。(2)赤泥red mud 浅い湾内などの海岸で、鉄の水酸化物による赤褐色の泥になったもの。(3)緑泥green mud 浅海性の泥層と有機物の混合した海緑石を含む海底沈積の緑色泥。(4)軟泥ooze 海洋に浮遊するプランクトンの死骸(しがい)の沈積物で、石灰質軟泥と珪質(けいしつ)軟泥に分ける。(5)腐泥sapropel 植物の花粉や腐植物質の変質した瀝青(れきせい)を含む暗色の泥。ヘドロは元来潟湖(せきこ)や内湾の軟弱な含有機質の泥をさすが、いまでは広く有機物含量の高い暗色泥(土)の総称となっている。

[浅海重夫]

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最新 地学事典 「泥」の解説

どろ
泥

mud

1)おもに砂よりも細かい粒子で構成される堆積物,またはシルト(1/16~1/256mm)と粘土(1/256mm以下)を合わせたものの総称。固結したものは泥岩。2)粘土の含水量やコロイド物質の多いもの。泥土とも。堆積環境や含有物質によって色が異なる。一般的に,嫌気的環境に堆積し,有機物量の多いほど黒色(黒泥)で,酸化的環境に堆積し,水酸化鉄の多いものは赤色・褐色(赤泥)を帯びる。また特に腐植の多いものを腐泥(sapropel)と呼ぶ。一般に堆積後に圧密を受けやすく,第四系では地盤沈下を起こしやすい。

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百科事典マイペディア 「泥」の意味・わかりやすい解説

泥【どろ】

砂よりも細かい鉱物片や岩石片(実際には岩石片はほとんどない)。一般に直径1/16mm以下で,大きさによりシルトと粘土に分ける。砂とともに普通に見られる堆積物だが,特に供給源から遠いところ(大きな河川の下流域や海の沖合など)に多い。
→関連項目砂|泥岩

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岩石学辞典 「泥」の解説

泥

粘土とシルト粒度の粒子の混合物に水が混ざったもの.混合物は半流体の懸濁物から湿った柔らかい可塑性のある堆積物まで変化する.

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世界大百科事典(旧版)内の泥の言及

【日本画】より

…これは高温で溶解したときガラス質になるフリットに,高温で発色する金属酸化物を加えて坩堝(るつぼ)などで混合し,それを砕いて粒子別に分けたものである。ほかに合成絵具,棒絵具,泥絵具,顔彩などがある。絵具
[箔,泥,砂子]
 箔(はく)には金,銀をはじめとし,プラチナなどが用いられる。…

【泥岩】より

…泥が固結してできた岩石で,砂岩より細粒の堆積岩の総称。堆積岩のうちではもっとも多い岩石である。…

※「泥」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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