マルクス(兄弟)(読み)まるくす(英語表記)The Marx Brothers

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マルクス(兄弟)」の意味・わかりやすい解説

マルクス(兄弟)
まるくす
The Marx Brothers

アメリカの喜劇チーム。長男チコChico(本名レナード、1887―1961)、次男ハーポHarpo(本名アドルフ、1888―1964)、三男グルーチョGroucho(本名ジュリアス・ヘンリー、1890―1977)、四男ガンモGammo(本名ミルトン、1892―1977)、五男ゼッポZeppo(本名ハーバート、1901―1979)。兄弟はマンハッタンのユダヤ人居住区で生まれ、幼くしてボードビル芸人となった。ガンモを除く4人が『ココナッツ』(1929)でパラマウント社から映画デビュー。奇怪な口ひげに眼鏡、早口詭弁(きべん)をまくし立てるグルーチョ、彼に対抗してイタリア語訛(なま)りで無茶苦茶な反論をするチコ、ひとこともしゃべらず、コート姿で欲望のままに行動するハーポを中心に、『けだもの組合』(1930)、『いんちき商売』(1931)、『御冗談でショ』(1932)、『我輩(わがはい)はカモである』(1933)などで、論理や常識を覆す超現実的な世界を創造した。ハーポのハープ演奏、チコの指一本でのピアノ演奏などの芸や、ハーポがグルーチョの動きを模倣し鏡像と錯覚させるギャグなどドタバタを超えた深みもある。MGMに移籍しゼッポが抜けたあとの『オペラは踊る』(1935)からは、物語に沿った展開を重視し、『マルクス一番乗り』(1937)、『マルクスの二挺拳銃』(1940)、『マルクス兄弟デパート騒動』(1941)などに出演したが、『マルクス捕物帖』(1946)を最後に映画から撤退、解散した。グルーチョはラジオやテレビに活動の場を移し、ハーポとチコは時々、テレビなどに姿を見せた。1960年代に再評価が起こった。

[出口丈人]

『P・D・ジンマーマン著、中原弓彦・永井淳訳『マルクス兄弟のおかしな世界』(1972・晶文社)』『グルーチョ・マルクス著、諸岡敏行訳『グルーチョ・マルクスの好色一代記』(1993・青土社)』『いとうせいこう監訳『マルクス・ラジオ』(1995・角川書店)』『小林信彦著『世界の喜劇人』(新潮文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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