デジタル大辞泉
「量」の意味・読み・例文・類語
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りょうリャウ 【量】
〘 名詞 〙 ① かさを量るはかり。量器。ます。[初出の実例]「凡用二 度量権一 官司。皆給レ 様」(出典:令義解(718)雑) [その他の文献]〔書経‐舜典〕 ② 大小の比較の可能なものや測定の対象となるものについて、その長さ・重さ・時間・個数などをいう。また、測定して得られた数値や限度となる分量。[初出の実例]「空気は、其量甚だ軽くして、凡水の八百分の一なり」(出典:小学読本(1873)〈田中義廉〉四) [その他の文献]〔論語‐郷党〕 ③ =ようりょう(容量) 〔工学字彙(1886)〕④ 人間としての器量の大きさ。心の大きさ。度量。[初出の実例]「此間御進退敢非二 幼稚之儀一 、兼有二 成人之量一 、可レ 貴」(出典:玉葉和歌集‐治承四年(1180)正月二〇日) [その他の文献]〔程子遺書〕 ⑤ ( [梵語] pramāṇa の訳 ) 仏語。対象を、正しく、認識、論証する手段・根拠をいう。直接知覚による認識を現量、それを超える対象の論証を比量という。広義には認識の作用・過程および結果としての知識をも含める。[初出の実例]「修行力たちまちに現成す。この現成は、尽地・尽界・尽時・尽法を量として現成するなり。その量は莫作を量とせり」(出典:正法眼蔵(1231‐53)諸悪莫作)
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普及版 字通
「量」の読み・字形・画数・意味
量 常用漢字 12画
[字音] リョウ(リャウ)[字訓] はかる・おしはかる・ますめ[説文解字] [甲骨文] [金文] [字形] 象形 流し口のある大きな (ふくろ)の形。下部に土の形の錘(おもり)をそえている。〔説文〕八上 に「輕重を (はか)るなり。重の省に從ひ、 (きやう)の省聲」とするが、形も異なり、声も合わない。東は の初形のその象形。その上に流し口の形の曰を加え、下に錘(おもり)の土を加えた形で全体象形の字。これによって穀量をはかる。ゆえに量計・量知の意となる。一定量を糧という。[訓義] 1. はかる、ふくろではかる、分量をはかる、重さをはかる、長さをはかる。 2. おしはかる、かんがえる、おもう。 3. ますめ、はかり、かず、ほど、かぎり。 4. 字はまた良に作る。[古辞書の訓] 〔名義抄 〕量 ハルカ(カル)・ソナフ・カズ・カゾフ・タケシ ・ハカラフ・タカシ・サダム[声系] 〔説文〕に量声として糧を収める。量( )中のものを糧という。字は俗に粮に作る。[語系] 量・糧(粮)liangは同声。 tiangは声義近く、〔爾雅、釈言〕に「 (ちやう)は糧なり」とみえる。[熟語] 量移▶ ・量加▶ ・量概▶ ・量己▶ ・量揆▶ ・量器▶ ・量議▶ ・量給▶ ・量計▶ ・量刑▶ ・量決▶ ・量検▶ ・量鼓▶ ・量功▶ ・量校▶ ・量衡▶ ・量才▶ ・量鑿▶ ・量窄▶ ・量試▶ ・量識▶ ・量日▶ ・量実▶ ・量数▶ ・量浅▶ ・量忖▶ ・量度▶ ・量地▶ ・量知▶ ・量中▶ ・量定▶ ・量能▶ ・量罰▶ ・量分▶ ・量幣▶ ・量力▶ [下接語] 嘉量・雅量・概量・気量・軌量・器量・技量・吉量・狭量・局量・斤量・計量・軽量・権量・弘量・洪量・較量・差量・才量・裁量・思量・揣量・識量・質量・酌量・酒量・少量・称量・商量・丈量・斟量・推量・数量・声量・折量・浅量・測量・大量・知量・適量・斗量・度量・等量・徳量・比量・ 量・評量・分量・満量・無量・容量・力量・料量
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量 (りょう) quantity
目次 インド哲学における量 ある性質を有する任意の二つの物を,その性質によって順序づけることができるとき,その性質を〈量〉という。そして,そうでない性質は〈質quality〉といわれる。重さ,長さ,温度,硬さ,などは量であり,色,血液型などは質である。例えば重さの場合,任意の二つの物を重さによって,“より重い”という関係で順序づけることができる。したがって重さは量である。これに対し色の場合は,任意の二つの物を色によって,“より……”という関係で順序づけることはできない。したがって色は質である。もっとも色といっても,具体的な一つの色,例えば赤をとり,任意の二つの赤い物を“より赤い”という関係で順序づけることは可能である。しかしこの場合,その順序づけは赤という色の〈赤さ〉によって行われているのである。したがって,色は質であっても,その内の一つである赤の赤さは量である。これに対し,重さは量であっても,その内の一つである例えば10gは,質である。なぜなら10gの任意の二つの物について,“より……”という関係で順序づけることはできないから。したがって,重さは量であっても,その内の一つである特定の重さは質なのである。
ある性質が量であるならば,その性質を有する任意の二つの物は,その性質によって順序づけられうる。したがってその性質を有する物はすべて,その性質を有さない物を一端において,一直線 上に位置づけることができる。それゆえわれわれは,その直線上に数をふり当てることにより,その性質を数量化できるわけである。ここにおいて,数をふり当てられた直線が〈尺度〉である。この数のふり当ては,原理的には任意であるが,実際上は現実の目的に便利であるようになされる。例えば,理論的見地からすれば,当の性質を有していない物の所には0をふり当てるのが便利である。そして,ある一定の操作を規準にして,その性質を有する他の物の所に一定の正の数を順次 ふり当ててゆく。このようにして得られた尺度を〈絶対尺度〉という。そして,当の性質を有していない物の所に0をふり当てない尺度は〈相対尺度〉といわれる。摂氏の温度目盛 は相対尺度であるが,絶対温度の温度目盛は絶対尺度である。科学における尺度はほとんど絶対尺度である。
量には〈内包量 〉と〈外延量〉がある。内包量とは,物がその大きさに無関係に有している量であり,温度,密度,比熱など,多くのものが内包量である。これに対し外延量とは,物がその大きさに関係して有している量であり,体積,質量,熱量などがそれである。例えば2l の水を二分して1l ずつにすれば,それぞれの温度,密度,比熱などはもとのままであるが,それぞれの体積,質量,熱量などは,もとのものの半分になる。したがって外延量は物を1/2,1/4,1/8,……と順次分割してゆくに従い,その量も1/2,1/4,1/8,……と順次減少していくのであり,それゆえ,無限に小さい物の外延量は無限に小さいことになる。したがって外延量には,必然的に絶対尺度が用いられることになる。外延量のもう一つの特性は〈加法性〉である。例えば二つの物体a とb があり,a の質量をm (a ),b の質量をm (b )とすれば,a とb をいっしょにして改めて一つの物体と考えたときのその物体をa ◦b ,それの質量をm (a ◦b )とするとき,m (a ◦b )はm (a )とm (b )の和に等しい。すなわち,m (a ◦b )=m (a )+m (b )という式が成り立つ。このようなとき,質量には加法性がある,といわれる。ある量に加法性があるということは,その量を表す数値の間で加法が意味をもつ,ということである。このことは内包量においては成り立たない。2g+3g=5gということは意味をもつが,2℃+3℃=5℃ということは意味をもたない。2℃の水と3℃の水を合わせても5℃にはならないからである。もっとも2℃+3℃=5℃を,2℃の水を加熱して3℃だけ温度を上昇させれば5℃になる,という意味に理解することは可能である。しかしこの場合は,2℃は物の温度であり,3℃は加熱による温度の上昇であって,その場合の加法は,加法性がいっている加法ではない。 執筆者:黒崎 宏
インド哲学における量 インドのバイシェーシカ学派 の説によれば,量は実体に内属する性質であり,微小性,大性,短性,長性の4種に大別される。とくに問題になるのは前2者であり,これらはさらに,常住の(永遠に消滅しない)微小性,無常の微小性,常住の大性,無常の大性とに分けられる。常住の微小性とは,常住の実体である地水火風の原子と思考器官(意)に内属するもので,円性(極小無部分性)といわれる。無常の微小性とは,原子が二つ結合した二原子体に内属するものである。無常の大性とは,二原子体が三つ結合した三原子体以上の大きさの実体に内属するものである。常住の大性とは,常住かつ遍在 の実体である虚空,時間,方角(空間),アートマン(自我)に内属するものであり,極大性といわれる。以上がものの大小についての絶対的な分類であり,日常〈……よりも小さい〉〈……よりも大きい〉とわれわれがいっているのは,ことばの第二義的,慣用的な用法に基づくものである,という。
また〈量〉は,正しい知識の獲得手段,源泉 を表すサンスクリット の〈プラマーナpramāṇa〉の漢訳語でもある。いかなる量を認めるかについては,学派によって違いがある。唯物論者 (順世派 )は現量(直接知,つまり感覚器官が直接に対象と接触することから生ずる知の源泉)のみを認める。初期のバイシェーシカ学派は,これに比量(推理)を加えて2種とする。サーンキヤ学派 と仏教徒 は,さらに聖教量 (聖典などのことば)を加えて3種とする。ニヤーヤ学派 は,さらに譬喩量(類比)を加えて4種とする。ミーマーンサー学派 (クマーリラ派)は,さらに義準量(背理法 ないし消去法 を根幹 とする論理的要請 )と無(無の知識の源泉としての不知 )を加えて6種とする。 執筆者:宮元 啓一
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量 りょう
質と対立して用いられる概念。物質がもつ性質は一般には「質」であるが、そのなかで比較によって順序づけができる形に表されるものを量という。色は通常は質であるが、それを波長の幅で表せば、比較による順序づけが可能になるがゆえに量である。一定の単位に従って表され、単位による量の表現の規定を計量metricとよぶことがある。
量は、計算によって客観的に比較できるために、質による表現よりも自然科学の方法のなかに取り込まれやすい。量に訴えて事物を表現する方法を定量的とよんで、定性的と区別する。自然科学では定量的方法が好まれるが、それは、演繹(えんえき)体系としての数学の確実性を利用するのに、定量的方法が便利だからである。しかし量的に表現されたものが、無条件で数学的な表現に載るとは限らない。20℃の水と40℃の湯を足しても60℃にはならないのであるから、簡単な四則演算 でさえ、量の解釈と定式化にはさまざまな制限があることは留意しておいてよい。
インド哲学および仏教でいう量は、認識、その手段と根拠をさす。広い意味の論理とそれに基づく知識と考えてよい。
弁証法的唯物論 には、量から質への転換という基本法則 がある。比較可能な量の差が一定の限界を超えると、比較の不可能な質の差に変化することをいう。
形式論理 でいう量とは、命題の性質であって、全称、単称の別をいう。記号論理でも、述語論理 における「量化記号」quantifierという概念にそれが残っている。
[村上陽一郎 ]
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量 りょう quantity
物理学 ,化学で用いられる量の大きさを表わすには,2つの因子が必要である。すなわち,問題とする量と同じ種類の標準量つまり単位,および単位との大きさの比を表わす数値である。この数値は,単位の選び方によって異なる。1つの物理量 は他の相異なる2種以上の物理量との関係式によって定義されるから,適当な基本量をいくつか選ぶと,他の物理量 (誘導量 ) はその組合せで定まる。基本量としては,普通は長さと質量と時間を取り,熱の問題を扱うときには,これに温度を加える。物理量は1つの数値で表わされる場合だけでなく,数値の組によって表わされることもある。前者がスカラー ,後者がベクトル であるが,一般に,座標変換に対する関係によって各階のテンソル に分類される。物理量のなかには,量の差だけが意味をもち,したがって量そのものは任意定数を含むものとして定義される場合も少くない。古典物理学 では,測定可能な物理量は,理想的な実験を行えば任意の精度で決定され,その結果は一般に数値または数値の組で表現されると考える。しかし,量子力学 では不確定性原理 のために,ある物理量とそれに共役な物理量とは,同時に正確に測定することはできず,物理量は状態ベクトル に作用する演算子 (行列) で表現される。
量 りょう quantity
基体や質と並んで範疇の1つであり,それは数,大きさ,広がり,塊,運動など数的に規定される一切のものをさす。存在のすべての位相が量化されるという定量的認識に対し,量的限定をこえる質の優位性を認める立場が形而上学においては正統的であるから,量は一般に劣位の範疇である。
量 りょう quantity
論理学では判断の量をさし,単称,特称,全称の区別をなす。これはある命題の主語の外延 に属する成員の範囲を限定したものである。
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知恵蔵
「量」の解説
量
現象、物体、物質の性質で、数値と計量参照(reference)によって表現される。量の一般的概念はいくつかの水準に分けられ、量としての「長さ」のような特定の量の概念と「棒の長さ」のような個別の量の概念が存在する。 ものや事象を定量的に表現するためには、量そのものの定義が必要である。メートル条約のもとで1960年に決定された国際単位系(SI)では7つの基本量とその単位(基本単位)を定義しており、基本量の乗除によって構成される多くの組立量が誘導されてそれぞれに組立単位が定義されている。7つのSI基本単位に基づく量の体系が国際量体系(ISQ:International System of Quantity)として定義されている。量としては、比例的に変化し加減が可能な量と、その性質を比べるだけで加減が意味をもたない、色などの名義量(nominal quantity)も含まれる。
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」 知恵蔵について 情報
量
高塚謙太郎(高は正しくは“はしごだか”)による詩集。2019年刊行(七月堂)。2020年、第70回H氏賞を受賞。
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世界大百科事典(旧版)内の 量の言及
【度量衡】より
…[語義と出典] 度,量,衡の3文字は順に,長さ,体積,質量を意味し,同時にそれぞれをはかるための道具(ものさし,枡,はかり)や基準を意味する。なお衡と類縁の文字で権(けん)というのもあるが,これは,はかりそのものではなく,分銅のほうを指す。…
【仏教】より
…これに対し,分裂以前を[初期仏教]あるいは原始仏教と呼んでいる。おもな部派としては,上座部の系統で北インドに勢力のあった説一切有部(略称有部),化地部(けじぶ),法蔵部など,西インドに勢力をもった犢子部(とくしぶ)などがあり,有部からさらに[経量部](きようりようぶ)が分出した。犢子部からも正量部(しようりようぶ)その他が分出したが,正量部は後世(玄奘(げんじよう)の滞在した7世紀ころ)中インドに進出して大きな勢力をもっていた。…
※「量」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」