デジタル大辞泉 「モンスーン」の意味・読み・例文・類語
モンスーン(monsoon)
2 インドや東南アジアで、夏の季節風による雨季、または、雨季に降る雨。
[類語]風・春一番・
翻訳|monsoon
インド洋および南アジア,東南アジアにおいて,夏季は南西から,冬季は北東から吹く季節風のこと。アラビア語で〈季節〉を意味するマウシムmawsim(mausim)に由来する。
モンスーンは,夏と冬に定期的にしかも逆方向に吹くことから,インド洋では,モンスーンを利用した航海,貿易が古くから行われた。それは前2000年にさかのぼるともいわれるが,1世紀中ごろの《エリュトラ海案内記》では,モンスーンを利用した航海法を始めたのはギリシア人ヒッパロス(ヒッパロスの風)であるとしている。中世には,ペルシア人,アラブ,中国人がインド洋に進出し,東南アジア産の香料,香辛料,中国産の陶磁,中東産のガラス,織物,金属工芸品などを中心とする東西貿易のネットワークがつくられた。インド洋の航海は,冬季に北東モンスーン風を利用して東南アジア,インドからペルシア湾,アラビア半島への横断が行われ,その反対方向の航海は,夏季の,しかも嵐や強風で海が荒れる真夏を避けた4~5月や8月末~9月にかけて行われた。この冬と夏の航海期に合わせ,ペルシア湾やアラビア半島の諸港には,エジプトやシリアなどからキャラバン隊が結集し,インド洋貿易はキャラバンを通じて密接に地中海世界と結ばれていた。こうしたインド洋貿易に長く用いられてきたのがダウdhowと呼ばれる三角帆の縫合船であった。これは,インド洋西海岸やモルジブ産のチーク材,ココヤシ材を使ってつくられ,舷板の接合に釘を用いずヤシの繊維からつくったひもによって縫い合わせた独特の構造をもった船で,中世の史料では最大のもので艇身約35m,乗客約200人,約3tの積荷を積載した(家島彦一の研究による)。
12世紀以降,鉄釘を用い羅針盤を備えた中国のジャンク船がインド洋に進出するが,ダウはこれらの造船技術も取り入れ,より安定した機能をもつようになった。バスコ・ダ・ガマのポルトガル艦隊を東アフリカからインド洋西海岸のカリカットまで案内したとされるイブン・マージドのような航海術にたけた水先案内人の例は,インド洋世界に長い間に蓄積された航海の知識の高さを示している。またダウが現在もなおエンジンの助けを借りながらも広くインド洋航海に用いられていることは,モンスーンがインド洋世界において今も変わらずに果たしている役割の大きさを示しているといえよう。
→インド洋
執筆者:船田 正明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
語源はアラビア語で「季節」および季節的な諸行事をさすが,一般的には夏季と冬季で風向が逆転する季節風をいう。世界各地でみられる気象現象であるが,歴史的に重要なのは,これが海上輸送に盛んに利用された東南アジアからインド洋北部域のそれである。インド洋のそれは,これの利用法を発見したとされる航海者にちなんだ「ヒッパロスの風」という名で,1世紀の文献に現れる。一方,東シナ海のモンスーンの利用は,文献上は法顕(ほっけん)の記録が最初である。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』ダイビング用語集について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…しかし高さが数km以下であるため,対流圏の中層以高で現れることはまれである。
[中規模な風系]
(1)季節風 モンスーンとも呼ばれる。季節風は,海陸の分布により,夏には大陸内では海洋に比較して高温低圧になり,冬には反対に低温高圧になるために,1年周期で変わる風系である。…
…季節を吹き分ける風系を指し,英語ではモンスーンというが,これはアラビア語で季節を意味するmausimに由来する。モンスーンの定義は数多くあるが次の三つにおおむね分けられる。…
…インド洋と地中海とではそれぞれ造船技術,航海法において著しい違いがある。インド洋では,6ヵ月交代で一定方向に吹くモンスーン(季節風。アラビア語で〈季節〉を意味するマウシムが語源)を利用して冬に北東から南西に向けて航海し,夏は逆に南西から北東に向かって航海を行った。…
※「モンスーン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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