(読み)ゲン

デジタル大辞泉 「玄」の意味・読み・例文・類語

げん【玄】[漢字項目]

常用漢字] [音]ゲン(呉) [訓]くろ くろい
赤または黄を帯びた黒色。「玄黄玄米
奥深くて暗い。「玄関玄室玄妙幽玄
奥深い道理。「玄学
はるかに遠い。「玄孫
[名のり]しず・しずか・つね・とお・とら・のり・はじめ・はる・はるか・ひかる・ひろ・ふか・ふかし
[難読]玄鳥つばくらめ玄孫やしゃご

げん【玄】

赤または黄を含む黒色。
老荘思想で説く哲理。空間・時間を超越し、天地万象の根源となるもの。
微妙で奥深いこと。深遠なおもむき。
「―を談じ理をひらく」〈太平記・一〉
《玄のつく名が多いところから》江戸時代の遊里で、医者のこと。また、医者を装ったところから、僧侶の客をいう。玄様。
「浅草あたりの―、色里にうかれゆきけるに」〈浮・常々草〉

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精選版 日本国語大辞典 「玄」の意味・読み・例文・類語

げん【玄】

  1. 〘 名詞 〙
  2. くろ。くろい色。赤みがかった黒色。〔詩経‐小雅・何草不黄〕
  3. 天。天の色。
    1. [初出の実例]「鐘振。花飄聯聯。燐燐爛爛。震震填填。溢目溢耳。満黄満玄」(出典:三教指帰(797頃)下)
    2. [その他の文献]〔易経‐文言伝〕
  4. ( 形動 ) 奥深く、深遠であるさま。また、そのような道理やおもむき。
    1. [初出の実例]「故抽弘仁。至于延長。詞人之作。花実相兼而已。今之所撰玄之又玄也」(出典:新撰和歌(930‐934)序)
    2. [その他の文献]〔老子‐一〕
  5. 老荘の説いた哲理。形も神仙も何も無く、空間・時間を超越して存在し、天地万象の根源となるもの。〔老子‐一〕
  6. 陰暦九月の異称。〔撮壌集(1454)〕 〔爾雅‐釈天〕
  7. やしゃご。孫の孫にあたるもの。玄孫。〔運歩色葉(1548)〕〔韋誕‐皇后親蚕頌〕
  8. ( 多く、名に「玄」の字を用いたところから ) 医者のことをいう、遊里でのことば。また、医者風の姿で遊里に出入りしたところから、僧侶をもいう。玄様(げんさま)
    1. [初出の実例]「浅草あたりの玄(ゲン)色里にうかれゆきけるに」(出典:浮世草子・新吉原常々草(1689)下)

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普及版 字通 「玄」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 5画

[字音] ゲン
[字訓] くろ・ふかい・しずか

[説文解字]
[金文]

[字形] 象形
糸たばを拗(ね)じた形。黒く染めた糸をいう。〔説文〕四下に「幽なり」とし、「にして赤色を玄と爲す。幽に象り、入は之れをふなり」と(ゆう)と入に従う字とするが、入とする部分は糸たばの上部を結んだ形。上を結んだ糸たばを染汁にひたして黒く染める。その結んだ部分は色に染まずに残るので、素という。〔周礼、考工記、鍾氏〕に染色の法をしるし、三入を(くん)、五入を(しゆう)、七入を緇(し)という。玄は緇に近く、その色相幽深であるので、幽玄といい、幽遠の意に用いる。

[訓義]
1. くろ、あかぐろ。
2. ふかい色、ふかい。
3. しずか、かすか、奥深い。
4. 深くかくれたもの、ふしぎ、玄妙、道、道の究極。
5. 五行に配して北、北方
6. ・眩と通じ、かがやく、くらむ。

[古辞書の訓]
名義抄〕玄 クロシ・ハルカニ・ハルカナリ・アキラカニ/玄牝 ハナクケ 〔立〕玄 ムカシ・ハルカナリ・クロシ・カクル・ハルカ・キハム・タユミス 〔字鏡集〕玄 トホシ・ハルカニ・ハルカナリ・アキラカニ・クロシ

[部首]
〔説文〕に(けん)、〔玉〕にの二字を属する。は玄を並べた形で黒の意。は妙の初文。

[声系]
〔説文〕に牽・眩・など六字を収める。牽は牛鼻に縄を通して牽く形で、会意の字。玄声に従う字ではない。

[語系]
玄・眩・)・恂hyuenは同声。耀(げんよう)の意で通ずる。牽khienは玄と同声ではない。

[熟語]
玄衣・玄玄乙・玄陰・玄・玄運・玄雲・玄英玄鉞・玄淵・玄・玄猿・玄遠・玄化玄華・玄鶴・玄学・玄鑑・玄間・玄感・玄関・玄気・玄暉・玄・玄機玄穹・玄虚・玄駒・玄・玄訓・玄圭玄珪玄闕・玄月・玄玄・玄元・玄幻・玄言・玄・玄・玄古・玄悟・玄語・玄功・玄香・玄綱・玄黄玄笏・玄根・玄混玄袞・玄妻・玄朔・玄・玄旨・玄芝・玄滋玄識・玄室・玄寂・玄酒・玄勝玄霄・玄・玄象玄壌・玄色・玄真・玄針・玄人・玄聖・玄静・玄靖・玄精・玄素・玄孫・玄尊・玄宅・玄沢・玄達・玄端玄澹・玄談・玄壇・玄致玄酎・玄鳥・玄通・玄的・玄・玄度・玄冬・玄同・玄道・玄徳・玄・玄漠・玄髪・玄微・玄牝・玄武・玄風玄圃・玄・玄謀・玄妙・玄冥・玄黙・玄・玄門・玄夜・玄・玄耀・玄覧・玄理・玄慮・玄林・玄霊・玄・玄廬・玄論
[下接語]
淵玄・九玄・鉤玄・深玄・清玄・太玄・談玄・妙玄・幽玄

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改訂新版 世界大百科事典 「玄」の意味・わかりやすい解説

玄 (げん)
xuán

《老子》第1章に〈玄のまた玄,衆妙の門〉とあるように,存在の根源にある幽遠にして神秘的なものをあらわす。色としては黒。それは〈天地玄黄〉といわれるように本来天の色である。また〈玄酒〉といえば祭礼のさいに酒の代用とされる水を意味する。哲学として〈玄〉をとくに強調したのは前漢末の揚雄が《易経》になぞらえてつくった《太玄経》であり,また《老子》の〈無〉に基礎をおく魏・晋の哲学は〈玄学〉と呼ばれた。
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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【黒】より

…無彩色だから明度(色の3属性の一つで,色の明るさを表す)によって規定され,黒は明度0である。
[象徴としての黒]
 くろい意を表す漢字は黒のほかに玄があり,古くはむしろこちらのほうが多く使われた。玄の字は黒い糸を束ねた形で,かすかで見にくいところから天の色とされ,また北方の色とされた。…

【黒】より

…無彩色だから明度(色の3属性の一つで,色の明るさを表す)によって規定され,黒は明度0である。
[象徴としての黒]
 くろい意を表す漢字は黒のほかに玄があり,古くはむしろこちらのほうが多く使われた。玄の字は黒い糸を束ねた形で,かすかで見にくいところから天の色とされ,また北方の色とされた。…

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