デジタル大辞泉
「異」の意味・読み・例文・類語
こと【異】
[名]
1 別のもの。他のもの。
「下の十巻を、明日にならば、―をぞ見給ひ合はするとて」〈枕・二三〉
2 名詞の上に付いて複合語を作り、別の、他の、などの意を表す。「異どころ(異所)」「異ひと(異人)」
[形動ナリ]
1 それぞれ別々なさま。まちまちなさま。→異なる
「もろこしとこの国とは、言―なるものなれど」〈土佐〉
2 普通と違っているさま。格別なさま。→殊に
「この皇子生まれ給ひて後は、いと心―に思ほしおきてたれば」〈源・桐壺〉
け【▽異】
[形動ナリ]
1 普通と違っているさま。異常なさま。
「衣手葦毛の馬のいなく声心あれかも常ゆ―に鳴く」〈万・三三二八〉
2 まさっているさま。格別であるさま。→異な
「十月ばかりの紅葉、四方の山辺よりも―にいみじくおもしろく」〈更級〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
け【異】
〘形動〙
① 普通、一般とは違っているさま。他のものとは異なっているさま。
※
書紀(720)推古三年四月(岩崎本訓)「其の烟気
(けぶり)、遠く薫
(かを)る。則ち異
(ケ)なりとして献る」
※
万葉(8C後)一〇・二一六六「妹が手を取石
(とろし)の池の波の間ゆ鳥が音
(ね)異
(けに)鳴く秋過ぎぬらし」
② ある基準となるものと比べて、
程度がはなはだしいさま。きわだっているさま。多く、連用形「けに」の形で、特に、一段と、とりわけなどの意で用いられる。
※万葉(8C後)二〇・四三〇七「秋と言へば心そ痛きうたて家爾(ケニ)花になそへて見まく欲(ほ)りかも」
※
曾丹集(11C初か)「おきて見んと思ひしほどに枯れにけり露よりけなる朝顔の花」
③ 能力、心ばえ、様子などが特にすぐれているさま。すばらしいさま。
※
源氏(1001‐14頃)葵「行ひなれたる法師よりは、けなり」
※夜の
寝覚(1045‐68頃)四「御かたちのいみじうにほひやかに、うつくしげなるさまは、からなでしこの咲ける盛りを見んよりもけなるに」
④ (「けな」の形で用いることが多い) けなげであること。殊勝であるさま。→
けな人・
けな者。
⑤ (「けなひと」「けなもの」の形で用い) 温和であるさま。また、
柔弱であるさま。→
けな人・
けな者。
※浄瑠璃・男作五雁金(1742)新町捕物「ちっくりけな事云出しおった」
い【異】
〘名〙 (形動)
※
正法眼蔵(1231‐53)
古鏡「
明鏡の明と古鏡の古と、同なりとやせん、異なりとやせん」
※妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)四「
国土、およひ弟子、正法と
像法と、ことことくひとしくして、異
(イ)あることなけむ」
② 普通、一般とは違っていること。変であること。不思議であること。また、そのさま。
※三教指帰(797)上「斲レ蠅飛レ鳶之妙。凌二匠輸一而翔レ異」
③
仏語。
異相のこと。四相の一つ。ものを変化させ、衰えさせるもの。
※
徒然草(1331頃)一五五「生・住・異・滅の移りかはる実の
大事は」 〔
倶舎論‐五〕
こと‐な・る【異】
〘自ラ五(四)〙 (形容動詞の「ことなり(異)」を動詞に転用したもの) 同じでない。違っている。また、特別である。
※文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉初「人に異(コト)なった事さへすれば、なんでもかでも文明開化にしてしまふが」
い‐な【異】
〘連体〙 (形容動詞「異なり」の連体形「異なる」の変化したもの) ふつうでは考えられない。風変わりな。変な。妙な。
※玉塵抄(1563)五「これやうな異な人や鳥やけだもの魚などのことを」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報