デジタル大辞泉 「謎」の意味・読み・例文・類語
な‐ぞ【謎】
1 「なぞなぞ」に同じ。
2 遠回しに言ってそれとなくさとらせようとすること。
3 内容・正体などがはっきりわからない事柄。「宇宙の
[類語]神秘・超自然・ミステリー・神妙・不思議・不可思議・不可解・不審・奇妙・
表面の意味の背後に別の意味を隠しておき,それを当てさせようと誘いかける言語表現の一方法。言語遊戯の一つ。〈何ぞ〉という問いかけから〈なぞ〉といい,〈なぞなぞ〉ともいう。英語では,ゲルマン語源のriddleとギリシア語源のenigmaの2語がある。
遊戯の起源はしばしば宗教・呪術とかかわりがあるが,なぞも本来,宇宙・神・生のもつ神秘・危機に対する人間の反応の一つであったと思われる。サンスクリットの聖典《リグ・ベーダ》(最終版は前1000年ころ)には,なぞの形式による神の賛歌が含まれている。〈マザーグース〉の名で知られるイギリス伝承童謡中の,〈ハンプティ・ダンプティは塀に座っていた/どすんと地面に落っこちた/王様の軍勢が総がかりでも彼を元には戻せなかった〉という歌も,ハンプティ・ダンプティ=卵という解答を秘めたなぞなぞである。〈宇宙卵〉の墜落と歴史の始まりという宇宙開闢(かいびやく)神話の残響がここに聞きとれる。〈朝は4本足,昼は2本足,夕は3本足の動物は何か〉という有名なスフィンクスのなぞも,単なる遊びではなかった。なぞに答えられない者を食べてしまう怪物によって,テーバイの国は危機に陥っていたが,オイディプスがこれを〈人間〉と解いて,怪物を退治し,秩序を回復したのである。今日でも未開社会では,収穫,結婚,葬式などの聖なる(ハレの)儀礼において,なぞがやりとりされる風習が見られる。なぞを解くことが危機を解決することにつながるという,一種の〈交感呪術〉的信仰をそこに認めることができよう。古代中国では,政治や社会の転変が起こる前兆として,なぞめかした歌謡がちまたに流行したが,平安時代のわざうた(童謡)もこれと同じである。〈わざ〉は神霊のなすところ(しわざ)を意味するから,〈わざうた〉とは人の世の乱れを警告する天の声というつもりであろう。また古代中国で,臣下が王の失政をいさめるために,微言(びげん),隠(いん)などと呼ばれる婉曲なたとえ話を王に語ったが,これも政治的文脈で活用されたなぞ掛けといえる。
なぞには子どもに物を教える教育的効果もあり,しばしば記憶促進に有効な韻文形式と結びつくことによって,その効果を高める。記録に残る最古のなぞは,古代バビロニアの教科書に見いだされるという。1年が12ヵ月,1ヵ月が4週間,1週間が7日,1日が昼と夜から成っていることを,木の枝の数,枝にかけた巣の数,巣の中の鳥の数,卵の色や数などで問いかけるなぞが,世界各地に共通して存在するが,ここには生態論的宇宙感覚が教育的意図と結びついている。なぞの教育的効果は,言語論的角度からも考察されるべきだろう。ある種のなぞは,無関係なものを結びつけ,差異のなかに類似を見いだそうとする隠喩(メタファー)的表現法の,極端かつ遊戯的な応用である。〈峠三つ越えた先にある白い石〉(日本,答は〈爪〉)は,親指を除く手の指の関節という小さいものを峠という大きなものに置きかえており,〈ひとつの椀は熱く,ひとつの椀は冷たい〉(インドネシア,〈太陽と月〉)はその逆である。このような視座の転換は,世界がなぞに満ちていることを思い知らせ,万物の照応関係への想像力を刺激せずにはおかない。このとき,なぞはイメージの豊饒化作用において詩にきわめて近いといえる。またある種のなぞは,主として逆説を利用して思考を柔軟にもみほぐす。〈立てば低くなり座れば高くなるもの〉(日本,〈天井〉),〈家の中にいるのに野原にいるもの〉(スイス,〈かたつむり〉),〈ぼくの父の子だがぼくの兄弟でも姉妹でもない〉(ツングース,〈ぼく〉)。さらに,言葉そのものについてのなぞが世界各地に見られるが,これは言語的感受性を活性化する。日本はこの種のなぞがとくに豊富な国である。宮廷人は中国渡来の字謎を和歌に応用したり(〈むべ山風を嵐といふらむ〉),古歌を踏まえたなぞなぞ合せ(《古今集》の〈世の中は何か常なる飛鳥川昨日の淵は今日の瀬となる〉に基づいて〈深きは浅き,浅きは深き〉と掛け〈飛鳥川〉と解く)に興じたりした。近世庶民の間では,〈破れ障子〉と掛けて〈冬のうぐいす〉と解く,心は〈はるを待つ〉といった三段なぞが流行し,文化期(1804-18)には〈なぞとき坊主〉春雪(しゆんせつ)が頓智謎の興行によって評判をとった。〈かけてもかけても前へ進まないもの〉(〈椅子〉〈電話〉〈帽子〉〈なぞなぞ〉),〈新幹線と同じ速度で飛ぶ鳥〉(〈窓ガラス〉)など現代のなぞにも,日本人の駄じゃれ好みが生きている。
《なぞだて》(室町時代)以来,なぞを集めた本は日本にも多いが,外国では,《ベルヌのなぞなぞ集》(スイス,7世紀),《エクセターの書》(イギリス,8世紀)やフィルドゥシーの《シャー・ナーメ(王書)》(ペルシア,10世紀)の一部,ロイスナーの《エニグマトグラフィア》(ドイツ,1602)など,有名な〈文学的〉なぞなぞの本がある。〈マザーグース〉には,子どもの間で伝承されたなぞが多く含まれている。
→言語遊戯
執筆者:高橋 康也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ことば遊びの一種。地方により「なぞなぞ」「なじょなじょ」などともいう。「何ぞ」と問うことばが名詞になったもので、あることばにほかの意を含めて問いかけ、その意を解かせる遊戯。また、意味のとりにくい諺(ことわざ)の終わりに「何ぞ」ということばを添えて、人に問おうとした形ともいえる。昔話などと同様に、一定のしきたりを守り、「なぞなぞなあに」という決まり文句を唱えたり、2人のかけ合いで行ったりする。謎で遊ぶことを「謎をたてる」とか「謎かけ」という。
謎は世界的に例をみるが、古代ギリシアでスフィンクスが問うたという「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足で歩くものは何か」(人間。初めは手と足で這(は)い、成長して2本足で歩き、老いて杖(つえ)を用いる)という哲理的な謎は有名である。中国では漢字と結び付いた字謎が早くから発達し、これは、絶は色糸、妙は少女など文字を分解して意をもたせ、さらにこれを組み合わせて一つのものを表す方法であった。日本では奈良時代に中国の字謎に倣ったものがみられ、謎は遊戯としてよりも一種の民衆の文芸であったとみられる。なおその以前は、起源を宗教に置き、巫女(みこ)の口寄せや信仰上の忌みことばの類と性質が近いとする説もある。
謎には、単に問いに対する解答だけの二段形式と、「何々とかけて何と解く。その心は……」と三段形式のものとがあり、「百軒長屋に釜(かま)一つは……」(汽車)などは前者の例で、「比丘尼(びくに)にかんざしとかけて、1人で飲む酒と解く。その心は……」(さすところがない)などは後者の例である。また、謎かけの前に文句を唱える約束などもある。謎は種々の面に応用され、鎌(かま)と輪の模様に奴(ぬ)の字を染め「構(かま)わぬ」の意を表すというように、謎の意を寓(ぐう)した模様を染めることが行われたり、余興の福引などに利用されるが、最近は謎の新しい形式としてのクイズも盛行している。
[丸山久子]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…しかしクイズにはっきりした定義はない。広い範囲で考えれば,ことばによるなぞ遊び,文字や絵による判じ物,知識や数理で解かせる出題,図形を使った出題,パズルなどすべてこのなかに入る。なかでも歴史的に古いものはなぞ遊びで,古代民族のなかにはなぞを出題して客をもてなす風習をもつ民族もあったという。…
…したがって,諺には和歌や川柳にその出典を求められるものも多く,諺の文学としての性格をよく示している。 なお,なぞのなかには諺と近い関係のものもある。たとえば,上記の〈朝雨と女の腕まくりはこわくない〉という諺は,〈朝雨とかけて女の腕まくりと解く,その心はどちらもこわくない〉というなぞに置きかえることができるのである。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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