鉄砲・鉄炮(読み)てっぽう

精選版 日本国語大辞典 「鉄砲・鉄炮」の意味・読み・例文・類語

てっ‐ぽう ‥パウ【鉄砲・鉄炮】

〘名〙
① 鉄その他の金属で作られた、火薬の力で弾丸を発射させる装置の武器。大砲小銃などの総称。〔蒙古襲来絵詞(1293頃)〕
※太平記(14C後)三九「鉄炮(テッパウ)とて鞠の勢なる鉄丸の迸る事」
② 特に小銃の称。
※石山本願寺日記‐私心記・天文二〇年(1551)一二月六日「朝、北殿にて鴈汁給候。中務銕炮にて射て進上候」
随筆・嬉遊笑覧(1830)六「紙でっほう〔来山点笠付〕手を手をにてっほうにする手本紙」
④ 据え風呂に装置して火をたく鉄や銅などで作られた筒。また、それを装置した風呂。鉄砲風呂。また、単にそのかま
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「此湯をぬるいといふ人は鉄炮(テッボウ)の方へ沈か、此格子をはづしで鑊(かま)の中へはいるが能(いい)
⑤ 狐拳(きつねけん)の手の一つ。こぶしをかためて腕を前方に突き出し、猟銃をうつまねをするもの。猟師を表わすもので、狐には勝ち、庄屋には負ける。また、単に、握りこぶし、げんこつなどの意を表わす。
※滑稽本・八笑人(1820‐49)二下「卒八眼七が鉄砲であとはのこらず名主、ヤ奇妙奇妙」
⑥ (煙を出し、しかも形が似ているところから) キセルの異称。
浄瑠璃・伊豆院宣源氏鏡(1741)四「鉄鉋で一吹と〈略〉打つ石の光りより」
※浮世草子・懐硯(1687)四「鉄砲(テツハウ)にかくる時もはや何をかくし申べし」
うそ。だぼら。鉄砲話。
※俳諧・新増犬筑波集(1643)油糟「はなし只ききて笑はぬ人もなし さてさてくさき鉄鉋(テッパウ)の音」
⑨ (当たれば死ぬというところから) 魚、「ふぐ(河豚)」の俗称。また、フグを料理したふぐなべ、ふぐちり、ふぐ汁などもいう。てつ。
※雑俳・たから船(1703)「鉄炮と名にこそ立れふぐと汁」
※洒落本・客衆肝照子(1786)地まわり「是から鉄ぽうをそそるベヱ」
※黄表紙・富士之人穴見物(1788)「伏見丁のてっぱうへ鞍替して居た」
※歌舞伎・狭間軍記鳴海録(桶狭間合戦)(1870)序幕「『並の絞りのその外に、さぞ珍らしいのがいろいろあるで』『〈略〉らせん鹿の子に養老柳、てっぽう麻の葉、きしゃご絞りになまこむきみ』」
⑭ 椅子席以前の歌舞伎劇場で、平土間(ひらどま)の中央の部分。観客席のうち、もっとも見やすく、出入りに便利である場所。
相撲で、両手をのばして、相手の胸部を強く突っ張ること。また、その突き。もろてづき。柱などを相手に、左右の手で交互に強く突いたり、左右同時に強く突いたりする、基本的な稽古もいう。
※相撲講話(1919)〈日本青年教育会〉駒ケ嶽の凋落と太刀山の独舞台「ドンと一発鉄砲(テッパウ)をくれたので、駒はたまらず土俵外に飛出して」
⑯ 競馬で、比較的長い休養期間をとった競走馬が、休養後はじめてレースに出走すること。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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