厭う(読み)イトウ

デジタル大辞泉 「厭う」の意味・読み・例文・類語

いと・う〔いとふ〕【×厭う】

[動ワ五(ハ四)]
嫌って避ける。嫌がる。「団体行動を―・う」「どんな苦労も―・わない」
かばう。大事にする。いたわる。現代では多く健康についていう。「おからだをお―・いください」
「元より惣八、門之進を―・ひけるより」〈浮・懐硯・二〉
(多く「世をいとう」の形で)世俗を嫌って離れる。出家する。
「世の憂きにつけて―・ふは」〈夕霧
危険や障害などを避ける。しのぐ。
「霜雪の寒苦を―・ふに心なし」〈笈の小文
[類語](1嫌う憎む嫌がる忌み嫌う恨むそねのろ憎悪する嫌悪する敵視する仇視きゅうしする嫉視しっしする呪詛じゅそする唾棄だきする目のかたきにする白い目で見るまがまがしいいまわしいいとわしいおぞましいうとましい忌む嫌い毛嫌い大嫌い食わず嫌いいけ好かない虫が好かないいや気に食わない犬も食わぬ憎い憎らしい憎たらしい憎憎しい苦苦しい腹立たしいいまいましい苦虫を噛み潰したよう苦り切る眉をひそめる鼻持ちならないうとむうとんずる嫌気忌避煙たがる呪わしいきしょい気色が悪い気味が悪い気味悪い底気味悪い薄気味悪い鳥肌が立つ気持ち悪い虫唾むしずが走る反吐へどが出るきもいグロいおどろおどろしい不気味不快不愉快鼻に付くうっとうしいむかつくむしゃくしゃくしゃくしゃ不興不機嫌薄ら寒いうそ寒い胸が悪い胸糞が悪い心外苛立たしいうらめしいしかめっ面渋面しぶつらしかめるひそめるひそみ顰蹙ひんしゅく苦る辟易うるさい嫌気が差す蛇蝎視だかつし倦厭けんえん迷惑身の毛がよだつ総毛立つ背筋が寒くなる背筋が凍るぞっと肌にあわを生じる冷汗三斗

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「厭う」の意味・読み・例文・類語

いと・ういとふ【厭】

  1. 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙
  2. いやだと思って避ける。うとましく思う。いやがる。
    1. [初出の実例]「手束杖(たつかづゑ) 腰にたがねて か行けば 人に伊等波(イトハ)え かく行けば 人に憎まえ」(出典万葉集(8C後)五・八〇四)
    2. 「さまざまに、かかる名のりする人を、いとふことなく拾ひ集めらるるに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)行幸)
  3. つらいこの世を避け離れる。出家する。世捨て人となる。
    1. [初出の実例]「猒ふ心はたちても坐てもただ此身の苦おほかるをいとふ也」(出典:観智院本三宝絵(984)下)
  4. いたわる。かばう。大事にする。気をつける。現在は、からだや健康などについていう。
    1. [初出の実例]「元より惣八門之進をいとひけるよりそれ程に思はれなば」(出典:浮世草子・懐硯(1687)二)
    2. 「本当に身体を厭(イト)はねばいけませぬぞえ」(出典:われから(1896)〈樋口一葉〉二)

厭うの語誌

もともとは、人を対象にして、嫌悪や忌避の感情を表わす語であった。中古以後、物事を対象に、嫌悪を感じてそれを避けるという行為を表わす用法が中心的になる。現在では、「どんな苦労もいとわない」「御身おいといください」などの慣用的表現に残る。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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