(読み)キョウ

デジタル大辞泉 「狂」の意味・読み・例文・類語

きょう〔キヤウ〕【狂】

くるうこと。気がちがうこと。
「―と呼び、痴とぶ。敢て管せず」〈逍遥当世書生気質
名詞の下に付いて、その事に熱中する人の意を表す。マニア。「競馬
[類語]物好き酔狂好事家こうずかおたく狂い気違いディレッタントマニアマニアック病的クレージーいかれる神経質凝り性モノマニアモノマニアック偏執狂執念深いアブノーマル異常異様狂的つうこだわりこだわる道楽れ者凝り屋執拗しつようしつこいサブカルチャー

きょう【狂】[漢字項目]

常用漢字] [音]キョウ(キャウ)(漢) [訓]くるう くるおしい
気がくるう。「狂気狂人狂乱発狂
行為などが正常の域を外れる。正気とは思えないさまである。「狂喜狂信狂騒狂態狂奔酔狂熱狂
こっけいな。「狂歌狂句狂言狂詩
激しくひどい。荒れくるう。「狂風狂瀾きょうらん

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精選版 日本国語大辞典 「狂」の意味・読み・例文・類語

くるいくるひ【狂】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「くるう(狂)」の連用形の名詞化 )
    1. 精神、考え、動作などが正常でなくなること。また、正常とは思えない考えや動作をすること。
      1. [初出の実例]「有間皇子、性(ひととなり)(さとり)て、陽(うほい)(クルヒ)すと」(出典:日本書紀(720)斉明三年九月(北野本訓))
    2. ( 狂ったように動く意から ) たわむれること。たわむれ。遊び。
      1. [初出の実例]「四月八日、御鷹野へ御出(おんいで)、古池田東の野にて御狂(クルイ)これあり」(出典:信長公記(1598)一二)
    3. 物事が正常、通常の状態や予定、見込みなどと違うようになること。
      1. (イ) 状態、調子などが正常でなくなること。正確でなくなること。
        1. [初出の実例]「コノ ハシラ ハ kurui(クルイ)ガ デタ」(出典:和英語林集成(初版)(1867))
      2. (ロ) 予定、見込み、あてなどがはずれること。
        1. [初出の実例]「以上如此雖相定、欲まきれ又種々可之。子息達大勢在之。何も詮に不之、くるい可出来歟」(出典:多聞院日記‐天正一〇年(1582)七月七日)
    4. 能で、ものに憑かれたように激しく舞い、苦しみや悲しみを表現すること。また、その舞。
      1. [初出の実例]「これ体なる修羅のくるひ、ややもすれば、鬼の振舞になる也」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)二)
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 ( 多く「ぐるい」の形で ) 名詞について、そのことに夢中になり、狂ったような状態になるさまを表わす。
    1. [初出の実例]「幽王褒姒と云美人ぐるいに政をたやいてせられぬ天がにくんで日月の吉凶もみだれたぞ」(出典:玉塵抄(1563)一二)

きょうキャウ【狂】

  1. 〘 名詞 〙
  2. くるうこと。気がちがうこと。常軌を逸すること。また、その人。
    1. [初出の実例]「これも狂もよく念へば聖といへり」(出典:大観本謡曲・賀茂物狂(室町末))
    2. 「我輩夙にここに見あり、狂(キャウ)と呼び痴と喚ぶ。敢て管せず」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉六)
    3. [その他の文献]〔書経‐多方〕
  3. 志が大きくて、細事をかえりみないこと。〔論語‐子路〕
  4. きょうげん(狂言)」の略。
    1. [初出の実例]「初日。〈四日〉相生〈狂。三の丸長者〉八嶋〈さるひき〉」(出典:糺河原勧進猿楽日記(1464))
  5. ( 名詞のあとに付けて ) 一事にひどく熱中すること。また、その人。マニア。「野球狂」「映画狂」など。
    1. [初出の実例]「サイン狂の一生徒が間崎にみせた署名帳には」(出典:若い人(1933‐37)〈石坂洋次郎〉上)

くるおくるほし【狂】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙くるおしい(狂)

くるわくるはし【狂】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙くるわしい(狂)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「狂」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 7画

[字音] キョウ(キャウ)
[字訓] くるう

[説文解字]
[甲骨文]
[その他]

[字形] 形声
正字はに従い、(こう)声。は〔説文〕六下に「艸木生するなり」とするが、卜文・金文の字形は、鉞頭の形である王の上に、(止(あし))を加えた形。おそらく出行にあたって行われる呪儀で、魂振りの意があり、神の力が与えられるのであろう。秘匿のところでその礼を行うことを匡といい、神意を以て邪悪を匡(ただ)すことを匡正という。その霊力が獣性のもので、誤って作用し、制御しがたいものとなることを狂という。〔説文〕十上に「犬(せきけん)なり」と(か)み癖のある犬の名とするが、発狂・狂痴の状態をいう語である。〔書、微子〕「我は其れ狂を發出せん」、〔論語、公冶長〕「吾が黨の小子狂然(ひぜん)としてす」、〔論語、子路〕「子曰く、中行を得て之れと與(とも)にせざるときは、必ずや狂狷(きやうけん)か」のように、古くから理性と対立する逸脱の精神として理解された。清狂・風狂なども、日常性の否定に連なる一種の詩的狂気を示す語であった。

[訓義]
1. くるう、制御しがたいある力に動かされる状態をいう。とりとめもなくうごく。
2. 狂気、気がふれる、くるった人。
3. おろか、まどう。
4. あわただしい、おごりたかぶる。

[古辞書の訓]
名義抄〕狂 クルフ・クマル・イツハル・ヨギル 〔字鏡集〕狂 ヨギル・マドフ・クルフ・タハブル・タフル・モノグルヒ・イツハル

[声系]
〔説文〕に狂声として誑・の三字を収める。誑三上は「欺くなり」、八上は「行するなり」、十下は「るなり」とする。みな狂の声義を承ける。声と同系の語である。

[語系]
狂・giuang、誑kiuang、kuangは声義近く、惶・遑huangは同系の語。は犬などが狂い廻ることをいう。国語の「くるう」は、くるくると回転する意である。

[熟語]
狂逸・狂飲・狂易・狂艶・狂花・狂歌・狂華・狂会・狂怪・狂懐・狂客・狂悍・狂簡・狂喜・狂気・狂・狂挙・狂狂・狂愚・狂・狂撃・狂蹶・狂譎・狂・狂狷・狂言・狂瞽・狂顧・狂哭・狂子・狂死・狂恣・狂士・狂疾・狂者・狂・狂縦・狂攘・狂刃・狂生・狂噬・狂説・狂走・狂譟・狂躁・狂草・狂賊・狂態・狂痴・狂蝶・狂直・狂騁・狂・狂・狂徒・狂怒・狂奴・狂鬧・狂濤・狂・狂童・狂波・狂悖・狂吠・狂筆・狂・狂夫・狂風・狂僻・狂・狂暴・狂妄・狂勃・狂奔・狂名・狂薬・狂乱・狂瀾・狂・狂惑
[下接語]
狂・吟狂・愚狂・古狂・荒狂・詐狂・詩狂・酒狂・唱狂・酔狂・清狂・疎狂・楚狂・狂・譟狂・躁狂・痴狂・穉狂・狂・狂・頓狂・熱狂・悖狂・発狂・風狂・放狂・妖狂・佯狂・陽狂

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【精神病】より

…精神の異常ないし病的状態は人類の歴史とともに古い。古代ギリシア・ローマの時代にはすでに,〈神聖病〉と呼ばれた癲癇(てんかん),黒胆汁の過剰によると説明されたメランコリア,狂乱状態を示すマニア,子宮(ヒュステラ)が体内で動き回る婦人病としてのヒステリーなどが知られていた。これらが〈精神病〉という総称のもとに体系化されるのは,精神医学がやっと自立の活動をみせる19世紀になってからで,〈精神病Psychose〉の語も1845年にウィーン大学のフォイヒタースレーベンE.von Feuchterslebenがその著《心の医学の教科書》で初めて使ったとされる。…

※「狂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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