日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘンリー(5世)」の意味・わかりやすい解説
ヘンリー(5世)
へんりー
Henry V
(1387―1422)
ランカスター朝のイギリス王(在位1413~1422)。ヘンリー4世の長男。13歳にして早くも国政に関与し、15歳のとき、実戦の指揮をとった。即位後、初めはロラーズLollards(ウィクリフの教説信奉者)の反乱や貴族の陰謀が相次いだが、やがて反対派を鎮圧して治安を確立すると、念願の対フランス百年戦争を再開し、軍を大陸に進めた。1415年アザンクールの戦いに大勝利を収めて優位にたち、ノルマンディー地方を制圧した。当時、アルマニャック派とブルゴーニュ派との抗争が続いていたフランスは、結局イギリス軍に屈服し、1420年トロア条約を結んだ。これによりヘンリーはフランス王シャルル6世の王位継承者となり、また摂政に任じられて王女カトリーヌCatherine of Valois(1401―1437)と結婚した。しかし、両王国の併合を実現するかにみえたこの成功も長く続かず、条約に従わぬ諸地方の討伐中ヘンリーは病死した。勇敢な武人、有能な為政者として歴代のイギリス諸王のなかでも高い評価が与えられている。
[松垣 裕 2023年1月19日]