(読み)アナ

デジタル大辞泉 「穴」の意味・読み・例文・類語

あな【穴/孔】

反対側まで突き抜けている空間。「針の―」
深くえぐりとられた所。くぼんだ所。「道に―があく」「耳の―」

㋐金銭の損失。欠損。「帳簿に―があく」
㋑必要な物や人が抜けて空白になった所。「人員に―があく」
㋒不完全な所。欠点。弱点。「下位打線が―だ」「彼の論理は―だらけだ」
他人が気づかない、よい場所や得になる事柄。穴場。
競馬・競輪などで、番狂わせの勝負。配当金が多い。「―をねらう」
世間の裏面。うら。
「世間の―を能く知って堺町とは気づいたり」〈根無草・三〉
[下接語]あり・息き穴・岩穴・埋め穴・鰓孔えらあな大穴落とし穴かぎ・隠れ穴・風穴・気抜き穴・切り穴きり穴・毛穴しし穴・縦穴塚穴抜け穴螺子ねじねずみのぞき穴墓穴人穴一つ穴節穴ほぞほら焼け穴雪穴横穴
[類語](1)(2穴ぼこ窪みホール落とし穴縦穴横穴抜け穴節穴気孔オゾンホール/(3)㋐損する割を食う本が切れる穴をあける割が悪い間尺に合わない食い込む足が出るロス大穴丸損マイナス損失損害実害赤字被害不利益損亡そんもう欠損実損差損出血持ち出し採算割れ

けつ【穴】[漢字項目]

[音]ケツ(漢) [訓]あな
学習漢字]6年
〈ケツ〉
あな。「穴居虎穴こけつ洞穴風穴墓穴偕老同穴かいろうどうけつ
中国医学で、人体のつぼ。「灸穴きゅうけつ経穴
〈あな〉「大穴毛穴節穴
[名のり]これ

けつ【穴/尻】

《「あな」の意から》しり。「―の青い若造」
最後。びり。「―から五番目」
鍼術しんじゅつで、人体にはりを打つべき箇所。
[類語]最後しり殿しんがりどんじり最後尾末尾

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精選版 日本国語大辞典 「穴」の意味・読み・例文・類語

あな【穴・孔】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 低くくぼんだ所。また、うつろに貫いた所。特に、鼻孔、陰門、また獣などがすむ洞穴や落とし穴、墓穴をもいう。
    1. [初出の実例]「其の矢を取りて、其の矢の穴より衝(つ)き返し下したまへば」(出典:古事記(712)上)
    2. 「我が死なむ日は穴を同くして共に可埋(うづむべ)し」(出典:今昔物語集(1120頃か)一一)
  3. 欠けたためにできた空白状態。欠陥や損失。
    1. (イ) 金銭上の損失。会計上の欠損。
      1. [初出の実例]「借金の穴へ娘をうめるなり」(出典:雑俳・柳多留‐二四(1791))
    2. (ロ) あるはずの物や人間が欠けたために生じた空白状態。
      1. [初出の実例]「彌五郎出ざれば、穴をふさがんと」(出典:滑稽本・八笑人(1820‐49)四)
  4. 不完全な点。欠点。欠陥。過失。あら。
    1. [初出の実例]「人の仕落したる事をから名に穴と唱ふ」(出典:談義本・教訓不弁舌(1754)序)
    2. 「主人の論理には大なる穴がある」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉八)
  5. 人の性癖、また、世間の裏面や内情などを広くさす江戸後期の流行語
    1. [初出の実例]「女郎衆の穴(アナ)見附て悪くいふが」(出典:洒落本・風俗七遊談(1756)二)
  6. 人に知られていない所や物事。
    1. (イ) 人の知らない重要な点。急所要点。こつ。
      1. [初出の実例]「惚れささうと思へば、女の好(すき)へ持って行くが色事の穴(アナ)」(出典:浄瑠璃蝶花形名歌島台(1793)三)
    2. (ロ) 隠れ家。隠れている秘密の場所。特に情人のところ。
      1. [初出の実例]「お帰んなすったとぞんじましたら、また、ここの穴へお這入なさいましたネ」(出典:人情本・仮名文章娘節用(1831‐34)前)
    3. (ハ) 釣りや遊び場などで、人の知らない良い場所。穴場。
      1. [初出の実例]「釣のアナを確保できた」(出典:七つの街道(1957)〈井伏鱒二〉ささやま街道)
  7. 劇場用語。
    1. (イ) 芝居小屋の見物席で土間の一間(ひとま)。一枡(ひとます)
      1. [初出の実例]「客席は総べて枡形に劃れば、これを枡または穴(アナ)といふ。(多くは平土間についていへり)」(出典:東京風俗志(1899‐1902)〈平出鏗二郎〉下)
    2. (ロ) 芝居や寄席などで、大入り満員の際、ぽっかりあいた空席
      1. [初出の実例]「中古江戸三座通詞の事〈略〉穴とは(土間桟敷の明てある事)」(出典:伝奇作書(1851)後集)
    3. (ハ) 芝居で花道の切り穴をいう。すっぽん
  8. 競馬、競輪などで番狂わせの勝負。また、番狂わせで勝ちそうな馬や選手
    1. [初出の実例]「穴といふやうな馬を、つねに単式で買ひ」(出典:冬の宿(1936)〈阿部知二〉一四)

けつ【穴・尻】

  1. 〘 名詞 〙
  2. あな。ほら。〔易経‐需卦〕
  3. 鍼灸(しんきゅう)術で人体に鍼(はり)をうつ箇所をいう。経穴(けいけつ)。壺(つぼ)。要所。
    1. [初出の実例]「灸する時其穴ただしからざれば、いたづらに好肉を焼てむなしく痛をこらゆるのみ」(出典:全九集(1566頃)七)
  4. しり、うしろ、また器物などの底部をいう俗語。
    1. [初出の実例]「ゆすりもちとは、いかにも、けつをしめて、身を左右にすりまはしてさすべし」(出典:評判記・秘伝書(1655頃)あしかぶりの事)
  5. 一番最後をいう俗語。びり。びりっけつ。
  6. ( ━する ) 男色。
    1. [初出の実例]「穿寧楽盧舎那仏(ならのだいぶつの)屁眼則個(ケツしやれ)」(出典:滑稽本・風来六部集(1780)痿陰隠逸伝)
  7. 取引相場で、値幅の最低額。底値。また、勘定尻。〔取引所用語字彙(1917)〕

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普及版 字通 「穴」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 5画

(旧字)
5画

[字音] ケツ
[字訓] あな

[説文解字]

[字形] 象形
土室の入口の形。〔説文〕七下に「土室なり」とし、字を(八)(はち)声とするが、は土室の入口の象形。〔墨子、辞過〕に「古の民、未だ宮室を爲(つく)ることを知らざりし時、陵阜(りやうふ)に就きて居り、して下(ひく)きに處(を)る」とみえる。穴居土室は、黄土地帯では今も行われている住居の形式である。(内)・入も、その入口を示す象形字である。

[訓義]
1. あな、つちむろ、穴室。
2. 土中のあな、うがつ、くぼみ、ほら。

[古辞書の訓]
名義抄 アナ・カケタリ・アタ・カタマシ・チル・アナホル・ツチムロ・ウカル・カクル・ヲリ・ニク・アナニスム・ウガツ

[部首]
〔説文〕に窯・竈・(突)・・竅・(空)・窺・窘など五十字、〔玉〕に百十字を属する。土室は住居のほか、埋葬・倉庫・竈窯に用いられたので、その関係の字が多い。

[声系]
〔説文〕に声として(けつ)・(いつ)・(ゆう)など五字を収める。など声と異なるものは、おそらく会意。はまたに作る。はいたちの類。

[熟語]
穴骼・穴居・穴竅・穴掘・穴窟・穴隙・穴見・穴口・穴・穴師・穴室・穴出・穴処・穴人・穴穽・穴託・穴地・穴土・穴洞・穴道・穴鼻・穴
[下接語]
崖穴・巌穴・蟻穴・灸穴・竅穴・空穴・窟穴・経穴・虎穴・獣穴・石穴・丹穴・同穴・洞穴・風穴・墓穴

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改訂新版 世界大百科事典 「穴」の意味・わかりやすい解説

穴 (あな)

江戸中期以降の流行語。軽々には人の気づかない世相風俗のある現象や,人間の性癖・欠陥などを言う。そしてその“あな”を指摘した描写や表現を“うがち”と称して戯作(げさく)文学の重要な表現法一つに数えられる。“うがち”は今日言う風刺や教訓と似てはいるが,それは滑稽性を醸し出すための手段であり,無責任な放言に近い。したがって指摘される“あな”も,より微視的な誇張されたものである場合が多い。
うがち
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岩石学辞典 「穴」の解説

生物の働きによって作られた堆積物中の管状の構造.直線的または曲るものがあり層理にある角度をもっているが,普通は平行または直角である.一般に周囲の堆積物とは異なった粒質や色のもので埋められて保存されている[Pettijohn : 1975].砂中に蠕虫が孔をあけたり岩石中に貝類などが孔を穿った後に,この孔に砂や泥が入り込んで固まってできた棒状の物体をburrowという[渡辺編 : 1935].生痕の一種.

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「穴」の解説

1957年公開の日本映画。監督:市川崑、脚本:久里子亭、撮影:小林節雄。出演:京マチ子、船越英二、山村聡、菅原謙二、石井竜一、北林谷栄、川上康子ほか。サスペンス・コメディ。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【気】より

…そのコースを〈地脈〉という。風水説では,この地脈を〈竜〉とよび,そのなかでも生気のわだかまる所を特に〈穴〉とよび,そこに墓を営むと生気が死者の肉体を媒介にして子孫に感応し,その家は栄えるという。このように大地は,気というエネルギーに充たされた,一個の巨大な生命体と考えられていたのである。…

※「穴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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