(読み)ソコ

デジタル大辞泉 「底」の意味・読み・例文・類語

そこ【底】

物のいちばん下。
㋐容器その他くぼみのある物の、いちばん下の平らな部分。「コップ」「箱のが抜ける」
㋑地面・水面から離れたいちばん下の所。「地の」「海の
㋒重なりのいちばん下。「積荷の
物事の極まるところ。はて。極限。際限。「の知れない実力」
奥深い所。「腹のから笑う」
相場が下落して、いちばん安くなったところ。⇔天井
そのものがもつ真の力量。実力。
「義経が乗たる大鹿毛おほかげは…薄墨にも―はまさりてこそあるらめ」〈盛衰記・三六〉
[下接語]奥底心の底しんたな谷底奈落の底みなむな(ぞこ)上げ底石底糸底大底織底川底靴底どん底なべ二重底ひらふな
[類語](1底部どん底地底海底湖底川底水底みなそこ奈落の底/(3奥底内部/(4底入れ底打ち

てい【底】[漢字項目]

[音]テイ(漢) [訓]そこ
学習漢字]4年
〈テイ〉
いちばん低い所。物の下部。そこ。「底辺底面底流奥底おうてい海底眼底胸底筐底きょうてい湖底心底しんてい船底地底徹底到底払底
奥底まで至る。「底止
もとになるもの。「底本基底根底
〈そこ(ぞこ)〉「底力底値心底しんそこ谷底船底
[名のり]さだ・ふか

てい【底】

種類。程度。中国で近世の口語に用いられた「…の」の意の助辞から出た語。現代中国語では「的」に相当する。
「彼の精神が朦朧として不得要領―に一貫して」〈漱石吾輩は猫である

指数関数yaxおよび対数関数y=logaxにおけるaのこと。基数。→対数累乗
台形の平行な2辺。底辺、また、柱体錐体の底面。

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精選版 日本国語大辞典 「底」の意味・読み・例文・類語

そこ【底】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 海・池・川などくぼんだ地形の下の部分。また、器物などの下を構成する部分。その内側の面や下側の表面をいうこともある。
      1. [初出の実例]「海塩(うしほ)に沈み溺れたまひき。故、其の底(そこ)に沈み居たまひし時の名を、底度久御魂〈度久の二字は音を以ゐる〉と謂ひ」(出典古事記(712)上)
      2. 「万にいみじくとも、色このまざらん男は、いとさうざうしく、玉の巵(さかづき)の当(そこ)なきここちぞすべき」(出典:徒然草(1331頃)三)
    2. 水などがたたえられているとき、また、物が積み重ねられたりしているとき、その下の方の部分。川や海などの下の方。
      1. [初出の実例]「あるひと、このやなぎのかげの、かはのそこにうつれるをみてよめるうた」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月一一日)
    3. 天に対して、地をいう。また、地表より下の奥深い地中。上代では、この世(中つ国)をはさんで、天に対する、地中の国をいう称。「底つ磐根」
      1. [初出の実例]「地のそことほるばかりの氷(ひ)降り」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
    4. きわまるところ。きわみ。はて。また、ぎりぎりのところ、限度。限界。また見通しや理解が及ぶ限度。
      1. [初出の実例]「是は底もなき不覚仁にて候ぞ」(出典:平家物語(13C前)一二)
      2. 「此問答は私にとって頗る不得要領のものであったが、私は其時底迄押さずに帰って仕舞った」(出典:こゝろ(1914)〈夏目漱石〉上)
    5. 奥深いところ。
      1. [初出の実例]「郭公なほ初声をしのぶ山夕ゐる雲のそこに鳴くなり〈守覚法親王〉」(出典:千載和歌集(1187)夏・一五七)
    6. 奥深くて、外から容易にうかがうことのできない物事の極致蘊奥(うんのう)。また、物事の奥にある本質的なもの。
      1. [初出の実例]「近ごろ和歌の道ことにもてなされしかば、内裏仙洞摂政家何れもとりどりにそこをきはめさせ給へり」(出典:今物語(1239頃))
    7. 人に見せない、心の最も奥の部分。真実のひそむところ。しんてい。しんそこ。
      1. [初出の実例]「もてなしなど、気色ばみ恥づかしく、心のそこゆかしきさまして」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
    8. そのものが有する真実の力量、能力。
      1. [初出の実例]「義経が乗たる大鹿毛(かげ)は、〈略〉鎌倉殿のたびたる薄墨にも底(ソコ)はまさりてこそ在るらめ」(出典:源平盛衰記(14C前)三六)
    9. 取引市場で、相場の下落の極点をいう。〔大坂繁花風土記(1814)〕
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙 名詞形容詞などに付いて、表面的なものではなく、「真実の」「至上の」「奥底の」などの意を添える。「底意(そこい)」「底至(そこいたり)」「底寒い」「心底(しんそこ)」など。

てい【底】

  1. 〘 名詞 〙
  2. した。また、物の最下端の部分。入れ物のもっとも奥の部分。内部。そこ。〔陸機‐従軍行〕
  3. ほどあい。程度。種類。中国近世の口語に用いられる「…の」という意の助辞から出た語。現代中国語の「的」にあたる。
    1. [初出の実例]「されば人知にある底(テイ)のことは、皆天理の固有にして、己れに非ざることを知るべし」(出典:理学秘訣(1816))
    2. 「人間社会に於て目撃し得ざる底の伎倆で」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉五)
    3. [その他の文献]〔朱子語類‐学一・小学〕
  4. 数学で、
    1. (イ) 台形の平行な二辺。
    2. (ロ) 柱体の底面。
    3. (ハ) 錐体の底面。
    4. (ニ) 対数 logax のa。

そこり【底】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「そこる(底)」の連用形名詞化 ) 潮がひいて海底が現われること。潮干(しおひ)
    1. [初出の実例]「冬枯や汐も底凝(ソコリ)のうらの家〈浮生〉」(出典:俳諧・或時集(1694))

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普及版 字通 「底」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

[字音] テイ
[字訓] そこ・いたる・なんぞ

[説文解字]
[甲骨文]
[その他]

[字形] 形声
声符は(てい)。は曲刀を以て底辺を削ることを示す字。底は削って平らかとなった部分をいう。〔説文〕九下に「山居なり」とするのは、〔段注〕にいうように「止居」の誤り。また「一に曰く、下(ひく)きなり」とあって、低処をいう。

[訓義]
1. そこ、下辺の平らかなところ、低く平らかなところ。
2. いちばん下の部分、うら、なか、うち。
3. いたる、およぶ、おる、止まる、つく、定まる、とどこおる。
4. 直・等と通じて、なんぞ、なになど、疑問副詞に用いる。
5. 的と通じ、~的を~底のようにいう。
6. (てい)(さか)・砥(てい)(といし)と通じて用いる。

[古辞書の訓]
名義抄〕底 ソコ・トドム・ヰル・トドコホル・シリゾク・シタシ・モト・ヒトシ・タヒラカニ・タヒラカナリ・イタル・ウラ/底人 ナニビトゾ/大底 オホムネ 〔字鏡集〕底 ソコ・トドコホル・トドム・ヰル・サダム・ウラ・シリゾク・ナニ・モト・ヒトシ・イタル・タヒラカナリ・シタシ

[語系]
底・・低・柢・邸tyeiは同声。は曲刀の剞(きけつ)(彫刻刀)で底辺を削り平らかにすることで、低平の意があり、声の字はおおむねその声義を承ける。

[熟語]
底遏・底案・底底翳・底下・底居・底極・底行底稿・底細・底作・底冊・底止・底死・底事底須・底所・底慎底綏・底靖底績・底石・底節・底属・底滞・底帳・底定・底突・底寧・底伏・底物・底平・底法・底本・底面・底予・底様・底裏・底麗・底・底老・底禄
[下接語]
雲底・花底・河底・海底・壑底・坎底・底・眼底・巌底・基底・脚底・胸底・筺底・湖底・江底・根底・耳底・酒底・心底・水底・井底・船底・窓底・艙底・足底・底・地底・池底・徹底・到底・透底・底・平底・払底・無底・葉底

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「底」の意味・わかりやすい解説


てい
base

数学用語。 (1) 台形の上底,下底を合せて底という。 (2) 角柱,円柱など柱体の底面を底ということがある。 (3) 角錐,円錐など錐体の底面を底ということがある。 (4) 指数関数 yaxa をその底という。 (5) 対数関数 y=logaxa をその底という。 (6) ベクトル空間の基底のことを底ということがある。 (7) ファイバー空間の底空間をいう。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【褶曲】より

…しかし,火成岩体が褶曲しないわけではない。一般に,褶曲というと,造山運動など造構作用に伴って後生的に形成されたものを指すことが多いが,堆積時や堆積直後の海底地すべりによって形成されたものもある。これらはスランプslump褶曲と呼ばれたり,特定の層準に限られて発達することが多いので,層内褶曲と呼ばれることがある。…

【対数】より

aを1でない正の数,xを任意の正の数とすると,auxとなる実数uが定まる。このuを〈aを底(てい)とするxの対数〉といい,u=logaxと書く。またこのとき,xuの真数という。…

※「底」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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