機械遺産(読み)キカイイサン

デジタル大辞泉 「機械遺産」の意味・読み・例文・類語

きかい‐いさん〔‐ヰサン〕【機械遺産】

日本機械学会JSME)が、国内のすぐれた機械技術を保存する目的で行う事業の一。技術の発展上重要なもの、または文化や経済などに貢献したものを認定し、表彰する。これまでに旅客機YS-11や札幌市時計台の時計装置、ウォシュレットなどが認定されている。

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事典 日本の地域遺産 「機械遺産」の解説

機械遺産

「機械遺産」は、2007(平成19)年日本機械学会創立110周年の記念事業として始まった、歴史に残る機械技術関連遺産を保存し、文化的遺産として次世代に伝えることを目的に、国内の機械技術面で歴史的意義のある「機械遺産」を認定する制度。2012(平成24)年までに計55件が認定されている。〔認定基準〕次の各項目のいずれかに該当するもので、広く機械技術・機械工学に寄与したもの。(1)対象物が、その独自性(はじめてのもの、現在最古のもの、以前に広く使われた機械で使用されている最後のもの)によって区別されるもの。(2)その他、機械技術史上の特徴を保有しているもの。(3)既に博物館などで記念物として認定されたものも含む。〔認定対象〕原則として次の各項目のいずれかに該当するもの。(1)Site:歴史的景観を構成する機械遺産。(2)Landmark:機械を含む象徴的な建造物・構造物。(3)Collection:保存・収集された機械。(4)Documents:歴史的意義のある機械関連文書類。〔対象となる時代〕原則として産業革命以降の工業化がなされた時代を対象とする(年代の下限は設けない)。
[選定機関] 日本機械学会
[選定時期] 2007(平成19)年~
[登録・認定名] 小菅修船場跡の曳揚げ装置 | 熊本大学の旧機械実験工場と文化財工作機械群 | 足踏旋盤《1875(明治8)年伊藤嘉平治作》 | 陸用蒸気タービン | 10A型ロータリエンジン | ホンダCVCCエンジン | 民間航空機用FJR710ジェットエンジン | ヤンマー小形横形 水冷ディーゼルエンジンHB形 | ゐのくち式渦巻きポンプ | 高周波発電機 | 東海道新幹線0系電動客車 | 230形233号タンク式蒸気機関車 | 旅客機YS11 | カブ号F型(ホンダ自転車用補助エンジン) | 麦わら帽子製造用環縫ミシン | 無停止杼換式豊田自動織機(G型) 第1号機 | 活版印刷機 | コマツブルドーザーG40(小松1型均土機) | オリンパス ガストロカメラGT-I | バックトン万能試験機 | 万能製図機械MUTOH『ドラフターMH-I』 | 万年自鳴鐘 | 「旧筑後川橋梁」(筑後川昇開橋) | 機械学会黎明期の学術図書(機械学会誌創刊号、機械工学術語集及び機械工学便覧) | 東京帝国大学水力学及び水力機講義ノート(真野文二/井口在屋教授) | 三居沢発電所関係機器・資料群 | 三池港水圧式閘門と蒸気式浮クレーン | 円太郎バス(フォードTT型) | 機械式通信機器群(谷村株式会社新興製作所製) | 自働算盤(機械式卓上計算機) パテント・ヤズ・アリスモメトール | 電機事業創業期の国産誘導電動機および設計図面 | 札幌市時計台の時計装置 | 旧峯岸水車場 | 親歯車ホブ盤HRS-500のマスターウォームホイール | ロコモビル(国内最古の自家用乗用自動車) | アロー号(現存最古の国産乗用自動車) | 英国製50フィート転車台 | としまえん「カルーセル エルドラド」 | 旧金毘羅大芝居(金丸座)の廻り舞台と旋回機構 | たま電気自動車(E4S-47 I) | 内燃機関式フォークリフト | 高砂荏原式ターボ冷凍機 | 自動改札機 | 青函連絡船及び可動橋(①船舶:青森側/②船舶:北海道側/③可動橋:青森側/④可動橋:北海道側) | 幹線用電気機関車ED15形 | 岡谷蚕糸博物館の繰糸機群(フランス式繰糸機、諏訪式繰糸機、4条繰り諏訪式繰糸機、6条繰り諏訪式繰糸機、イタリア式繰糸機、御法川式多条繰糸機、織田式多条繰糸機、増澤式多条繰糸機) | 豊田式汽力織機 | 油圧ショベルUH03 | ファスナーチェーンマシン(YKK-CM6) | 多能式自動券売機 | ステンレス鋼製車両群(東急5200系と7000系) | 吉野山ロープウェイ | 池貝工場製第1号旋盤(現存最古の動力旋盤) | 卓上複写機リコピー101 | ウォシュレットG(温水洗浄便座)

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「機械遺産」の意味・わかりやすい解説

機械遺産
きかいいさん
Mechanical Engineering Heritage

日本の機械産業の発展に貢献し、歴史的に意義のある製品(物件)を遺産として認定する制度。または認定された物件。たいせつに保存し次世代に伝える意義があるとして、社団法人日本機械学会が創立110周年を迎えた2007年(平成19)から認定を始めた。機械技術上、工学的に大きな進歩や成果に寄与した、あるいは国民生活や文化、社会、教育などに貢献した機械が認定される。(1)世界初、日本最古などの機械で、現在まで保存・収集されているもの(Collection)、(2)機械を含む象徴的な建造物・構造物(Landmark)、(3)歴史的景観を構成する機械遺産(Site)、(4)歴史的に意義のある機械関連文書類(Documents)、の4分野を対象に認定する。毎年「機械の日」である8月7日に認定式がある。

 2019年までの認定件数は99件。国産初の量産型「旅客機YS11」、初代の「東海道新幹線0系電動客車」、世界初のロータリーエンジンであるマツダの「10A型ロータリエンジン」、アメリカの排ガス規制を世界で初めてクリアした「ホンダCVCCエンジン」、有人潜水調査船「しんかい2000」のほか、「札幌市時計台の時計装置」などの風景、「青函(せいかん)連絡船及び可動橋」などの建造物・構造物、「東京帝国大学水力学及び水力機講義ノート」などの文書類が認定されている。対象となる時代は原則、産業革命以降の工業化時代であるが、近代以前の機械も含み、芝浦製作所(後の東芝)創業者の田中久重(ひさしげ)作の「からくり人形 弓曳(ひ)き童子」や、現存する最古の劇場型木造芝居小屋「旧金毘羅(こんぴら)大芝居(金丸座(かなまるざ))の廻(まわ)り舞台と旋回機構」など江戸期の遺産も認定されている。ほとんどの機械遺産は記念館や博物館などに展示されており、認定された機械遺産を観光資源として活用し、地域経済の活性化に役だてるねらいもある。

[矢野 武 2019年8月20日]

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知恵蔵 「機械遺産」の解説

機械遺産

歴史に残る機械を日本機械学会が認定する制度。同学会創立110周年を記念して設けられ、2007年8月に第1回の認定25件が表彰された。08年以降毎年数件ずつ選んで、10年間で計100件を認定する計画。第1回に選ばれたのは、初代新幹線の0系車両、国産旅客機YS-11、マツダのロータリーエンジン、豊田佐吉が発明した自動織機、国産初のブルドーザー(コマツ)など。長崎市の「小菅修船場跡の曳揚(ひきあ)げ装置」は、機械遺産がある歴史的な風景として認定された。1868年に完成したもので、船を揚げるための歯車が蒸気機関で動くようになっている。

(高橋真理子 朝日新聞記者 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

知恵蔵mini 「機械遺産」の解説

機械遺産

日本国内に現存する歴史的に意義のある機械に与える認定のことで、技術社会の基幹である機械関連技術に関わる技術者、研究者、学生、法人の会員から構成されている、一般社団法人・日本機械学会が制定している。同遺産の認定は、07 年に同学会創立110 周年を記念して発足した事業で、14年で8回を数える。14年7月24日、同学会は、戦後に銭湯やデパートに置かれたマッサージチェア、南極点に到達した雪上車など8件の同遺産認定を発表。機械遺産は計69件となった。

(2014-7-25)

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