(読み)テキ

デジタル大辞泉 「敵」の意味・読み・例文・類語

てき【敵】

戦い・競争・試合の相手。「大国をに回して戦う」「の意表をつく」「をつくりやすい言動」⇔味方
害を与えるもの。あるものにとってよくないもの。「民衆の」「社会の」「ぜいたくはだ」
比較の対象になる相手。「のほうがもてる」「弁舌にかけては彼のではない」
遊里で、客と遊女とが互いに相手をさしていう語。相方。おてき。
「―もをかしきやつにて」〈浮・一代男・二〉
(「的」とも書く。代名詞的に用いて)多少軽蔑して、第三者をさしていう語。やつ。やつら。
「―めもえらい痴呆へげたれめぢゃ」〈滑・浮世風呂・前〉
[用法]てきかたき――自分にとって害をなすもの、滅ぼすべき相手の意では「敵」も「かたき」も相通じて用いられるが、普通は「敵」を使う。「かたき」はやや古風ないい方。◇「敵」は戦争・競争・試合の相手全般について使う。「敵を負かす」「敵に屈する」「敵が多い」◇争いなどの相手の意で使う「かたき」は、「恋がたき」「商売がたき」「がたき」のように複合語として用いられることが多い。◇深い恨みを抱き、滅ぼしたいと思う相手の意では「かたき」を使う。「親のかたきを討つ」「父のかたきを取る」「目のかたきにする」など。◇類似の語に「あだ」がある。「かたき」と同じように使われ、「あだ(かたき)討ち」などという。ただし「恩をあだで返す」は「かたき」で置き換えられない。
[類語](1相手かたきライバル好敵手仇敵難敵宿敵敵方敵手怨敵大敵強敵天敵外敵政敵論敵・競争相手・対戦相手・碁敵ごがたき商売敵恋敵こいがたき獅子身中の虫/(5彼氏彼女此奴こやつこいつ其奴そやつそいつ彼奴かやつきゃつあいつやつやっこさん先生大将この方この人その方その人あの方彼方あちらあの人

かたき【敵/×仇】

《「かた」は対比するものの片方の意で、本来は相手を広くいう》
勝負や争いの相手。競争相手。「商売上の―」「碁―」
恨みのある相手。あだ。仇敵きゅうてき。「―を取る」「父の―を討つ」
戦での相手。てき。
「―も御方みかたもこれを聞いて、一度にどっとぞ笑ひける」〈平家・九〉
結婚の相手。配偶者
「御―をば知り奉らじ」〈宇津保・俊蔭〉
てき[用法]
[下接語]目の敵(がたき)色敵伯父敵恋敵碁敵じつ商売敵職敵世話敵・立て敵・半道はんどう平敵
[類語]相手てきライバル好敵手仇敵難敵宿敵敵方敵手怨敵大敵強敵天敵外敵政敵論敵・競争相手・対戦相手・碁敵ごがたき商売敵獅子身中の虫

てき【敵】[漢字項目]

[音]テキ(漢) [訓]かたき
学習漢字]6年
〈テキ〉
対等に張り合う。「敵対匹敵無敵好敵手
競ったり憎んだりして張り合う相手。かたき。「敵意敵襲敵陣敵愾心てきがいしん仇敵きゅうてき強敵残敵弱敵宿敵政敵大敵天敵論敵
〈かたき(がたき)〉「敵役碁敵恋敵商売敵
[名のり]とし
[難読]敵娼あいかた

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精選版 日本国語大辞典 「敵」の意味・読み・例文・類語

かたき【敵・仇】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 遊んだり、わざを競ったりする相手。遊び相手や競争相手。
    1. [初出の実例]「露ふかき袖にひえつつあかすかなたれながき夜のかたきなるらん」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
    2. 「碁盤召しいでて、御碁のかたきに、召し寄す」(出典:源氏物語(1001‐14頃)宿木)
  3. 戦争の相手。敵対者。てき。
    1. [初出の実例]「太平楽、太刀などぞうたてあれど、いとおもしろし。唐土(もろこし)にかたきどちなどして舞ひけんなど聞くに」(出典:枕草子(10C終)二一六)
    2. 「源氏の陣の遠火の多さよ。げにもまことに野も山も河も海もみなかたきでありけり」(出典:平家物語(13C前)五)
  4. 深い恨みを抱いている相手。
    1. [初出の実例]「汝等が首、ただ今とりて。汝は我がかたきとする大臣の方によりて、はからしむる奴なり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)あて宮)
    2. 「童子(わらべ)心にも親の敵(カタキ)を心かけける」(出典:浮世草子・武道伝来記(1687)八)
  5. ( 男女それぞれの相手になる人の意 ) 配偶者。むこ。よめ。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
    1. [初出の実例]「おうなは早うより、さは見奉れど、さもえ聞こえざりつるなり。よし御かたきをば知り奉らじ。いつよりか御けがれはやみ給ひし」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
  6. 心を悩ませる相手。恋しい人。
    1. [初出の実例]「過ぎし夕は初ての御げん、いまにそのうつり香にくらしまいらせ候、いかなる君は敵の種ぞ」(出典:浮世草子・忘花(1696)五)
  7. かたきやく(敵役)」の略。
    1. [初出の実例]「今の立役のきっぱをまはして、かたきをきめるは、かたち斗にて心のきっぱをまはさず」(出典:役者論語(1776)舞台百ケ条)

敵の語誌

( 1 )「三巻本色葉字類抄」や「観智院本名義抄」で、偶数の「二・両」、奇数の「一・隻・参」に、それぞれ、カタキアリ、カタキナシと付訓されていることなどから、もともと広く対となる相手をいう語だったと思われる。
( 2 )相手の種類を限定するために碁ノカタキのように修飾語が添えられたり、アソビカタキなど他の語と複合したりして用いられた。しかし、次第にの意が多用され、漢語の「讎敵」や「仇敵」の影響やアタカタキの同義関係などに基づきカタキ自体が「敵」と強く結びつくようになった。


てき【敵・的】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 自分にあだとなるもの。自分と対立して争う者。特に戦争でたたかう相手。敵方。
      1. [初出の実例]「戦場にして敵(テキ)にたたかふ時身をわする」(出典:高野本平家(13C前)五)
      2. 「貧乏人には時候の冬が敵だといふことは」(出典:苦の世界(1918‐21)〈宇野浩二〉三)
      3. [その他の文献]〔孟子‐梁恵王・上〕
    2. 一般に、競争相手。敵方。また、「敵なし」「敵ならず」などの形で、比較の対象となるものをさしていう。
      1. [初出の実例]「其代に薄情・無心の段が又天下に敵なし」(出典:随筆・胆大小心録(1808)一一九)
      2. 「彼はここ二三年のゴルファーなので、やはり高之の敵ではなかった」(出典:家族会議(1935)〈横光利一〉)
    3. 中世、訴訟の相手方の称。敵方。敵人。
      1. [初出の実例]「爰大文字一揆人々者、為故敵当敵上者、廻思案、一切不之、可請別守護人旨、内々令評儀畢」(出典:大塔物語(1466頃か))
    4. 遊里で、相手をいう語。遊女が客を、客が遊女をいう語。相方(あいかた)。おてき。〔評判記・色道大鏡(1678)〕
  2. [ 2 ] 〘 代名詞詞 〙 ( 的 ) ( [ 一 ]から転じたもの。江戸末期、主に上方で、遊里に限らず用いた )
    1. 他称。話し手や相手以外の人をややさげすんでさす。あいつ。
      1. [初出の実例]「浄瑠璃がえらいといふたら李冠ぢゃ。李冠とは嵐吉がこっちゃ。ア的(テキ)与次郎を見せたいな」(出典:滑稽本・客者評判記(1811)上)
      2. 「敵(テキ)は首尾よくわが術中に陥った」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉六)
    2. 対称。相手をややさげすんでさす。おまえ。
      1. [初出の実例]「的(テキ)めもゑらい痴呆(へげたれ)めじゃ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)

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普及版 字通 「敵」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 15画

(旧字)
15画

[字音] テキ
[字訓] あたる・あいて・かたき

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は(てき)。は帝を祀ること。帝を祀ることは帝の嫡系たるもので、相匹敵するものの意がある。これに攴(ぼく)を加えて、敵対者の意とする。〔説文〕三下に「仇なり」とあり、仇にもまた相匹敵する者の意がある。〔詩、周南、関雎〕の「好逑(かうきう)」とは好匹の意。〔国語、周語中〕「禮に在りて、には必ず三たび讓る」とは、対等の人をいう。金文にに作る字があり、匹敵する人をいう。

[訓義]
1. あたる、匹敵する、ひとしい、なかま。
2. あいて、かたき、あだ。
3. うつ、むかう、はむかう。
4. こたえる。
5. 嫡・適と通じ、ただしい。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕 アタル・カタキ・アタ・ヒトシ・ウタシム 〔字鏡集〕 カタキ・タガフ・ウタシム・ウタ・アタル・ヒトシ・アタム・ムカフ・ウク

[語系]
dyek、(嫡)tyekは声義近く、まさしく相当たるものをいう。diek、tekはうち責める意。(琢)・teokもうつ意、もと擬声的な語であろう。

[熟語]
敵意・敵営敵怨・敵応敵愾・敵害・敵患敵騎・敵境・敵・敵恵敵衡敵国・敵視・敵手・敵敵讐・敵状・敵情・敵人・敵勢・敵体・敵対・敵台敵地・敵中・敵頭・敵・敵虜・敵礼・敵楼
[下接語]
怨敵・応敵・外敵・愾敵・陥敵・棋敵・仇敵・拒敵・禦敵・強敵・驕敵・勍敵・勁敵・抗敵・攻敵・降敵・寇敵・克敵・索敵・残敵・弱敵・酒敵・讐敵・宿敵・小敵・制敵・政敵・掣敵・素敵・勦敵・大敵・対敵・抜敵・匹敵・不敵・無敵・滅敵・利敵・料敵・隣敵・臨敵

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デジタル大辞泉プラス 「敵」の解説

英国の作家デズモンド・バグリーの冒険小説(1977)。原題《The Enemy》。

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