デジタル大辞泉
「祝」の意味・読み・例文・類語
はふり【▽祝】
《罪やけがれを放り清める意》神社に属して神に仕える職の一。ふつう神主・禰宜より下級の神職をいう。
しゅく【祝】
祝うこと。多く、名詞に冠して、その事柄を祝う意を表す。「祝開店」「祝御入学」
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はふり【祝】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「はふる(放)」の連用形の名詞化したもの。後世「はうり」「ほうり」とも ) 神社に属して神に仕える職。また、その人。しばしば神主(かんぬし)・禰宜(ねぎ)と混同され、三者の総称としても用いられるが、区別する場合は、神主の指揮を受け、禰宜よりもより直接に神事の執行に当たる職をさすことが多い。その場合、神主よりは下位であるが、禰宜との上下関係は一定しない。はふりこ。はふりし。はふりと。はふりべ。ははり。
- [初出の実例]「祝三人、起二正月一日一尽二七月卅日一」(出典:正倉院文書‐天平二年(730)大倭国正税帳)
- 「春日のねぎ・はうり、かうぶり給はりてくらゐまさせ給ふ」(出典:栄花物語(1028‐92頃)もとのしづく)
しゅく【祝】
- 〘 名詞 〙
- ① 神をまつって願いごとをすること。また、神をまつることをつかさどる人。かんぬし。はふり。
- ② めでたいよろこび事を祝うこと。多く名詞の上に付けて、その名詞の示す事柄を祝う意に用いる。
- [初出の実例]「日章旗を交叉した間に勘亭流で『祝開店、佐渡屋さん』と書いたびらを」(出典:星座(1922)〈有島武郎〉)
ゆわいゆはひ【祝】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「ゆわう(祝)」の連用形の名詞化 ) 祝うこと。祝賀。いわい。
- [初出の実例]「くはひにんの時おびめされ候事〈略〉御ゆわゐの御酒、三献参候」(出典:娵入記(1443‐73頃))
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普及版 字通
「祝」の読み・字形・画数・意味
祝
常用漢字 9画
(旧字)
人名用漢字 10画
[字音] シュク・シュウ(シウ)
[字訓] いのる・はふり・いわう
[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[字形] 会意
示+兄。示は祭卓。兄は祝の器である(さい)を戴く人の形で、巫祝。〔説文〕一上に「祭に贊詞を(つかさど)るなり」とあり、〔詩、小雅、楚茨〕に「工、致す」とみえるものである。女巫を巫、男巫を祝といい、また覡(げき)という。〔段注〕に「人の、口を以てにはるなり」とするが、祝の奉ずるものは、祝詞を収めた器である。祝の長官は大祝。祭政的な政治が行われた古代には、大祝が聖職者として最高の地位にあり、周公の子伯禽の作器に〔大祝禽鼎〕がある。また〔禽(きんき)〕に「某(はか)(謀)り、禽(いの)る」とあって、周公父子が神事に当たる聖職者であった。王朝滅亡の後には、その祝は賤官とされ、〔儀礼〕には夏祝・商祝は喪祭の末事に従うものとされた。
[訓義]
1. いのる、ねがう、のろう、のりと。
2. はふり、神官、神主。
3. いわう、いわい。
4. 注と通じ、そそぐ、つける。
5. (しよく)と通じ、断つ。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕 イハフ・ハフリ・シク・マサル・ネグ・イノル・マツル・シルシ・イタル・オクル。今呪に作る
[語系]
・呪tjiukは同声。tjiu、tiu、diuも声義近く、みな呪詛・祝に関する字である。は呪祝のときには(しゆう)の音でよむ。tiokと通じ、切る意に用いることがある。
[熟語]
祝詛▶・祝噎▶・祝饐▶・祝延▶・祝宴▶・祝▶・祝▶・祝賀▶・祝官▶・祝祈▶・祝規▶・祝敬▶・祝慶▶・祝▶・祝号▶・祝宰▶・祝冊▶・祝史▶・祝師▶・祝祠▶・祝辞▶・祝寿▶・祝祝▶・祝捷▶・祝誓▶・祝宗▶・祝▶・祝白▶・祝髪▶・祝板▶・祝付▶・祝祓▶・祝文▶・祝幣▶・祝薬▶・祝融▶・祝釐▶・祝郎▶
[下接語]
祈祝・慶祝・工祝・宰祝・尸祝・史祝・寿祝・瑞祝・宗祝・喪祝・大祝・致祝・祝・祝・巫祝・奉祝・卜祝
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祝 (はふり)
古代以来の神職の名称の一つ。〈ほうり〉ともいい,祝部(はふりべ)とも称した。一般には禰宜(ねぎ)の下位に属した。その語義については,〈はらう〉の義,〈放り,葬り,屠り〉に通じる語,あるいは〈羽振〉であるとして,神前に衣の袖を振り,舞を奏したことから起こる語ともいうが未詳。初見は《日本書紀》仲哀天皇8年正月条で,海路安全を祈るため〈倭国の菟田(うだ)の人伊賀彦を以て祝として祭らしむ〉とある。令制下において,諸社の祝は国司が神戸から簡定することになっており,もし神戸に人がいない場合は庶人を採ることになっていた。諏訪大社には大祝,権祝,擬祝,副祝などの職名があり,また阿蘇神社には一祝から十祝に及ぶ職階と国造祝,金凝祝があった。
執筆者:茂木 貞純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
祝
はふり
「はぶり・ほうり」とも。神職一般をいうが,神主・禰宜(ねぎ)につぐ神事奉仕者を表すことが多い。罪や汚れを放る人の義の「はぶり」,斎(いわ)い祭る義の「いはふり」,葬祭・埋葬の「はふる」などを語源とするともいう。古代においては,神憑(かみよ)りして託宣を告げる者や,祭主ではないが仲介的に神へ奉仕する者を意味する一方で,神職を示す場合もある。中世には男性を祝・祝人(はふりと),女性を祝女(はふりめ)・祝子(はふりこ)と称し,とくに女性は巫女(みこ)としての機能をもった。信濃の諏訪大社や伊予の大山祇(おおやまづみ)神社には,大祝(おおはふり)・小祝・権祝(ごんのはふり)・擬祝(ぎはふり)などの別称があり,肥後の阿蘇神社では一祝(いちのはふり)から十祝まである。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
祝
はふり
古く神社に奉仕した神職の一つ。「ホウリ」ともいい、祝部とも記した。仲哀(ちゅうあい)天皇紀8年正月条には、伊賀彦(いがひこ)を祝として神を祭らしめたとある。古くは宮司(ぐうじ)、禰宜(ねぎ)、祝など、神職の職名は神社によって異なり、祝も一部の神社に置かれた。諏訪(すわ)大社には、鎌倉時代初期に、大祝(おおほうり)、権祝(ごんのほうり)、擬(こりの)祝、副(そえの)祝などの職名がみえ、このうち大祝だけは生き神のように扱われた。大祝は大山祇(おおやまづみ)神社にもいた。阿蘇(あそ)神社、鹿島(かしま)神宮ほかに祝がいた。
[沼部春友]
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祝
はふり
古代における神職の一つ。ほうりともいい,祝人とも書き神社に奉仕する者をいう。大祝,権祝,擬祝,副祝,一祝,二祝,三祝,四祝などの序列があった。神主,禰宜などと連称されるが,神主,禰宜との職掌的,階層的相違は必ずしも明確ではない。
祝
しゅく
zhu
中国の打楽器。下方がやや狭くなっている木製の箱で,木の棒で底を突いて音を出す。古代の雅楽で,演奏の開始や終止の合図として用いられた。祝は雅楽と一緒に朝鮮にも伝えられ,側板も打つなどの新しい工夫が加えられている。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
祝(いわい)
酒造好適米の品種のひとつ。京都府立農事試験場で1933年に育成。在来品種である野条穂から純系分離された。長棹で収穫量に問題があったため、1974年に栽培中止となっていたが、1991年に復活した。
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世界大百科事典(旧版)内の祝の言及
【民謡】より
…(6)道歌 [馬子歌],牛方歌,木遣(きやり)歌([木遣り]),道中歌など。(7)[祝(いわい)歌] 座敷歌,嫁入歌,酒盛歌,物吉歌など。(8)祭歌 宮入歌,神迎歌,神送歌など。…
※「祝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」