テーラー(Cecil Taylor)(読み)てーらー(英語表記)Cecil Taylor

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

テーラー(Cecil Taylor)
てーらー
Cecil Taylor
(1929―2018)

アメリカのジャズピアニスト。ニューヨーク近郊ロング・アイランドに、両親ともにアメリカ先住民の血を引くアフリカ系アメリカ人として生まれ、知識階級に属する母親に育てられる。5歳でピアノ・レッスンを始め、続いてパーカッションも練習、成長してからはニューヨーク・カレッジ・オブ・ミュージックで音楽の専門教育を受ける。在学中にアルト・サックス奏者ジョニー・ホッジスJohnny Hodges(1907―1970)、トランペット奏者ホット・リップス・ペイジHot Lips Page(1908―1954)といったスウィング派ミュージシャンのサイドマンを務める。1952年にボストンに移り、ニュー・イングランド音楽院に入学しピアノを専攻する。そこでシェーンベルクベルクウェーベルンバルトークストラビンスキーといった現代音楽を学ぶ。在院中の1955年にトランジション・レーベルに初リーダー・アルバム『ジャズ・アドヴァンス』を吹き込むが、これはいわゆる「フリー・ジャズ」のアルバムとしては、1958年に録音されたオーネット・コールマンの『サムシング・エルス』に2年以上先んじている。

 1956年同音楽院を卒業すると、ソプラノ・サックス奏者スティーブ・レイシーSteve Lacy(1934―2004)とコンボを組み、1957年ニューポート・ジャズ・フェスティバルに出演。このときの模様はアルバム『ニューポート・ジャズ・フェスティバル'57』に収録されている。これ以後1960年代初めまでわずかなレコーディングを除いて自宅に引きこもり、ピアノの練習に明け暮れる。1962年アルト・サックス奏者ジミー・ライオンズJimmy Lyons(1933―1986)、ドラム奏者サニー・マレーSunny Murray(1937―2017)とヨーロッパに渡り、ストックホルムでテナー・サックス奏者アルバート・アイラーと共演する。

 1964年トランペット奏者ビル・ディクソンBill Dixon(1925―2010)の発起による4日間にわたる自主連続演奏イベント「ジャズの10月革命」に参加。これはジャズを単なる酒場の芸能ではなく、文化的な創造行為として(とら)えようとするミュージシャンによる活動で、この運動からジャズ・ミュージシャンの組合「ジャズ・コンポーザーズ・ギルド」が生まれるが組織は短命に終わる。

 1966年ブルーノート・レーベルと契約、代表作『コンキスタドール』を発表。1968年「ジャズ・コンポーザーズ・ギルド」に参加していたトランペッター、コンポーザーのマイケル・マントラーMichael Mantler(1943― )と、ピアニスト、コンポーザーのカーラ・ブレイによる緩(ゆる)やかな組織体「ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ・アソシエーション」(J. C. O. A.)に参加し、テーラーがフィーチャーされたフリー・ジャズの大作『ザ・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ』を録音。1969年ヨーロッパ・ツアーを行い、折からのフリー・ジャズ・ムーブメントのなかで大成功を収める。

 1973年(昭和48)には来日し、公演でバレエのような身体所作をみせる。このとき日本のトリオ・レコードにソロ・アルバム『ソロ』を録音。1980年代初頭はビッグ・バンドを組織し、クラブ出演する。1988年、ベルリンで行われた「インプロバイズド・ミュージック2/'88」のコンサートを収めた11枚組ライブ・アルバム『イン・イースト・ベルリン』In East Berlinを出す。その内容はヨーロッパ・フリージャズの代表的ミュージシャンたちとのデュオ演奏、ソロ演奏、そしてオーケストラ作品と多岐にわたったものとなっている。

 テーラーの音楽は圧倒的なテクニックと音塊を叩きつけるような過激な演奏で知られるが、それは感情をむきだしにしたものではなく、すべてが厳密に制御されている。彼は自分の音楽を黒人文化の伝統のなかで捉え、同じピアニスト、コンポーザーであるデューク・エリントン、セロニアス・モンク敬意を払っているが、同時に現代音楽や舞踏といった分野への関心も高い。黒人音楽としてのジャズを創造的コンテンポラリー・ミュージックとして捉え直そうとする彼の姿勢は一貫している。

[後藤雅洋 2018年4月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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