デジタル大辞泉
「板」の意味・読み・例文・類語
いた【板】
1 材木を薄く平たく切ったもの。「床に板を張る」
2 金属・石または合成樹脂などを薄く平たくしたもの。「板ガラス」「ブリキ板」
3 まな板。
4 「板場」「板前」の略。「板さん」
5 「板付き蒲鉾」の略。「板わさ」
6 芝居の舞台。「新作を板に掛ける(=上演する)」
7 版木。
8 《「掲示板」の「板」から》電子掲示板(BBS)のこと。また、掲示板サイトの中で、テーマ別に集めたスレッド2の集合。
9 株式などの相場で、売買注文の指値ごとの需給数量を示した表。またその情報。
10 「板の物」の略。
11 板敷き。板縁。
「つややかなる―のはし近う、鮮やかなる畳一枚うちしきて」〈枕・三六〉
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いた【板】
- 〘 名詞 〙
- ① 薄く平らにした木材。
- [初出の実例]「い寄り立たす わきづきが下の 伊多(イタ)にもが あせを」(出典:古事記(712)下・歌謡)
- ② 金属や石、その他の薄く平らな物。「ガラスいた」「とたんいた」など。
- ③ 「いたじき(板敷)」の略。
- [初出の実例]「夜ふくるまで板の上に居て」(出典:落窪物語(10C後)二)
- 「いたのはし近う、〈略〉畳一ひらうち敷きて」(出典:枕草子(10C終)三六)
- ④ 「いた(板)の物」の略。
- ⑤ ( 「まないた(俎)」の略 ) 魚を料理する平らな木の台。
- [初出の実例]「いたにこいをいだす」(出典:虎明本狂言・鱸庖丁(室町末‐近世初))
- ⑥ 料理場。台所。また、料理人をもさす。板前。板場。板元(いたもと)。
- [初出の実例]「コウ板は誰だ」(出典:滑稽本・四十八癖(1812‐18)初)
- ⑦ 料理屋などで、その日にできる料理や魚の名などを記した板。献立表。〔模範新語通語大辞典(1919)〕
- ⑧ ( 「かみよりいた(神寄板)」の略 ) 古く、神を招請するときに、琴頭に立てておく杉の台。また、転じて、とくに紀州熊野神社等の巫女(みこ)の称。
- [初出の実例]「み熊野のむなしきことはあらじかし虫垂(むしたれ)いたのはこぶあゆみは」(出典:山家集(12C後)下)
- ⑨ 板木(はんぎ)。また、出版。→板に上(のぼ)す。
- [初出の実例]「板を後世に伝へん物を」(出典:浮世草子・好色破邪顕正(1687)上)
- ⑩ 板付きかまぼこをいう室町期の女房詞「おいた」の「お」が脱落したもの。板付き。おいた。
- [初出の実例]「此板アめっそう塩ッかれへゼ」(出典:洒落本・まわし枕(1789))
- ⑪ 「いたじめ(板締)①」の略。
- ⑫ 「いたがね(板金)②」の略。
- [初出の実例]「四十三匁請取也。但いた也」(出典:北野天満宮目代日記‐目代久世日記・慶長一二年(1607)一二月四日)
- ⑬ 板状の鬢付油(びんつけあぶら)。
- [初出の実例]「板(イタ)を一本とゑりつけ」(出典:洒落本・青楼昼之世界錦之裏(1791))
- ⑭ 江戸深川などの岡場所で、遊女の名をしるし、稼ぎの多い順に寄せ場に並べ掲げる板札。
- [初出の実例]「寄場(よせば)へいって板(いた)をみてきやしたが」(出典:洒落本・仕懸文庫(1791)二)
- ⑮ 芝居の舞台。→板に付く・板に乗せる・板に上(のぼ)す。
- ⑯ 写真の乾板。
はん【板】
- 〘 名詞 〙
- ① いた。木を薄く平たくしたもの。
- ② 文中に、似かよった調子の語句が並んで、一種のいやみやわずらわしさなどが感じられるもの。また、そのような文体。平板。
- ③ 木製の打楽器。数枚の短冊形の板の一端を紐でつづり、両手に持って打ち鳴らすもの。びんざさら。拍板。
- [初出の実例]「板は今浅草観音祭などに用るびんざさらと云ものなり」(出典:随筆・撈海一得(1771)下)
- ④ ( 「版」とも書く ) 寺院で、時刻などを告げるために打ち鳴らす板。木製と銅製の二種があり、銅製のものを雲版という。
- [初出の実例]「僧堂、いま版をとりて雲中に拍し」(出典:正法眼蔵(1231‐53)優曇華)
- ⑤ =はん(版)①
- [初出の実例]「板摺本(ハンのすりほん)」(出典:俳諧・毛吹草(1638)四)
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普及版 字通
「板」の読み・字形・画数・意味
板
常用漢字 8画
[字音] ハン・バン
[字訓] いた・ふだ・はんぎ
[甲骨文]
[金文]
[字形] 形声
声符は反(はん)。薄くそぎとった木片をいう。金文の図象に、木に手斧の類を加えている形があり、木を剃ぎとる意を示す。それが板の初文であろうが、のち反声の字となったのであろう。〔詩、大雅、板〕「上板板(はんはん)たり 下民卒(ことごと)く(や)む」とその疾威を形容し、また〔詩、秦風、小戎〕に「其の板屋に在りて 我が心曲を亂る」と板の意に用いる。板屋はおそらく殯屋(ひんおく)。死者の屍(しかばね)をおいて、その風化を待つところである。〔詩、小雅、鴻鴈〕「百皆作(おこ)る」の〔毛伝〕に「一を版と爲す」とあって、版築に用いる木をいう。古く用例のみえる字であるが〔説文〕未収。〔説文〕はおそらく板を、版の一体とみているのであろう。〔玉〕に「片木なり。版と同じ」とみえ、〔説文〕の旧本を承けるものと思われる。「板板」は〔爾雅、釈訓〕〔広雅、釈訓〕に「版版」に作り、「僻なり」「反なり」のように乖反(かいはん)の意とする。
[訓義]
1. いた、うすくけずった木。
2. 版築に用いる両板、片木。
3. ふだ、書牘、詔書、手版、籍札、木簡。
4. はんぎ、木版。
[古辞書の訓]
〔新字鏡〕板 伊太(いた) 〔和名抄〕板 伊太(いた)。功式に波多(はた)板、板り。き木なり 〔名義抄〕板 イタ 〔立〕板 スキ・イタ
[熟語]
板印▶・板檐▶・板屋▶・板画▶・板▶・板檻▶・板魚▶・板彊▶・板橋▶・板行▶・板刻▶・板子▶・板刺▶・板歯▶・板児▶・板弱▶・板詔▶・板墻▶・板牆▶・板牀▶・板心▶・板籍▶・板築▶・板梯▶・板▶・板榻▶・板▶・板▶・板腐▶・板榜▶・板本▶・板輿▶・板録▶
[下接語]
鉛板・開板・活板・甲板・看板・乾板・簡板・響板・玉板・鼓板・刻板・黒板・桟板・手板・縮板・詔板・上板・石板・茶板・鉄板・銅板・拍板・碑板・負板・平板・編板・木板・用板・鏤板・板
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
板 (はん)
東アジアの体鳴楽器。地域,時代,ジャンルによって形態や名称が異なるが,(1)数枚の板を同時に打ち合わせるもの,(2)1枚の板を槌(つち)などで打つもの,に大別される。また,中国では拍子を意味する楽語としても用いられる。
(1)はおもに中国,朝鮮にみられる打楽器で,拍板,拍ともいう。中国では唐代の散楽(雑技)に横笛,腰鼓(ようこ)とともに用いられ,8世紀以後宮廷や民間の宴饗楽に用いられるようになった。日本の笏に似た細長い板を数枚(6~9または十数枚)重ね,上部を藺(い)で結び,下部を左右に開いてから打ち合わせる。敦煌壁画などに見える。五代には両端の2枚を特に長くしてその下部を持つ型のものもあり,日本の平安朝仏画にみられる唐風の拍板は両端の2枚が長く,中にはさむ板は楕円形をなす。宋以後も宮廷宴饗楽に6枚のものが用いられ,清朝のものは,板の長さ35cm,幅6.5~7.6cm,厚さ1.2~1.5cm。明・清時代には3~4枚の拍が現れ,民間の劇楽などには宮廷用よりやや小型で3枚のものが使われた。やや薄い2枚の板ははりつけ,他の1枚を上部で結び合わせ,左手で親指を板の間に入れて板の上部を持ち,前後にゆすって1枚板を打ちつけて鳴らす。京劇では単皮鼓の奏者が同時に左手で板を打ってリズムをとる。
朝鮮では,新羅統一時代に三絃三竹,大鼓とともに拍板が用いられ,高麗朝文宗30年(1076)の大楽管絃房には唐舞業師などとともに歌舞拍業師があった。睿宗9年(1114),宋の新楽にも拍板が用いられた。《楽学軌範》によれば,拍は唐楽にも郷楽にも使われた。朝鮮の拍板は6枚の木製の板を上端でゆるく鹿革のひもで連結し,左手で1枚を持ち,右手で残りの板を開いてから打ち合わせる。楽曲の始めに1回,終りに3回打ち鳴らす。現在も文廟祭享楽や大編の管絃合奏に用いる。
日本でも古くは拍板が用いられ,拍子,百子といったが,のちには簓(ささら)の類の編木(びんざさら)のみが発達した。沖縄の三板(さんばん)/(さんば)は中国系と考えられ,日本の四つ竹(よつだけ)も竹製の拍板とみなされる。
(2)の型は,〈ばん〉〈ぱん〉ともいい,版,梆の字も当てる。おもに仏教寺院の法具として用いる。材質,形状に従って,雲板(うんばん),木板(もつばん),魚板(ぎよばん)の3種がある。雲板は青銅または鉄製で平板状雲形をなし,雲版とも書き,火版,大版,長板,斎板,板鐘などともいう。蓮華座形の撞座を木槌で打ち,食事(じきじ)(斎食)の合図や時報などに用いる。木板は,木版とも書き,板(版),板木(版木,盤木)(はんぎ)/(ばんぎ),接版,更版とも称する。長方形の厚い木の板の上辺を隅切りしてつるしたものを木槌で打つ。作法の合図や外来者の訪問用に使うが,歌舞伎の下座(げざ)楽器として用いることもある。魚板は木製で,口に珠をくわえた長い魚形のものをつるして木槌で打つ。古くは木魚ともいい,いわゆる木魚は魚板が変形したものとみなされる。
執筆者:三谷 陽子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
板
いた
board
plank
板状をした木材。広義には製材に関する日本農林規格(JAS(ジャス))の板類を、狭義にはそのなかの板をいう。板には面に現れる木目(もくめ)の形により、柾目(まさめ)と板目とがある。柾目は年輪に直交する方向に製材したもので、反(そ)り、ねじれ、収縮などの変形が小さい。板目は年輪の接線方向に製材したもので、反りなど変形に対する注意が必要である。厚さが6~9ミリメートルの薄板は天井や羽目板に、12~15ミリメートルのものは床板に、20ミリメートル以上のものは棚板として用いられる。一般には、金属や石その他薄く平らなものを板という場合がある。
[向井 毅]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
板
はん
ban
中国の体鳴楽器。長方形の堅い板の端に穴をあけ,紐を通して数枚を結び,穴と反対側の端を開いては打合せる。唐代の宴楽や散楽に拍板の名で用いられ,のちに劇楽に使われた。京劇では単皮鼓と板とを1人が奏し,リズムをリードする。日本には清楽の楽器として輸入されたほか,沖縄地方では三板 (さんば) という名称で民俗音楽に用いられている。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報