(読み)イ

デジタル大辞泉 「異」の意味・読み・例文・類語

い【異】

[名・形動]
他と違っていること。また、他と異なった意見。「を唱える」
普通とは違っていること。不思議なこと。また、そのさま。「なことを言う」「縁はなもの」
[類語]不思議異常異様奇異奇妙みょう面妖めんよう不可解不審不自然奇怪奇態風変わり特異異状異例非常別条変ちくりん変てこ変てこりんけったいおかしい妙ちきりんおかしな奇天烈きてれつ珍奇新奇珍妙奇抜奇警奇想天外突飛ファンシー突拍子もない言語道断無茶めちゃむちゃくちゃめちゃくちゃめちゃめちゃ滅法法外無理乱暴無体理不尽非理不当不条理不合理非合理狂的

い【異】[漢字項目]

[音](呉)(漢) [訓]こと
学習漢字]6年
他と違っている。別の。ことなる。「異国異種異状異常異色異性異存異同異動異例異論・異民族/差異小異・相異・変異
正式・正統でない。「異学異教異端
普通でない。あやしい。あやしむ。「異形いぎょう異様怪異奇異驚異妖異霊異
変わった出来事。「災異天変地異
[名のり]より

こと【異】

[名]
別のもの。他のもの。
「下の十巻を、明日にならば、―をぞ見給ひ合はするとて」〈・二三〉
名詞の上に付いて複合語を作り、別の、他の、などの意を表す。「どころ(異所)」「ひと(異人)」
[形動ナリ]
それぞれ別々なさま。まちまちなさま。→異なる
「もろこしとこの国とは、こと―なるものなれど」〈土佐
普通と違っているさま。格別なさま。→こと
「この皇子みこ生まれ給ひて後は、いと心―に思ほしおきてたれば」〈・桐壺〉

け【異】

[形動ナリ]
普通と違っているさま。異常なさま。
衣手ころもで葦毛あしげの馬のいなく声心あれかも常ゆ―に鳴く」〈・三三二八〉
まさっているさま。格別であるさま。→
「十月ばかりの紅葉、四方よもの山辺よりも―にいみじくおもしろく」〈更級

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「異」の意味・読み・例文・類語

け【異】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙
  2. 普通、一般とは違っているさま。他のものとは異なっているさま。
    1. [初出の実例]「其の烟気(けぶり)、遠く薫(かを)る。則ち異(ケ)なりとして献る」(出典:日本書紀(720)推古三年四月(岩崎本訓))
    2. 「妹が手を取石(とろし)の池の波の間ゆ鳥が音(ね)(けに)鳴く秋過ぎぬらし」(出典:万葉集(8C後)一〇・二一六六)
  3. ある基準となるものと比べて、程度がはなはだしいさま。きわだっているさま。多く、連用形「けに」の形で、特に、一段と、とりわけなどの意で用いられる。
    1. [初出の実例]「秋と言へば心そ痛きうたて家爾(ケニ)花になそへて見まく欲(ほ)りかも」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三〇七)
    2. 「おきて見んと思ひしほどに枯れにけり露よりけなる朝顔の花」(出典:曾丹集(11C初か))
  4. 能力、心ばえ、様子などが特にすぐれているさま。すばらしいさま。
    1. [初出の実例]「行ひなれたる法師よりは、けなり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)
    2. 「御かたちのいみじうにほひやかに、うつくしげなるさまは、からなでしこの咲ける盛りを見んよりもけなるに」(出典:夜の寝覚(1045‐68頃)四)
  5. ( 「けな」の形で用いることが多い ) けなげであること。殊勝であるさま。→けな人けな者
    1. [初出の実例]「ヲヲおとなしやけな子やな」(出典:浄瑠璃・甲賀三郎(1714頃)四)
  6. ( 「けなひと」「けなもの」の形で用い ) 温和であるさま。また、柔弱であるさま。→けな人けな者
  7. 一風変わっておもしろいさま。おつなさま。
    1. [初出の実例]「ちっくりけな事云出しおった」(出典:浄瑠璃・男作五雁金(1742)新町捕物)

こと【異・殊】

  1. [ 1 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙
    1. 他と同じでないさま。相違しているさま。比較の対象を「に」で示す。→ことなる
      1. [初出の実例]「紫草(むらさき)を草と別(わ)く別く伏す鹿の野は殊異(ことに)して心は同じ」(出典:万葉集(8C後)一二・三〇九九)
      2. 「シラハタノ カゼニ ナビクワ タダ ハクウンニ cotonarazu(コトナラズ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    2. 他と一段と相違するさま。世の常でないさま。→ことに
      1. (イ) きわだっているさま。とりたてて言うべきさま。格別。特別。
        1. [初出の実例]「このごろ、ことなることなし」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
      2. (ロ) 他とくらべて一きわすぐれているさま。比較の対象を「より」「に」で示す。
        1. [初出の実例]「嬰児の間の瑞想も 人より異(コト)に御座て」(出典:天台大師和讚(10C後‐11C前))
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 他のもの。別のもの。口語では「ことにする」という形でだけ用いられる。→ことにする
    1. [初出の実例]「細かりつるかたのあしにも、ことのこひをも削りつけて」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
  3. [ 3 ] 〘 接頭語 〙 名詞などの上に付いて、別の、他の、などの意味をそえる。「格別」の意を含む場合もある。
    1. [初出の実例]「上の件(くだり)の五柱の神は、別(こと)天つ神」(出典:古事記(712)上)
    2. 「法花経はさら也。こと法文なども、いと、多く読み給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)

い【異】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 )
  2. 他と違っていること。また、そのさま。→異(い)を立てる異(い)を唱える
    1. [初出の実例]「明鏡の明と古鏡の古と、同なりとやせん、異なりとやせん」(出典:正法眼蔵(1231‐53)古鏡)
    2. 「国土、およひ弟子、正法と像法と、ことことくひとしくして、異(イ)あることなけむ」(出典:妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)四)
  3. 普通、一般とは違っていること。変であること。不思議であること。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「斲蠅飛鳶之妙。凌匠輸而翔異」(出典:三教指帰(797)上)
  4. 仏語。異相のこと。四相の一つ。ものを変化させ、衰えさせるもの。
    1. [初出の実例]「生・住・異・滅の移りかはる実の大事は」(出典:徒然草(1331頃)一五五)
    2. [その他の文献]〔倶舎論‐五〕

い‐な【異】

  1. 〘 連体詞 〙 ( 形容動詞「異なり」の連体形「異なる」の変化したもの ) ふつうでは考えられない。風変わりな。変な。妙な。
    1. [初出の実例]「これやうな異な人や鳥やけだもの魚などのことを」(出典:玉塵抄(1563)五)

け‐に【異】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙け(異)

け‐な【異】

  1. け(異)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「異」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 11画

[字音] イ・ヨク
[字訓] ことなる・あやしむ・わざわい

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
〔説文〕三上に「つなり」と分異の意とし、字を(ひ)(与える)+廾(きよう)(両手)の会意とする。卜文・金文の字形によると、鬼頭のものが両手をあげている形。畏はその側身形。神異のものを示す。

[訓義]
1. ことなる、ことにする、わかつ。
2. 神異のものとして、あやし、あやしむ。
3. 異変のことで、わざわい。
4. ものを翼戴する形で、古くは翼の音で用いた。

[古辞書の訓]
名義抄〕異 コトニ・コトナリ・ケニ・アヤシム・メツラシ・ウヤマフ・ホシママ・ハナハダシ・タスク

[声系]
は異声。冀(き)は異声とされるが、おそらく全体象形で、頭角のある形。(ちよく)は金文に「翼々」の意に用い、おそらく(翼)・異と同声であろう。

[語系]
異・・翊()jikは同声。異・は通用し、・翊はまた通用する。金文の〔叔旅鐘(かくしゆくりよしよう)〕に「嚴として上に在り 異(よく)として下に在り」とみえ、異を厳翼の意に用いる。

[熟語]
異意・異域・異花・異客・異観・異軌・異議・異義・異議・異郷・異形・異曲・異口・異芸・異見・異行・異香・異国・異才・異采・異材・異策・異爨・異志・異事・異時・異日・異術・異処・異心・異迹・異説・異俗・異態・異端・異朝・異図・異同・異能・異稟・異聞・異邦・異謀・異味・異類・異例
[下接語]
違異・逸異・穎異・乖異・怪異・魁異・瑰異・異・異・奇異・異・咎異・矜異・驚異・傑異・好異・考異・差異・災異・雑異・志異・殊異・祥異・神異・新異・絶異・卓異・嘆異・異・珍異・同異・特異・伐異・異・表異・標異・分異・別異・変異・弁異・尤異・妖異・立異・霊異・録異

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android