(読み)ケツ

デジタル大辞泉 「結」の意味・読み・例文・類語

けつ【結】[漢字項目]

[音]ケツ(漢) ケチ(呉) [訓]むすぶ ゆう ゆわえる
学習漢字]4年
ひもなどでむすぶ。むすびつける。「結髪直結連結
組み立てる。構造物・組織体を造る。「結構結社結成結党
ばらばらのものを一つにまとめる。まとまる。「結合集結妥結団結
固める。固まる。「結石結節結氷結露凝結凍結
しめくくる。終わりになる。「結果結局結末完結帰結終結
ふさがる。「鬱結うっけつ秘結
[名のり]かた・ひとし・ゆい
[難読]網結あみず結願けちがん結城ゆうき

けち【結】

賭弓のりゆみで勝負を決めること。また、その試合。
「右の大殿の弓の―に、上達部、親王達多く集へ給ひて」〈・花宴〉
囲碁の終盤戦で、まだ決まらない目を詰めること。また、その目。駄目。けち。→けつ
碁打ちはてて、―さすわたり、心疾こころとげに見えて」〈・空蝉〉

けつ【結】

むすび。終わり。
漢詩で末の句。結句。「起承転
《迷いの世界にしばりつける心の働きであるところから》仏語。煩悩ぼんのうのこと。

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精選版 日本国語大辞典 「結」の意味・読み・例文・類語

むすぼお・る むすぼほる【結】

[1] 〘自ラ下二〙
① 細長いものが結び合わせられて解きにくくなる。からみあってほどけなくなる。
※宇津保(970‐999頃)春日詣「花咲かぬ枝にも蝶はむつれけり柳の糸もむすぼほるらし」
② 狭まったり細まったりする。炎や煙が細まる。
※源氏(1001‐14頃)柏木「いまはとて燃えむけぶりもむすぼほれ絶えぬ思ひのなほや残らむ」
③ 固まって形になる。露・霜や氷などが凝固、凝結する。
※源氏(1001‐14頃)夕顔「ほのめかす風につけてもした荻のなかばは霜にむすぼほれつつ」
④ 夢として形となって現われる。
※源氏(1001‐14頃)朝顔「とけて寝ぬねざめさびしき冬の夜にむすぼほれつる夢のみじかさ」
⑤ 心が鬱屈(うっくつ)して晴ればれしなくなる。気持が発散せず憂鬱になる。気がめいる。気づまりとなる。
※拾遺(1005‐07頃か)恋三・八一四「春くれば柳の糸もとけにけりむすぼほれたるわが心哉〈よみ人しらず〉」
⑥ 特定の人とつながりを持つ。関係を結ぶ。縁故をつける。
※平家(13C前)一「かかりしかば、いかなる人も相構て其ゆかりにむすぼほれむとぞしける」
[2] 〘自ラ四〙 (一)に同じ。
※彌勒上生経賛平安初期点(850頃)「世尊の筋脈(すぢのみち)は盤結(ムスホホリ)て堅固にして深く隠れて現はにあらず」

ゆ・う ゆふ【結】

〘他ワ五(ハ四)〙
① 結ぶ。しばる。糸・ひも・なわなどでくくる。
※万葉(8C後)一五・三七一五「一人のみ着ぬる衣の紐解かば誰かも由波(ユハ)む家遠くして」
② 髪を結ぶ。乱れた髪の毛をたばねととのえる。結髪する。いう。
※万葉(8C後)一一・二四九六「肥人(こまひと)の額髪結(ゆ)へる染木綿(しめゆふ)の染みにしこころ我れ忘れめや」
③ 一つのものに組み立てる。作り構える。つくる。
※万葉(8C後)一九・四一五四「枕付く 妻屋のうちに 鳥座(とくら)由比(ユヒ) すゑてそ我が飼ふ 真白斑の鷹」
※落窪(10C後)二「とく帰りなんと急ぎ給へど、御車の輪ゆふ程に」
④ つくろい縫う。糸でつづる。
※枕(10C終)九〇「几帳どものほころびゆひつつ」
⑤ 獣の毛をたばねて筆の穂とする。筆を作る。
※白氏文集天永四年点(1113)四「宣城の筆人採りて筆に為(ユフ)(〈別訓〉ツクル)」
[補注]この語の変化した「いう」の形の用例も見られる。

けつ【結】

[1]
① むすび。おわり。終結。
※北野天満宮目代日記‐永正四年(1507)一二月「たうちを仕候てくわんらくもけつに成候間祝着由申」 〔淮南子‐繆称訓〕
② 末の句。結句。
③ (bandhana または saṃyojana の訳語) 仏語。煩悩(ぼんのう)の異称。有情を生死の迷いに結縛して脱却させない心の働き。これに三結、四結、五結など、多くを数える。結使(けっし)
法華義疏(7C前)一「尽諸有結心得自在者。嘆殺賊徳。殺賊自在唯是一時。而義自応始終。故云結而得自在也」 〔大乗義章‐五本〕
④ 筋肉などの凝った状態。
※柳橋新誌(1874)〈成島柳北〉二「瞽、客背に坐し、撲々肩を拍ち、〈略〉道ふ、〈略〉徐々(〈注〉そろそろ)結を解て可なり」
[2] 〘接尾〙 さし縄に通した銭。転じて、一結は銭一貫文(千文)をさす。
東寺百合文書‐は・(年未詳)(鎌倉)一一月二六日・僧厳書状「三結を欲送遣候也」

ゆい ゆひ【結】

[1] (動詞「ゆう(結)」の連用形の名詞化)
① 結うこと。結ぶこと。くくること。たばねること。紐・髪・標(しめ)などを結ぶこと。また、そのもの。
※万葉(8C後)三・四〇一「山守の有りける知らにその山に標(しめ)(ゆひ)立てて結(ゆひ)の辱しつ」
② (━する) 農作業などで、互いに労力を交換して助け合うこと。田植や刈取りなどで、互いに雇ったり雇われたりすること。また、その人。
※堀河百首(1105‐06頃)夏「残田はそしろに過ぎじ明日よりはゆひもやとはで早苗とりてむ〈隆源〉」
③ 乳幼児を入れて、つりさげて揺する、子守用の桶あるいは籠。〔名語記(1275)〕
[2] 〘接尾〙
① くくり束ねたものを数えるのに用いる。
※枕(10C終)八七「作りはてつれば、宮司召して、衣二ゆひとらせて」
② 銭を数えるのに用いる。一〇〇文を一結とする。
※貞享版沙石集(1283)六「はこびける用途十結をば、御布施に奉るなりとて、すてて帰りにけり」

むすぼ・れる【結】

〘自ラ下一〙 むすぼ・る 〘自ラ下二〙
① 結ばれて解けにくくなる。もつれる。また、物事がそのような状態になる。
※広本拾玉集(1346)五「玉の緒はむすほれてのみやみなましかくしも君が思ひとかずや〈藤原公経〉」
② 固まって形になる。
※一条摂政集(961‐992頃)「しばしこそそでのこほりのむすほれめいまおもはるのかぜにとけなん」
③ 心が鬱屈して晴れ晴れしなくなる。気がめいる。憂鬱になる。沈んだ気持になる。
※万葉(8C後)一八・四一一六「ねもころに 思ひ牟須保礼(ムスボレ) 歎きつつ 吾(あ)が待つ君が」
④ つながりを持つ。関係を結ぶ。
※長門本平家(13C前)一「さればいか成人も相構へて此ゆかりに結ぼれんとぞしける」

けち【結】

〘名〙
① 賭弓(のりゆみ)で勝負を決めること。また、その時。
※実方集(998頃)「ゆみのけちに、まだらまくにゆきのふりたりける」
② 囲碁の終盤戦で、まだ決まらない目を詰め寄せること。闕(けち)
※枕(10C終)一六一「人と物いふことを碁になして、近う語らひなどしつるをば、『手ゆるしてけり』『けちさしつ』などいひ」
③ ⇒けつ(結)(一)③
[補注](1)「けち」の「ち」は漢字の入声音「t」を仮名表記するとき字音の後に母音「i」を添えたもので、「質(しち)」「節(せち)」と同様。
(2)①と②は勝負を決着させるという共通の意味をもつが、賭弓や囲碁の特定の世界での語であり、一般の用語で決着の意味に用いた例は見出しがたい。

かた・ねる【結】

〘他ナ下一〙 かた・ぬ 〘他ナ下二〙
① 集めてひとまとめにする。むすぶ。しばる。
※万葉(8C後)一八・四一一六「大君の 任(まけ)のまにまに 執り持ちて 仕ふる国の 年の内の 事可多禰(カタネ)もち」 〔和訓栞(1777‐1862)〕
② 公家有職で、結政(かたなし)を行なう場合の作法の一つ。政にあずかるべき申文(もうしぶみ)を開き、その要旨を読み上げる。
左経記‐万寿二年(1025)一二月一〇日「今日須申文之由、結申」

ゆわ‐・う ゆはふ【結】

[1] 〘他ハ四〙 (動詞「ゆう(結)」の未然形に、反復、継続を表わす助動詞「ふ」の付いてできたもの) しっかりと縛っておく。
※書紀(720)天智二年六月(北野本訓)「革を以て掌を穿ち縛(ユハフ)
※大唐西域記長寛元年点(1163)四「縲(ユハヒ)(つなく)中に在りと雖も、尚旦夕命を貪る」
[2] 〘他ハ下二〙 ⇒ゆわえる(結)

むすぼれ【結】

〘名〙 (動詞「むすぼれる(結)」の連用形の名詞化)
① からみ合って解けにくいこと。また、そのような状態になっている部分。
※俳諧・つばさ(1706)下「むすほれを風にくり出す柳かな〈鳥紅〉」
② 心が憂鬱になること。また、その気持。
※歌舞伎・阿国御前化粧鏡(1809)四立「この医者どのは役にも立たぬ事を言ひ出し、後室様のお気のむすぼれ」

むすば・る【結】

〘自ラ四〙
① 糸、ひもなどで締められる。
② 他と、あるつながりができる。縁がつく。
人情本・恩愛二葉草(1834)二「是も矢張悪縁の、結ばる上へ重なる縁」
③ (口が)閉じられる。
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「開た口が結ばって前歯が姿を隠すに連れ」

けっ‐・する【結】

[1] 〘自サ変〙 けっ・す 〘自サ変〙 大便が滞って通じなくなる。秘結する。便秘する。
※全九集(1566頃)一「洪脉は〈略〉大腸通せず、大便結し、口のうちかはき、身いたむ事をつかさどる」
[2] 〘他サ変〙 けっ・す 〘他サ変〙 むすぶ。結論づける。また、記述を終らせる。
※却癈忘記(1235)上「仏在世ならば、物さうにかくべからずといふ戒も、一つ結せらるべし」

むすぼ・る【結】

[1] 〘自ラ下二〙 ⇒むすぼれる(結)
[2] 〘他ラ四〙 あるものにつながりを持たせる。
※平治(1220頃か)上「すべて此一門にむすぼらるる人は、あやしの女房にいたるまで、才智人に越えたり」

ゆす・ぶ【結】

〘他バ四〙 「むすぶ(結)」の変化した語。
※万葉(8C後)二〇・四四二七「家(いは)の妹ろ我(わ)を偲ふらし真結(ゆす)ひに由須比(ユスヒ)し紐の解くらく思へば」

ゆわ・く ゆはく【結】

〘他カ五(四)〙 結ぶ。縛る。ゆわえる。
虞美人草(1907)〈夏目漱石〉三「其百姓が、車の轅(ながえ)と横木を蔓(かづら)で結(ユハ)ひた結び目を誰がどうしても解く事が出来ない」

むすばわ‐・る むすばは‥【結】

〘自ラ下二〙 (「むすびあう(結合)」の変化した「結ばう」の未然形に自発の助動詞「る」の付いたものか) =むすぼおる(結)
新撰字鏡(898‐901頃)「絓 緒也悪也絲也礙也懸也 糸牟須波々留」

いわ・く いはく【結】

〘他カ五(四)〙 =いわえる(結)
多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉後「乃公(おれ)が舐めて遣ったり、結(イハ)いて遣ったり」

ゆわ・える ゆはへる【結】

〘他ア下一(ハ下一)〙 ゆは・ふ 〘他ハ下二〙 結ぶ。縛る。くくる。〔書言字考節用集(1717)〕
塩原多助一代記(1885)〈三遊亭円朝〉二「アレー。と云ふ中に一人が足を縛(ユワ)へ、一人が手を縛へ」

けっ・しる【結】

〘自サ上一〙 (サ変動詞「けっする(結)」の上一段化したもの) =けっする(結)(一)
滑稽本八笑人(1820‐49)五「がうぎにけっしるな、あとがつけへてゐるぜ」

かた‐な・す【結】

〘他サ四〙 (動詞「かたねる(結)」の連用形に「なす」の付いた「かたねなす」の変化した語か) 集めて一まとめにする。結びかためる。
※書陵部本名義抄(1081頃)「結 カタナス〔老子〕」

むすぼおれ むすぼほれ【結】

〘名〙 (動詞「むすぼおる(結)」の連用形の名詞化) 心や気持がふさぐこと。憂鬱。むすぼれ。
※浄瑠璃・平家女護島(1719)三「御気のつかれ御心のむすぼふれ、深く見へさせ給ふ」

いわ・える いはへる【結】

〘他ハ下一〙 (「ゆわえる(結)」の変化した語) しばる。結ぶ。ゆう。いわく。
※雑俳・千枚分銅(1704)「帯といて稲をいわゑるやうな秋」

かた・ぬ【結】

〘他ナ下二〙 ⇒かたねる(結)

けっ‐・す【結】

〘自他サ変〙 ⇒けっする(結)

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改訂新版 世界大百科事典 「結」の意味・わかりやすい解説

結 (ゆい)

家々の間で労働力を交換しあって作業を相互に手伝うこと。ユイの発音が変化してイイ,エエ,ヨイあるいはヨイコなどと各地で呼ばれる。沖縄でユイーマールというのもユイに発した言葉である。またテマガエ(手間替え),テマガリ(手間借り)などともいう。ユイは複数の家が組んで,同じ人数の労働力を同じ日数だけ互いに提供しあって同じ作業を行うもので,短期決済による労働力の等量交換に特色があり,各家が多くの労働力を集中的に必要とする場合に採用される。田植のユイがその代表であるが,稲刈りや脱穀など種々の農作業,屋根ふきなどの際にも行われた。ユイを結ぶ相手の家は,ユイが労働力の等量交換であることに対応して,対等な社会関係にある家々に求められるのが普通である。本家と分家,地主と小作という上下関係にある家々の間で結ばれることは少なく,村内在住の親類や近隣の家々と行うのが一般的である。とくに村内の親類は,その対等性により,ユイを結ぶもっとも重要な関係である。したがって,ユイは超世代的に組織された労働組織や集団ではなく,必要に応じて親族関係や近隣関係を基礎にして結ばれるものであり,作業によって結ぶ範囲は異なり,また世代交替によって組む相手も変化することが多い。

 ユイという言葉は古いが,その意味はしだいに変化してきた。短期決済による労働力の等量交換の意味としてユイが確定したのは,小農経営が日本農業の基本となった近世前期であろう。労働力の等量交換を内容とする小農的ユイが一般化する以前は,本家や手作地主に対し分家や名子・被官という従属農民が労働力を提供し,奉仕することがユイの中心であったと考えられる。平安時代の歌集《堀河院百首》に〈残り田はそ代に過ぎじ明日は只ゆひもやとはで早苗とりてむ〉(隆源)とあり,ユイは雇うものとして歌われている。それは本家や手作地主が分家,従属農民に労働力を提供させることを東北地方や北九州でヤトイといったことに通じるものである。かつてはこのように,労働力の提供とそれに対するさまざまな反対給付という形で結ばれた本家末家的ユイが基本であり,それに加えて分家や従属農民が互いに結ぶ小農的ユイが併存していたといえよう。近世になり後者のみがユイと呼ばれるようになり,本家末家的ユイはヤトイとかスケ,テツダイと呼ばれるようになったものと考えられている。それ以降のユイにあっては,労働力の提供に対しては同じ量の労働力で返すのが原則であるが,家々の間で経営形態や規模に大きな相違が出てくると,牛馬等の家畜の提供に対し,人間の働き手が行くとか,さらに労働の提供に対し物資,ときには金銭で返すユイも行われるようになった。そして,ユイに加えて臨時雇いの労働力も出現した。ユイと臨時雇いのヒヨウ(日傭)とは久しく併存してきたが,田植機はじめ農機具の機械化によっていずれも急速に姿を消しつつある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「結」の意味・わかりやすい解説


ゆい

語源的には結う、結ぶ、結合、共同などを意味し、地域社会内の家相互間で行われる対等的労力交換、相互扶助をいう。地方によってはイイ、ユイッコ、エエなどとよばれ、また中国・四国地方のように手間換(てまがえ)、手間借(てまがり)と称する所もある。結は催合(もやい)とともにわが国の伝統的な共同労働制度の一つであるが、催合の慣行がかつて漁村で盛んで現在は衰退しつつあるのに対し、結は農山村で盛んで、現在も田植、稲刈りなどさまざまな機会に行われている。結における労力交換では、多くの場合、働き手として出動する個人の労働力の強弱はあまり問題とはされないが、一人前の人間が1日提供してくれた労力に対しては、かならず1日の労働で返済することが基本で、金銭や物で相殺することを許さない点に特徴がある。結は農耕作業で行われることが多く、起源もそこにあると考えられるが、実際の機会はそれにとどまらず、屋根の葺替(ふきか)え作業における茅(かや)の切出しや縄ないなどでもよく行われた。

 そのほか奇抜なものとして、秋田県では共同で按摩(あんま)の練習をすることを結按摩とよんでいたし、結で髪を結い合うなどの例もあり、結の意味が共同という範囲にまで拡大して解釈されることが少なくなかった。

[野口武徳]

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百科事典マイペディア 「結」の意味・わかりやすい解説

結【ゆい】

〈結合〉の意で交換的な共同労働をさす。労力の提供に対し金や物でなく労力で返すのが特徴。その点で催合(もやい)が生産手段の共同による集団労働であり,手伝いが片務的なのと異なる。漁業の催合に対し農山村で盛んで,特に田植の結が代表的で,抽せん順で植付けをした。ユイという言葉は古いが,労働力の等量交換として確立したのは近世前期であり,小農経営が日本農業の基本となったのと軌を一にするとみられる。農機具の機械化とともに姿を消しつつある。
→関連項目郷村制田植

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「結」の解説


ゆい

共同や結合の意味を表し,とくに交換労働の慣行をさすことが多い。結返しの言葉があるように,かならず返す必要があると考えられている点で,共同作業である模合(もやい)とは異なる。結は労働力の等価交換が原則で,作業によっては牛馬1匹と人間2人などの交換もある。田植や稲刈など,季節内や年内など短い間に返す結と,屋根普請など数十年という長い期間で返せばよい結とがある。結をくむ相手は,隣近所の家,気のあった仲間,近隣組織,講仲間,親類などが一般的だが,ユイシュ(結い衆),エドシ(ユイ同士すなわちユイ仲間)など,親戚・姻戚関係を示す言葉としてユイの語を用いる地方があり,元来は族縁関係に発生した合力(ごうりき)と考えられる。

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旺文社日本史事典 三訂版 「結」の解説


ゆい

農・漁村において,各戸間の相互扶助を目的とする無償労働
短期間に多くの労働力を要する農業労働(田植え・稲刈など)や屋根葺などのとき,漁村では網曳きなどのとき行われ,「由比」などの地名を残している。古くからの民俗で,日雇労働の発達にともなって衰退した。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【結負制】より

…朝鮮独特の土地面積表示法。起源は,人間の手で一握りの量の穀物を租税として負担すべき広さの土地を1把の土地とし,10把を1束,10束を1負,100負を1結としたことに始まると思われる。三国時代から1918年までの長い期間使用されたが,その内容は時代により異なる。…

【沖縄[県]】より

…面積=2266.04km2(全国44位)人口(1995)=127万3440人(全国32位)人口密度(1995)=562人/km2(全国10位)市町村(1997.4)=10市16町27村県庁所在地=那覇市(人口=30万1890人)県花=デイゴ 県木=リュウキュウマツ 県鳥=ノグチゲラ日本の最南西に位置し,沖縄島(本島)ほか160の島々からなる島嶼(とうしよ)県で,そのうち40島が有人島,他は無人島である。…

【住居】より

…建具は板戸が中心で,外への開口部は少なく,片袖壁の裏に板戸1枚と障子1枚を引き込む形式で,外側に格子を打つこともあった。屋根は茅を使うことが多く〈ゆい〉と呼ばれる相互労働奉仕が行われていた。床は板を得ることが難しかったため,土間に籾や藁を敷き,蓆(むしろ)を延べた土座(どざ)や竹簀の子が使われる例も多い。…

【すけ】より

…〈助〉の字をあてる。他人に対して一方的に無償で労働力を提供することであるが,とくに主従関係にある者の間で従属している者が主家に対して提供する労働をいう。農地改革前の主として東北地方の農村にしばしばみられた。スケという言葉で主家への労働提供を表すのは岩手県の一部であるが,同様の労働をヤトイ(雇い),テツダイ(手伝い),テマヅトメ(手間勤め),オヤク(お役)などともいう。スケの内容は,岩手県二戸郡のある村の例では,田植,田の草刈り,稲刈りなど,毎年ほぼ一定の日数に決まっている農作業と薪伐り,すす掃き,屋根の草取りなど,必要に応じて働きに出る家事の諸作業であった。…

【農業生産組織】より

…もともと農家は,個々に孤立して農業生産を営んできたわけではない。今日でも用水路や農道を補修し整備する〈むら〉仕事としての共同作業が多少ともあるが,かつては田植や稲刈などの農繁期は〈ゆい〉や手間替えなどの共同体的相互扶助で乗り切ってきたものであった。共同体的枠組みのなかで,それに支えられて生産活動は行われてきたのであるが,農業,農村の近代化が進められるなかで,こうした共同体的諸関係は多くの面で後退し解体した。…

【プマシ】より

…田植や夏の除草などの農繁期に,農民どうしが労力を提供し合って農作業にあたること。日本の〈ゆい〉に似ている。プマシは部落内の親しい者どうしで組織される比較的少人数の共同労働であるが,同様の共同労働が全部落的に行われる場合には,トゥレtureと呼ぶ。…

【もやい(催合)】より

…しかし,共同出資して共有の道具や機械を購入することをモヤイといったり,その品物や施設をモヤイ道具,モヤイ車,モヤイ井戸などということにその感覚は示されている。ゆい【福田 アジオ】。…

※「結」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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