(読み)げん

精選版 日本国語大辞典 「玄」の意味・読み・例文・類語

げん【玄】

〘名〙
くろ。くろい色。赤みがかった黒色。〔詩経‐小雅・何草不黄〕
② 天。天の色。
※三教指帰(797頃)下「鐘振。花飄聯聯。燐燐爛爛。震震填填。溢目溢耳。満黄満玄」 〔易経‐文言伝〕
③ (形動) 奥深く、深遠であるさま。また、そのような道理やおもむき。
新撰和歌(930‐934)序「故抽弘仁。至于延長。詞人之作。花実相兼而已。今之所撰玄之又玄也」 〔老子‐一〕
④ 老荘の説いた哲理。形も神仙も何も無く、空間・時間を超越して存在し、天地万象の根源となるもの。〔老子‐一〕
⑤ 陰暦九月の異称。〔撮壌集(1454)〕 〔爾雅‐釈天〕
⑥ やしゃご。孫の孫にあたるもの。玄孫。〔運歩色葉(1548)〕〔韋誕‐皇后親蚕頌〕
⑦ (多く、名に「玄」の字を用いたところから) 医者のことをいう、遊里でのことば。また、医者風の姿で遊里に出入りしたところから、僧侶をもいう。玄様(げんさま)
浮世草子・新吉原常々草(1689)下「浅草あたりの玄(ゲン)色里にうかれゆきけるに」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「玄」の意味・読み・例文・類語

げん【玄】[漢字項目]

常用漢字] [音]ゲン(呉) [訓]くろ くろい
赤または黄を帯びた黒色。「玄黄玄米
奥深くて暗い。「玄関玄室玄妙幽玄
奥深い道理。「玄学
はるかに遠い。「玄孫
[名のり]しず・しずか・つね・とお・とら・のり・はじめ・はる・はるか・ひかる・ひろ・ふか・ふかし
難読玄鳥つばくらめ玄孫やしゃご

げん【玄】

赤または黄を含む黒色。
老荘思想で説く哲理。空間・時間を超越し、天地万象の根源となるもの。
微妙で奥深いこと。深遠なおもむき。
「―を談じ理をひらく」〈太平記・一〉
《玄のつく名が多いところから》江戸時代の遊里で、医者のこと。また、医者を装ったところから、僧侶の客をいう。玄様。
「浅草あたりの―、色里にうかれゆきけるに」〈浮・常々草〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「玄」の意味・わかりやすい解説

玄 (げん)
xuán

《老子》第1章に〈玄のまた玄,衆妙の門〉とあるように,存在の根源にある幽遠にして神秘的なものをあらわす。色としては黒。それは〈天地玄黄〉といわれるように本来天の色である。また〈玄酒〉といえば祭礼さいに酒の代用とされる水を意味する。哲学として〈玄〉をとくに強調したのは前漢末の揚雄が《易経》になぞらえてつくった《太玄経》であり,また《老子》の〈無〉に基礎をおく魏・晋の哲学は〈玄学〉と呼ばれた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【黒】より

…無彩色だから明度(色の3属性の一つで,色の明るさを表す)によって規定され,黒は明度0である。
[象徴としての黒]
 くろい意を表す漢字は黒のほかに玄があり,古くはむしろこちらのほうが多く使われた。玄の字は黒い糸を束ねた形で,かすかで見にくいところから天の色とされ,また北方の色とされた。…

【黒】より

…無彩色だから明度(色の3属性の一つで,色の明るさを表す)によって規定され,黒は明度0である。
[象徴としての黒]
 くろい意を表す漢字は黒のほかに玄があり,古くはむしろこちらのほうが多く使われた。玄の字は黒い糸を束ねた形で,かすかで見にくいところから天の色とされ,また北方の色とされた。…

※「玄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android