髀肉の嘆(読み)ヒニクノタン

デジタル大辞泉 「髀肉の嘆」の意味・読み・例文・類語

髀肉ひにくの嘆たん

《「蜀志」先主伝・注から》功名を立てたり手腕を発揮したりする機会のないのを嘆くこと。蜀しょくの劉備りゅうびが、平穏な日々が続き、馬に乗って戦場に行くことがなかったため、内ももの肉が肥え太ってしまったのを嘆いたという故事による。
[類語]勿体もったい無い・惜しい・あたら・残念・残り惜しい・名残惜しい・残り多い・口惜しい・惜しむ・心残り・物惜しみ・未練・愛惜・痛惜・去り難い・後ろ髪・未練がましい・後を引く・しつこい・執念深い・ねちっこい・ねつい・ねちねち・悪あがき・うじうじ・うだうだ・いじいじ・ぐじぐじ・もじもじ・因循・断腸の思い・負け惜しみ・こだわる・尾を引く・執拗・恋恋・惜しげ・思い残す・たゆたう・思い迷う・忍びない・死蔵・退蔵・倹約・無駄遣い・浪費・濫費・散財・空費・徒費・冗費・宝の持ち腐れ・不経済・無にする・無になる・無に帰する・水泡に帰する・水の泡・捨て金・湯水のように使う・リサイクル・リユース・リメーク・リバイバル・カムバック

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精選版 日本国語大辞典 「髀肉の嘆」の意味・読み・例文・類語

ひにく【髀肉】 の 嘆(たん)

  1. ( 中国三国時代、蜀の劉備が馬に乗って戦場を駆けめぐることが長い間ないため、股(もも)の肉が肥え太ったことを嘆いたという「蜀志‐先主伝」の注に引く「九州春秋」の故事から ) 功名を立てたり、手腕を発揮したりする機会がなくて、むなしく時を過ごすのを嘆くこと。
    1. [初出の実例]「常に脾肉の歎を抱く者数ふるに遑あらず」(出典:伊藤特派全権大使復命書附属書類(1885)天津談判)

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故事成語を知る辞典 「髀肉の嘆」の解説

髀肉の嘆

技量や手腕を発揮する機会がなく、時がむなしく過ぎていくのを嘆くこと。

[使用例] 人民は数十年の戦争に慣いて太平の静なるに堪えず。老将勇士皆髀肉の生ずるを歎せざるものなし[福沢諭吉*西洋事情|1866~70]

[使用例] 伊達の将兵達は〈略〉髀肉の嘆にたえない思がした[中山義秀*信夫の鷹|1948]

[由来] 「三国志―蜀しょく書・先主伝」の注に引用された「九州春秋」に見える話から。三世紀の初め、後ご漢かん王朝が衰退し、各地に豪族たちが割拠していたころ。劉りゅう備びは、曹操そうそうと戦って敗れ、劉りゅう表ひょうという豪族のもとに身を寄せていました。ある日、劉表と同席していた劉備が、厠かわやへと立った折にふと自分の太ももに目をやると、余分な肉がついています。そのあと、席に戻った彼の目には、涙が光っていました。そのわけを聞かれた劉備は、「このごろは馬に乗って戦場を駆け巡ることがなくなって、『髀ひ裏りに肉生しょうず(太ももに余分な肉が付いてしまいました)』。年月はどんどん流れていくのに、功名がいっこうに立たないのが、悲しいのです」と答えたということです。

[解説] ❶これは、劉備が四〇歳ごろのエピソード。二〇代の半ばで反乱軍の討伐に名乗りを上げてから、十数年が過ぎていました。後に、蜀(現在の四川省)を根拠地にして皇帝の座につく劉備も、このときは流浪の身。ライバルの曹操は、中国北部に覇を唱えつつあります。このまま終わりたくはないという焦りが、手に取るように伝わってきます。❷現在では、単に「技量や手腕を発揮する機会がない」ことを嘆く場合にも、よく使われます。❸「髀」を「脾」と書いても、意味は同じです。

〔異形〕髀裏肉を生ず。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「髀肉の嘆」の意味・わかりやすい解説

髀肉の嘆
ひにくのたん

功名をたてる機会に恵まれないことの嘆き。久しく無事平穏な日が続いたため、戦場で馬を乗り回すことがなかったので、髀に肉がついてしまったとの意で、「髀肉の嘆を託(かこ)つ」などと用いられる。『三国志』「蜀志(しょくし)」に、「劉備曰(りゅうびいわく)、常時身鞍(くら)を離れず、髀肉皆消ゆ、今復騎せず、髀裏に肉生ず、日月流るるが如(ごと)し、老の将に至らんとす、功業建たず、是(これ)を以(もっ)て悲しむのみ」とある。

[田所義行]

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