精選版 日本国語大辞典 「怪」の意味・読み・例文・類語
あやし‐・む【怪】
※天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「其の僧等此の事を見て、稍や異(アヤシム)」
※源氏(1001‐14頃)夢浮橋「この月ごろ、うちうちにあやしみ思う給ふる人の御事にやとて」
※平家(13C前)五「秦舞陽わなわなとふるひければ、臣下あやしみて」
[2] 〘他マ下二〙
① 態度などにはっきりしない点があって変だと思う。変だと思ってとがめだてをする。
※天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事「ナニゴト ナレバ、ケシカラヌ サカナダウグノ カイヤウゾト ayaximureba(アヤシムレバ)」
② 叱ったりしてひどく当たりちらす。
※浮世草子・本朝二十不孝(1686)五「我と心腹たててすこしの事に人をあやしめければ」
③ 相手を卑しいものとして応対する。
けしかる【怪】
① あやしい。異様である。えたいが知れない。
※平家(13C前)二「今はけしかるかきすゑ屋形舟に大幕ひかせ、見もなれぬ兵共(つはものども)にぐせられて」
※増鏡(1368‐76頃)一五「内には、いつしかけしかる物など住みつきて」
② いっぷう変わっていて、おもしろい。悪くはない。
※増鏡(1368‐76頃)一「これもけしかるわざかなとて、御衣(おんぞ)ぬぎてかづけさせ給ふ」
あやし‐・ぶ【怪】
〘他バ上二〙 =あやしむ(怪)(一)
※続日本紀‐神護景雲元年(767)八月一六日・宣命「此を朕自らも見行し〈略〉、怪備(あやしビ)喜びつつ在る間に」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「相人驚きて、あまたたびかたぶきあやしぶ」
[語誌]上二段活用の「あやしぶ」の例が平安初期から見られ、これが四段活用の「あやしぶ」を経て、四段活用の「あやしむ」となったと推定する説がある。→「あやしむ」の語誌
け【怪】
〘名〙
① 不思議なこと。あやしいこと。
※太平記(14C後)二〇「加様(かやう)の怪(ケ)共、未然に凶を示しけれ共」
② ばけもの。
※大鏡(12C前)六「怪(クヱ)と人の申すことどものさせることなくてやみにしは」
あや‐・む【怪】
〘他マ下二〙 (形容詞「あやし」を動詞化したもの) 怪しむ。怪しく思う。不審に思う。いぶかる。
※夜の寝覚(1045‐68頃)一「近くしのびやかならんけはひなどは、いまだ聞きもしらねば、あらずとも、え聞きもあやめず」
あやしみ【怪】
〘名〙 (四段動詞「あやしむ(怪)」の連用形の名詞化) 怪しむこと。不審。疑い。
※平家(13C前)一「貫首以下あやしみをなし、『〈略〉布衣の者の候ふはなに者ぞ。狼藉なり。罷り出でよ』と六位をもって言はせければ」
あや‐
し【怪】
〘形シク〙 ⇒あやしい(怪)
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