善く(読み)ヨク

デジタル大辞泉 「善く」の意味・読み・例文・類語

よく【善く/良く/好く/能く/克く】

[副]形容詞よい」の連用形から》
念を入れてするさま。十分に。「歯を―磨く」「―勉強しなさい」
程度がはなはだしいさま。非常に。たいそう。「あの親子は―似ている」
その状態条件にふさわしいさま。巧みに。うまく。「―書けました」「―設計された家」
困難なことをしたり、考えられないような喜ばしい結果を得たりして感じ入るさま。本当にまあ。よくぞ。「―来てくれました」「月給だけで―やっていけるね」
相手の非常識な言動などを非難するさま。4を反語的にいう語。よくもまあ。「―のこのこと来られたものだ」
何度も同じことをするさま。しばしば。たびたび。「―物忘れする」「―行く店」
[類語](1十分存分に思うさまみっちりみっしりとく万万ばんばん/(6しばしば度度ちょくちょく往往ちょいちょいしきりしょっちゅう幾度頻繁頻頻しげしげ足繁くあまたたび何度も再三再再再三再四再びまた重ねて再度又又又もまたもやまたぞろ懲りずまに二の舞性懲しょうこりもないてつを踏む前車のてつを踏むてつを踏む改めてまたしてもくれぐれくれぐれも返す返すよくよくとくととっくり重重重ね重ね幾重にも念入り二度と二度と再びくどくどうだうだぐだぐだくだくだたらたらああだこうだ四の五の四の五の言う

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精選版 日本国語大辞典 「善く」の意味・読み・例文・類語

よく【善・能】

  1. 〘 副詞 〙 ( 形容詞「よい」の連用形から )
  2. 十分に。念を入れて。また、巧みに。うまく。
    1. [初出の実例]「いひね与久(ヨク)かそへてたまふへし」(出典正倉院文書(762頃)万葉仮名文)
    2. 「淡路、額つきあしく、目尻つり過ぎたり、能(ヨク)人にまはるよし、当世傾城なり」(出典:評判記・難波物語(1655))
    3. 「其事情を、お前の知ってる限、熟(ヨ)く悉しく話して遣るが可(い)い」(出典:はやり唄(1902)〈小杉天外〉七)
  3. ひどく。非常に。はなはだしく。大変。
    1. [初出の実例]「吾が聞きし耳に好(よく)似る葦のうれの足ひく吾が背つとめたぶべし」(出典:万葉集(8C後)二・一二八)
    2. 「木像の顔が文三の欠伸をした面相に酷(ヨ)く肖(に)てゐるとか昇の云ったのが」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二)
  4. たびたび。ともすれば。しばしば。ちょくちょく。まま。
    1. [初出の実例]「なにとなきことを我も人もいひしをりおもはぬ物のいひはづしをしてそれをよくいはれしも」(出典:建礼門院右京大夫集(13C前))
    2. 「この種の印刷物のハガキはよく来る」(出典:負け犬(1953)〈井上友一郎〉)
  5. 困難なことをなし遂げた時、あたりまえでは考えられないような結果を得た時、喜ばしいことにでくわした時などの感嘆賞賛喜悦あるいは羨望気持を表わす。よくもまあ。本当にまあ。よくぞ。
    1. [初出の実例]「好(よく)渡る人は年にもありといふを何時の間にそも吾が恋ひにける」(出典:万葉集(8C後)四・五二三)
    2. 「よく来たノウ。此間うちから、衆人(みな)さんが大案じヨ」(出典:人情本・閑情末摘花(1839‐41)五)
  6. ( を否定的な意味でいう ) 常識では考えられないような行為や言説が行なわれた時、それに対して非難・軽蔑憎悪などの気持を表わす。恥ずかしくもなくまあ。まあぬけぬけと。よくもまあ。
    1. [初出の実例]「うたての御達や、恥づかしげなるまめ人をさへ、よくこそ、おもなけれと、忍びてのたまふなり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)竹河)

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