隙(読み)ゲキ

デジタル大辞泉 「隙」の意味・読み・例文・類語

げき【隙】

1 物と物との間のすきま。間隙。
2 仲たがいをすること。不和。「隙を生ずる」
3 つけ入る機会。すき。
「軍国多事の―に乗じて此事をなす」〈木下尚江・火の柱〉
[類語]わだかまり・しこり・溝・隔たり・ギャップ・疎隔・懸隔・不一致・ずれ・行き違い・食い違い・相容れない・対立・もやもや・差し支え・障り・差し障り・当たり障り・支障・懸念・気がかり・フラストレーション・疎んずる・隔意・疎外・排斥・擯斥ひんせき・排他・排外・訳有り・眉唾・違和感・猜疑さいぎ・疑義・疑心暗鬼・疑心暗鬼を生ず・邪推・邪曲・爪弾つまはじき・遠退のく・遠退のける・隔絶・疎遠・厭いとう・バリア・シャットアウト

ひま【▽隙】

《「暇ひま」と同語源》
1 物と物との間の空所。すきま。すき。
「―漏る夜寒の風に」〈木下尚江・良人の自白〉
2 人と人との間にできた気持ちの隔たり。不和。
「長州の危急に及ぶを傍観なして居たると言うより―を生ぜし事なれば」〈染崎延房・近世紀聞〉
3 手抜かり。油断。すき。
「いささかの―なく用意したりと思ふが」〈枕・七五〉
[類語]間・あわい・はざま・合間あいま・すきま・間隙かんげき

げき【隙】[漢字項目]

[常用漢字] [音]ゲキ(慣) [訓]すき ひま
1 物のすきま。「間隙・空隙」
2 あいた時間。「寸隙」

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精選版 日本国語大辞典 「隙」の意味・読み・例文・類語

ひ‐ま【隙・暇・閑】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. [ 一 ] 空間的なすきま。間隙(かんげき)。
      1. ① 物の割れたり、裂けたりした箇所にできた空間。また、事柄のゆるみや欠如など。
        1. [初出の実例]「白衣の家の内に在りて、嚮の孔(ヒマ)の中より看る」(出典:斯道文庫本願経四分律平安初期点(810頃))
      2. ② 合わせたり、並べたりした物と物との間にできたすきま。すきま。また、密集した中にできた空所。あき地。余地。
        1. [初出の実例]「吹く風にわか身をなさば玉すだれひまもとめつついるべきものを」(出典:伊勢物語(10C前)六四)
        2. 「女房のひまなくさぶらふを」(出典:枕草子(10C終)一二九)
      3. ③ 官職のあき。空位。闕官。
        1. [初出の実例]「ひまなくて大将にえなり給はざりしぞ口をしかりしや」(出典:岩瀬本大鏡(12C前)三)
      4. ④ 人と人との交わりに生じたすきま。仲たがいによってできたへだて。不仲。不和。
        1. [初出の実例]「是に由りて韓子宿禰と大磐宿禰と隙(ひま)有り」(出典:日本書紀(720)雄略九年五月(前田本訓))
    2. [ 二 ] 継続する動作、状態の絶え間。事のとぎれた時間、または状態。
      1. ① 連続して行なわれる動作のあいま。間断。
        1. [初出の実例]「ひまなき御前渡りに、人の御心を尽し給ふも」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
      2. ② 仕事のあいま、手すきの時間。閑暇。また、生活に追われないゆとりやのどかさをいう。
        1. [初出の実例]「孔子のひまあって吾所にしづかにしていられたぞ」(出典:玉塵抄(1563)二四)
      3. ③ 心のすき。また、それから生ずる態度、体勢のすき。配慮、注意、警戒などの心が行き届かなかったり、ゆるんだりしたためにできるすき。
        1. [初出の実例]「王の閑(ヒマ)を候うて従容に言て曰く」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)三)
      4. ④ 継続している状態が中断したり、勢いが衰えたりした間、また、その状態。雨の降りやんだ間、病が小康を保っている間など。
        1. [初出の実例]「かまど山雪はひまなくふりしけど火のけをちかみたまらざりけり」(出典:曾丹集(11C初か))
      5. ⑤ 事を行なう時期。行動をするのに都合のよい時。機会。
        1. [初出の実例]「これ、よきひまなれば奉りてん」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲上)
      6. ⑥ 勤務、奉公を休む間。休暇。特に雇われている者の場合にいう。また、一時婚家を去って里帰りをすることにもいう。
        1. [初出の実例]「三日のひまのほしさよな、よき御きげんを、まもりてに、ひま、こはばやと、おぼしめし」(出典:説経節・をくり(御物絵巻)(17C中)一二)
      7. ⑦ ( ⑥から転じて ) 雇用、主従、夫婦、養子などの関係を絶って、勤めをやめ、また里に帰ること。長のいとま。
        1. [初出の実例]「あねごさまとそれがしに、ひまをたまはり候へや」(出典:説経節・説経苅萱(1631)中)
      8. ⑧ 限られた時間。わずかな時間。転じて、事をなすための時間。「手まひまをかける」
        1. [初出の実例]「羊一疋我とともに乗りて渡る。残りの羊、数多ければ、そのひまいくばくの費へぞや」(出典:仮名草子・伊曾保物語(1639頃)中)
  2. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙 やるべきことがなくて余裕のあるさま。格別の行為や仕事がなくて漫然としているさま。
    1. [初出の実例]「ヒマナ のどけき いとまある」(出典:詞葉新雅(1792))
    2. 「ありとある雑言を唄って彼等の閑(ヒマ)な時間をつぶさうとする」(出典:道程(1914)〈高村光太郎〉或る宵)

隙の語誌

( 1 )「ひび(皹)」と同根の「ひ」と、「はざま」「まほらま」などに見られる、場所を表わす接尾辞「ま(間)」から成る語。なお、「日本書紀」の古訓には「間」を「ひ」と訓んだものがあり、「ひのあし(隙駟)」などとも合わせ、古形「ひ」が存在したと考えられる。
( 2 )語構成から、空間的な意味が原義となる。しかし、[ 一 ]②のように空間的な意味でも、[ 一 ]④のように人間関係のすきまでも、[ 二 ]①のように時間的な意味でも使われていることからも、平安時代では用法が拡大していたことがうかがわれる。中世以降は、主として時間的意味に用いられるようになり、空間的意味はしだいに衰退していった。


げき【隙】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ① 物と物との間のすきま。間隙。空隙。〔荀子‐礼論〕
  3. ② 仲たがいをすること。不和。
    1. [初出の実例]「高野天皇与レ帝有レ隙。於レ是、車駕還二平城宮一」(出典:続日本紀‐天平宝字六年(762)五月辛丑)
    2. [その他の文献]〔戦国策‐燕策〕
  4. ③ 乗じる機会。ちょうどいい機会。好機。
    1. [初出の実例]「軍国多事の隙(ゲキ)に乗じて此事をなす先づ売国の奸賊を誅して」(出典:火の柱(1904)〈木下尚江〉一八)

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普及版 字通 「隙」の読み・字形・画数・意味

隙
常用漢字 13画

(異体字)
14画

[字音] ゲキ・ケキ
[字訓] ひま・すき

[説文解字]

[字形] 会意
(ふ)+(げき)。は神の陟降する神梯。は玉光が上下に放射する形。神の降下するところに玉をおいて、神霊の示現することを示す。〔説文〕十四下に「壁際(へきさい)の孔なり」とするのは、七下を「際見(さいけん)の白なり」とする義と対応するものであるが、隙はもと壁孔をいうような字ではない。際が神霊を祭る神人の境を示す字であるように、隙も神霊の示現するところ、神人の間をいう。その玉光が他に及ぶことから、間隙の意となる。

[訓義]
1. 玉光のもれる意。ひま、すき。
2. 間隙、あいだ、すきま、われめ、きず。
3. 欠落したところ、不和、あらそい、なかたがい。
4. 他と接するさかい、つづく。
5. ・郤と通じる。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕隙 ヒマ・ムクユ・タマノキズ・スクナシ 〔字鏡集〕隙 タマノキズ・スクナシ・アヒダ・アタヲロカナリ・シヅカ・ツラヌ・ウガツ・ムクユ・ヒマ

[語系]
隙・khyak、(間)keanは声義近く、は〔説文〕十二上に「隙なり」という。金文の字形は門と(肉)とに従い、門に肉を供えて祭る儀礼をいう。隙はその字形においては際と、また字の声義においてはと、連なるところのある字である。

[熟語]
隙宇▶・隙屋▶・隙罅▶・隙壊▶・隙間▶・隙駒▶・隙欠▶・隙穴▶・隙孔▶・隙駟▶・隙積▶・隙地▶・隙蠹▶・隙末▶
[下接語]
怨隙・過隙・罅隙・間隙・竅隙・隙・駒隙・空隙・隅隙・穴隙・決隙・寸隙・繊隙・争隙・内隙・農隙・辺隙・余隙

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