付く(読み)ツク

デジタル大辞泉 「付く」の意味・読み・例文・類語

つ・く【付く/附く/着く】

[動カ五(四)]
あるものと他のものが離れない状態になる。
㋐あるものが表面に密着する。くっつく。付着する。接着する。「ほこりが―・く」「飯粒が―・く」「こののりはよく―・く」
㋑主となるものに、さらに添え加わる。「おまけが―・く」「条件が―・く」
㋒消えないであとが残る。印される。「歯形が―・く」「傷が―・く」「しみが―・く」
㋓ある性質・能力などがそなわる。「知恵が―・く」「身に―・いたしぐさ
㋔ある物事・状態・作用などが新たに生じたり、増し加わったりする。「電話が―・く」「味が―・く」「はずみが―・く」
(着く)あるものが他のものや他の所まで達する。
㋐到着する。「手紙が昨日―・いた」「目的地に―・く」「定刻に―・く」
一部分がある所に届いて触れる。「船底海底に―・く」「枝が伸びて塀に―・く」
㋒ある場所を占める。位置する。「守備位置に―・く」「席に―・く」
あるもののそばに寄ってそい従う。
㋐一緒になって行く。あとにつづき従う。「先頭ランナーに―・く」「彼のやり方には―・いていけない」
㋑その立場に心を寄せて行動を共にする。味方になる。「有利な側に―・く」「何かというと母親に―・く」
㋒そばを離れずにいる。いつもそばにいて世話をする。「護衛が―・く」「看護師が―・く」
㋓頼りになる、または助けてくれる者が背後にいる。「スポンサーが―・く」
㋔寄り集まる。たかる。「果物に虫が―・く」
㋕あるものに沿う。
「急いでどてに―・いて左の方へ道を折れた」〈秋声・足迹〉
ある働きが活動を始める。
㋐働きが盛んになる。「食欲が―・く」「精力が―・く」
㋑(「点く」とも書く)燃えはじめる。また、あかりがともる。電気器具などが作動する。「火が―・く」「電灯が―・く」「テレビが―・いている」
㋒病気にかかる。感染する。「ばい菌が―・く」
㋓(「憑く」とも書く)乗り移る。とりつく。「ものに―・かれたような目」「きつねが―・く」
㋔五感にとらえられる。意識・知覚がはたらく。「よく気の―・く人」「目に―・く広告」「高慢さが鼻に―・く」
㋕植物が根をおろす。根づく。「挿し木が―・く」
ある定まった状態がつくられる。
㋐解決する。まとまる。落着する。「話が―・く」「勝負が―・く」
㋑ある名前や値段になる。「愛称が―・く」「高値が―・く」
㋒あることの前提・結果のもとでは、その値段になる。「一つ百円に―・く」「結局は高く―・いた」
㋓意志が固まる。「決心が―・く」
偶然などがうまく味方して、都合よく事が運ぶ。運が向く。「今日は―・いている」
ある物事に付随して、別の物事が起こる。
「風に―・きてさと匂ふがなつかしく」〈・蓬生〉
病気にかかる。感染する。
「月ごろ御やまひも―・かせ給て」〈大鏡・道隆〉
(動詞の連用形について)動作・状態の激しい意を表す。「しがみ―・く」「食い―・く」
[可能]つける
[動カ下二]つ(付)ける」の文語形
[下接句]悪銭身につかず足が地に着かない足が付く足元に火が付く油紙へ火が付いたよう板に付く生まれもつかない海の物とも山の物ともつかない襟に付く襟元に付く御釈迦おしゃか様でも気がつくまい尾鰭おひれが付く及びもつかない方が付く格好がつく気が付く金箔きんぱくが付く愚にも付かぬけちが付くけりが付く時代が付く示しがつかないしりに付く尻に火が付く土がつく手が付く手に付かないはくが付く鼻につく話がつく火が付く火の付いたよう引っ込みがつかない人垢ひとあかは身につかぬ人心地が付く人目に付く頰返ほおがえしが付かないまゆに火が付く身に付く耳に付く虫が付く目に付く目処めどが付く目鼻が付く焼け木杭ぼっくいに火が付く理屈と膏薬こうやくはどこへでも付く
[類語](1くっつくひっつくへばりつくこびりつく付ける触れる吸い付く焼き付く焦げ付く吸着/(2㋐)届く至る立ち至る辿り着く来る/(2㋒)座る掛ける腰掛ける腰を下ろす座する跪く/(3従う随行お供随伴

づ・く【付く】

[接尾]《動詞五(四)段型活用。動詞「つ(付)く」から》名詞またはそれに準ずる語に付いて動詞をつくり、そのような状態になる、そういうようすが強くなるという意を表す。「秋―・く」「元気―・く」「おじけ―・く」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「付く」の意味・読み・例文・類語

つ・く【付・着・就・即・憑】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙
    1. [ 一 ] あるものと他のものとのすきまがなくなる。離れない状態になる。
      1. 接触する。また、触れそうに近づく。
        1. [初出の実例]「松が枝のつちに都久(ツク)まで降る雪を見ずてや妹が籠り居るらむ」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四三九)
        2. 「河上の方より黄なる物流れ来て、物につきてとどまりたるを見れば」(出典:更級日記(1059頃))
      2. くっついて離れない状態になる。付着する。
        1. [初出の実例]「旅と云(へ)ど真旅になりぬ家の母(も)が着せし衣に垢都枳(ツキ)にかり」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三八八)
        2. 「小土器にみその少しつきたるを見出て」(出典:徒然草(1331頃)二一五)
      3. 色、よごれ、傷など、何か行なった跡が残る。
        1. [初出の実例]「やまとの宇陀の真赤土(まはに)のさ丹着(つか)ばそこもか人の吾を言(こと)なさむ」(出典:万葉集(8C後)七・一三七六)
        2. 「かかるきずさへつきぬれば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
      4. 連歌や俳諧で、前の句と後の句とがうまく連関する。
        1. [初出の実例]「かくいへばとて、一向につかぬ句をせよとにはあらず」(出典:連理秘抄(1349))
    2. [ 二 ] ある人、物事などに従う。
      1. ある人に心を寄せる。その言葉に従う。また、従い学ぶ。
        1. [初出の実例]「高き嶺(ね)に雲の着くのすわれさへに君に都吉(ツキ)なな高嶺と思ひて」(出典:万葉集(8C後)一四・三五一四)
        2. 「西光と云下賤の不当人めが申事につかせ給て」(出典:平家物語(13C前)二)
      2. あとに続いてゆく。ある人、物のそばに添う。話などを理解してあとに従う。つき添う。
        1. [初出の実例]「つかさをたまはりて、あたらしきめにつきて、年へてすみける人をすてて」(出典:古今和歌集(905‐914)離別・三七五・詞書)
        2. 「使はれんとて、つきてくるわらはあり」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月二一日)
      3. 対立するものの一方に加わる。味方をする。
        1. [初出の実例]「中にも阿波讚岐(あはさぬき)の在庁ども、平家をそむいて源氏につかんとしけるが」(出典:平家物語(13C前)九)
        2. 「子供の石合戦を見たるに、其一方の人数は、殆ど他の方の二倍なりし故、見る者、皆多き方に就きたり」(出典:尋常小学読本(1887)〈文部省〉七)
      4. ある場所に沿う。
        1. [初出の実例]「荒磯辺に着(つき)て漕がさね杏人(ももさね)の浜を過ぐれば恋しくありなり」(出典:万葉集(8C後)九・一六八九)
        2. 「追分から高等学校に附(ツ)いて右に曲がって」(出典:青年(1910‐11)〈森鴎外〉一)
      5. ある物事に、他の事が付随する。ある事に応じて起こる。
        1. [初出の実例]「法花三昧行なふ堂の懺法の声、山おろしにつきてきこえくる」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
        2. 「風につきてさとにほふがなつかしく」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蓬生)
      6. 物事のどちらか一方に従う。また、はっきりと、ある状態になる。
        1. [初出の実例]「とにもかくにもつかで、よにふる人ありけり」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
        2. 「大につき小を捨つることわり」(出典:徒然草(1331頃)一七四)
        3. 「官員とも見えず、商人ともつかぬ言語恰好」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一)
      7. 漢文的表現で、対象がある状態や方向にすすむ。
        1. [初出の実例]「万里如雲稼、重陽就日晴」(出典:菅家文草(900頃)一・重陽侍宴、賦景美秋稼)
    3. [ 三 ] ある気持、力、作用などがはたらく。
      1. ある気持になる。
        1. [初出の実例]「深き心も知らで、あた心つきなば」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
        2. 「つゆならぬ心を花におきそめて風吹くごとに物おもひぞつく〈紀貫之〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋二・五八九)
      2. 力、知恵などが加わる。
        1. [初出の実例]「世心つける女、いかで心なさけあらむ男にあひ得てしがなとおもへど」(出典:伊勢物語(10C前)六三)
        2. 「勢のつかぬ先にいそぎ打手をくだすべし」(出典:平家物語(13C前)五)
      3. ( 憑 ) 神仏、物のけなどが、のりうつる。とりつく。
        1. [初出の実例]「玉葛(たまかづら)実ならぬ樹にはちはやぶる神そ著(つく)とふならぬ樹ごとに」(出典:万葉集(8C後)二・一〇一)
        2. 「物のけ、物つきにつきていふやう」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)四)
      4. 病気にかかる。感染する。
        1. [初出の実例]「あさましうかかる病(やまひ)もつくものになむありける」(出典:大和物語(947‐957頃)一七〇)
      5. 効果などが生じる。
        1. [初出の実例]「まだ験(げん)つくばかりの行なひにもあらねば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)柏木)
      6. 火が燃え始める。また、あかりがともる。
        1. [初出の実例]「春さり来れば 野ごとに 著(つき)てある火の 風のむた なびかふごとく」(出典:万葉集(8C後)二・一九九)
        2. 「見る間に不動明王の前に燈明(あかし)が点(ツ)き」(出典:武蔵野(1887)〈山田美妙〉下)
      7. 植木やさし木が、地面に根を張る。根づく。
        1. [初出の実例]「ひっちぎり植てもつくや餠つつじ〈利正〉」(出典:俳諧・鷹筑波(1638)三)
      8. (目、耳、心などに)知覚される。
        1. [初出の実例]「へそかたの林のさきの狭野榛(さのはり)の衣に着くなす目に都久(ツク)わが背」(出典:万葉集(8C後)一・一九)
        2. 「藪深く蝶気のつかぬつばき哉〈卜枝〉」(出典:俳諧・曠野(1689)二)
      9. 運が向く。
        1. [初出の実例]「こんな所で、猿丸さんにお会い出来るなンて、ほんとに、あたくし、ツイてますわ」(出典:東京の孤独(1959)〈井上友一郎〉台風一過)
    4. [ 四 ] ある定まった状態になる。
      1. 性質や状態としてそのものにそなわる。
        1. [初出の実例]「いと葉しげうつきたる枝に」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
        2. 「目はたたざまにつき、眉は額ざまに生ひあがり」(出典:枕草子(10C終)四九)
      2. 名前、値段などが定められる。「値がつく」
        1. [初出の実例]「もろこしに、ことごとしき名つきたる鳥の」(出典:枕草子(10C終)三七)
        2. 「前者の方が存外面白くて安くつく」(出典:東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉六月暦)
      3. 道などが設けられる。「道がつく」
      4. ある状態に落ちつく。ある結果や結論が出ておさまる。「かたがつく」「想像がつく」
        1. [初出の実例]「大方の身のやうもつく方なきにそへて」(出典:建礼門院右京大夫集(13C前))
        2. 「永い間考へて居てどうしても解釈の付かなかった問題が」(出典:科学者と芸術家(1916)〈寺田寅彦〉)
      5. 身や心によく合う。
        1. [初出の実例]「あざやかなる衣どもの身にもつかぬを着て」(出典:枕草子(10C終)二七八)
        2. 「いとをかしげにかしづかれたる人とは見ゆれど、心にもつかずおぼえ給て」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
    5. [ 五 ] ある地位、場所などに身を置く。
      1. ( 着 ) 進んで行ってある場所に至る。
        1. [初出の実例]「今日か来む 明日かも来むと 家人は 待ち恋ふらむに 遠の国 いまだも都可(ツカ)ず」(出典:万葉集(8C後)一五・三六八八)
        2. 「申の時ばかりにかの浦につき給ひぬ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)須磨)
      2. ( 即 ) ある地位、特に、帝位にのぼる。
        1. [初出の実例]「東宮をたがひにゆづりて、位につき給はで」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
      3. ( 着 ) 座をしめる。ある場所にすわる。
        1. [初出の実例]「供の人々は〈略〉すゑたる所共につきて、くひののしりて座にゐ並みたり」(出典:落窪物語(10C後)二)
        2. 「折節酒宴の座席にて、侍ひ共百人計り座に着たるに」(出典:梵舜本沙石集(1283)八)
      4. ( 就 ) ある役目や任務を負う。「任につく」
        1. [初出の実例]「今はさること似げなく思ひけれど、もとつきにける事なれば、大鷹の鷹飼にてさぶらはせ給ひける」(出典:伊勢物語(10C前)一一四)
        2. 「首尾めでたく領事館に入りて、通弁〈略〉の職に就(ツ)きぬ」(出典:内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉八)
    6. [ 六 ] ( 「…につき」「…につきて」「…について」などの形で用いる )
      1. …に関する。→つき(就)
        1. [初出の実例]「『むかしすきごとせし人も、いまはおはせずとか』など、人につきてきこえごつを聞くを、ものしうのみおぼゆれば」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
        2. 「此虫に就きては、種々の面白き話あり」(出典:尋常小学読本(1887)〈文部省〉七)
      2. …の理由による。→つき(就)
      3. …を単位とする。「一回について(つき)百円」→つき(就)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行四段活用 〙
    1. くっつける。付着させる。
      1. [初出の実例]「おのがじしは、塵もつかじと身をもてなし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
    2. 添え加える。特に、名を与える。
      1. [初出の実例]「いかさま是は祇といふ文字を名について、かくはめでたきやらむ」(出典:高野本平家(13C前)一)
      2. 「法名を義法房とぞつかれける」(出典:保元物語(1220頃か)中)
    3. 相手として持つ。また、自分の身にそなえ持つ。
      1. [初出の実例]「この御ぞうの、頭あらそひにかたきをつき給へば」(出典:大鏡(12C前)三)
      2. 「大なる道をも成じ、能をもつき、学問をもせんと」(出典:徒然草(1331頃)一八八)
  3. [ 3 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙つける(付)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

ビャンビャン麺

小麦粉を練って作った生地を、幅3センチ程度に平たくのばし、切らずに長いままゆでた麺。形はきしめんに似る。中国陝西せんせい省の料理。多く、唐辛子などの香辛料が入ったたれと、熱した香味油をからめて食べる。...

ビャンビャン麺の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android