入れる(読み)イレル

デジタル大辞泉 「入れる」の意味・読み・例文・類語

い・れる【入れる/容れる】

[動ラ下一][文]い・る[ラ下二]
外側にあるものを、ある範囲内、内側の場所に移す。
㋐外から中に移し置く。また、はいらせる。「冷蔵庫に―・れる」「部屋に風を―・れる」
㋑支払うべきものを納める。「家賃を―・れる」
㋒組織・集団などの一員とする。法律的に認めて、家族などの構成員とする。「寮に―・れる」「大学に―・れる」「籍に―・れる」

㋐ある範囲・数量に含める。「計算に―・れる」「私を―・れて五人」
㋑まぜる。「麦を―・れたご飯」
間にはさむ。
㋐はめ込む。「窓枠にガラスを―・れる」「行間に―・れる」
㋑差しはさむ。「会議の途中休憩を―・れる」「疑いを―・れる余地はない」
ある作用を加える。「文章に手を―・れる」「腐敗した政治メスを―・れる」「テープにはさみを―・れる」「刻み目を―・れる」

㋐(容れる)認めて受け入れる。認めてやる。聞きいれる。「要求を―・れる」「人を―・れる度量がない」
㋑そうすることによって、受け入れてもらうように頼む。「詫びを―・れる」
気持ちなどを集中させる。
㋐(多く「身をいれる」「気をいれる」の形で)熱心に物事に打ち込む。「練習に気を―・れる」「力を―・れる」
㋑(多く「念をいれる」の形で)手落ちのないよう、十分注意する。「戸締まりには念を―・れなさい」
投票する。「一票を―・れる」
(「淹れる」「点れる」とも書く)湯を差して、茶などを出す。「コーヒーを―・れる」
電流を通じさせたり、操作を加えたりして、電気・あかりなどをつける。また、作動させる。始動する。「スイッチを―・れる」「エンジンを―・れる」
10 相手に連絡する。「電話を―・れる」「第一報を―・れる」
[下接句]足を入れる新しい酒を古い革袋に入れる息を入れる一札いっさつ入れる肩を入れる活を入れる瓜田かでんくつれずかんはつれず・勘定に入れる・気を入れる気合いを入れるくちばしれる腰を入れる探りを入れるしゅを入れる精を入れる底を入れる力を入れる茶々を入れる手に入れる手を入れる泣きを入れる縄を入れる念には念を入れよ念を入れる年季を入れる肌を入れる半畳を入れる筆を入れる仏作って魂入れず本腰を入れる身を入れる耳に入れるメスを入れる焼きを入れる世に入れられるびを入れる
[類語]盛るよそうそそ盛り付ける盛り込む盛り合わせる差す注ぎ込むぎ込む流し込む流れ込む注入注水注油収める仕舞う仕舞い込むぞうする収蔵する収納する格納する含む包含する・収録する収載する

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「入れる」の意味・読み・例文・類語

い・れる【入・容・納】

  1. 〘 他動詞 ラ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]い・る 〘 他動詞 ラ行下二段活用 〙
  2. 外部から、ある場所、環境などに移す。
    1. (イ) 外から、ある物の中、場所の内などへ移す。はいらせる。また、移して中に置く。
      1. [初出の実例]「わたつみの 手纏(たまき)の玉を 家づとに 妹にやらむと 拾(ひり)ひ取り 袖には伊礼(イレ)て 帰しやる 使無ければ」(出典:万葉集(8C後)一五・三六二七)
      2. 「風を納(イ)れようと思って、団扇(うちわ)を片手に」(出典:茶話(1915‐30)〈薄田泣菫〉それ猫が)
    2. (ロ) 見える所から、物陰に引っ込ませる。
      1. [初出の実例]「あかなくにまだきも月のかくるるか山のはにげていれずもあらなん〈在原業平〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑上・八八四)
    3. (ハ) 特定の環境の中に移す。
      1. [初出の実例]「行末は似つかはしい御縁を求めて何れかの貴族の若君(わかぎみ)を納れらるる御積り」(出典:風流仏(1889)〈幸田露伴〉八)
  3. ある限られた範囲内に取り込む。
    1. (イ) 仲間に加える。含める。また、書物などに載せる。
      1. [初出の実例]「いま、この事をいふに、つかさくらゐ、高き人をば、たやすきやうなればいれず」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
      2. 「此歌は金葉集にぞ入(いれ)られける」(出典:平家物語(13C前)一)
    2. (ロ) 心、目、耳などの知覚に取り入れる。また、知覚できる範囲内に置く。
      1. [初出の実例]「かう心にいれて思ひたることをたがへたれば罪得(う)らん」(出典:枕草子(10C終)八七)
      2. 「御聞きに入れたいことも万とござるが」(出典:椀久物語(1899)〈幸田露伴〉五)
  4. (心や力などを)その方へ注ぎ込む。集中する。こめる。
    1. [初出の実例]「力をもいれずして、あめつちを動かし」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
  5. 外部からある作用を加える。
    1. (イ) あるものに、別のものを加えてなおしたり変えたりする。
      1. [初出の実例]「こまかにと口入(いれ)給へ。爰にて事はじめたる事なれば、おろかならん、いとほし」(出典:落窪物語(10C後)四)
      2. 「それを読み直したり、手を入れたりした事は滅多になかった」(出典:門(1910)〈夏目漱石〉一四)
    2. (ロ) (ある作用を加えて)筋、線、裂けめ、くぼみなどをつける。
      1. [初出の実例]「骨にまきゑをし、あるは金、銀、沈(ぢん)、紫檀の骨になん筋をいれ、ほり物をし」(出典:大鏡(12C前)三)
    3. (ハ) (ある作用を加えて)そのものが活動を開始するようにする。「スイッチを入れる」
      1. [初出の実例]「ついこの間まで炬燵を入れて寝てゐたのに」(出典:青草(1914)〈近松秋江〉六)
  6. ある時間の経過の中にさしはさむ。時間をとる。「一服入れる」
    1. [初出の実例]「よも山の物語にとりまぎれ、しばらく隙(ひま)を入(いれ)ける所へ客来(きたり)」(出典:咄本・軽口露がはなし(1691)三)
  7. ( 腹に入れる意から ) 食べる。また、人形浄瑠璃社会で、酒を飲む意にいう。
    1. [初出の実例]「けふはびっくりの仕つづけ、それゆへか腹もがっくり、年寄と紙袋は入れにゃたてらぬ。内へいんで入れませふ」(出典:浄瑠璃・蘆屋道満大内鑑(1734)一)
  8. (物や金銭、情報などを)受取り手に渡す。納める。また、(資金などを)つぎ込む。
    1. [初出の実例]「私の持て居たものを、宗さんに入(イレ)てくらして居るのに」(出典:人情本・英対暖語(1838)五)
    2. 「和服ではもう入質(イレ)る物が無いのですって」(出典:俳諧師(1908)〈高浜虚子〉五七)
  9. (広い空間があったり、設備を整えたりして)人や物がその中に納まるようにする。収容する。
    1. [初出の実例]「虚空よく物をいる」(出典:徒然草(1331頃)二三五)
  10. (相手の言い分や行動を)よいと認める。容認する。聞き入れる。
    1. [初出の実例]「凡(およそ)(この)五罪神人共に容(イ)れず臣等一死天に代りて之を誅せり」(出典:近世紀聞(1875‐81)〈条野有人〉初)
  11. 選挙、採決、売買、請負などで、定めに従って紙に書いて差し出す。投票、入札する。
    1. [初出の実例]「百五十両下では落札(おち)んで、官も商売上手やが、損知ってて高う入れる忠義もんが何んであないに多いやろ」(出典:太政官(1915)〈上司小剣〉五)
  12. 謡曲や義太夫節で、高い音階へ突くように、声を張り上げる。〔申楽談儀(1430)〕
  13. ( 「淹」とも書く ) (茶などに湯を注いで)飲めるように整える。
    1. [初出の実例]「誰ぞに煑花(にばな)を一つ入(イレ)させて呉(くん)なな」(出典:人情本・閑情末摘花(1839‐41)一)
  14. ( 自動詞的に用いて ) 光が差し込む。
    1. [初出の実例]「どうも暮れてしまひますまでは夕日が入れますので」(出典:雁(1911‐13)〈森鴎外〉七)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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