デジタル大辞泉
「位」の意味・読み・例文・類語
くら‐い【位】[名]
《「座」に「居る」意から》
1 定められた序列の中での位置。地位。
㋐皇帝・国王などの地位。皇位。王位。帝位。「位に即く」「位を譲る」
㋑官職などにおける身分の段階。等級。「三位の位」→位階
2 地位・身分の上下関係。階級。
3 出来のよしあし、品格などからみた、優劣の段階。
㋐物事の等級。
㋑連歌・俳諧・能楽などで、作品や所作の品位。
4 十進法での数の段階。また、その位置の名。「十の位」「百の位」などという。表は位の名の一例であるが、恒河沙から無量大数までを八桁とびにする説もある。
5 将棋で、敵陣を制圧する位置。特に、盤面の中央をいう。
6 芸道などで、実力の程度。到達した境地。芸位。
「我が―のほどを能々心得ぬれば」〈花伝・七〉
[補説]数の位の名称(「塵劫記」より)
1068 | 無量大数 |
1064 | 不可思議 |
1060 | 那由他 |
1056 | 阿僧祇 |
1052 | 恒河沙 |
1048 | 極 |
1044 | 載 |
1040 | 正 |
1036 | 澗 |
1032 | 溝 |
1028 | 穣 |
1024 | 𥝱 |
1020 | 垓 |
1016 | 京 |
1012 | 兆 |
108 | 億 |
104 | 万 |
103 | 千 |
102 | 百 |
10 | 十 |
1 | 一 |
10-1 | 分 |
10-2 | 厘 |
10-3 | 毛 |
10-4 | 糸 |
10-5 | 忽 |
10-6 | 微 |
10-7 | 繊 |
10-8 | 沙 |
10-9 | 塵 |
10-10 | 埃 |
(※𥝱は秭の記載誤りとも)
[類語]階級・身分・位置・地位・ポスト・ポジション・椅子・格・肩書き・役職・役付き・席
くらい【位】[副助]
[副助]《名詞「くらい(位)」から。中世以降の語。「ぐらい」とも》名詞、および活用語の連体形に付く。
1 おおよその分量・程度を表す。ほど。ばかり。「一〇歳位の男の子」「その位で十分だ」
2 おおよその基準となる事柄を表す。「声も出ない位びっくりした」「犬位人間に忠実な動物はいない」「目に見えない位小さい」
3 (多く「くらいなら」の形で)事実・状態を示して、程度を軽いもの、または重いものとして強く主張する意を表す。「簡単に否決される位なら、提案しなければよかった」
[類語]ざっと・およそ・かれこれ・約・ほぼ・程度・ばかり・ほど・方・内外・見当・プラスマイナス
い〔ヰ〕【位】
[接尾]助数詞。
1 物事の順位・等級・位階などを表す。「第三位」「従五位」
2 死者の霊を数えるのに用いる。「百位の英霊」
3 計算の位取りを表す。「百位の数」「小数点以下三位」
[名]くらい。位階。
「一品以下。初位以上を―と曰ふ」〈令義解・官位〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
Sponserd by 
くら‐い‥ゐ【位】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 高く大きく設けた席「座(くら)」に「ゐる」(すわる)の意から )
- [ 一 ] 身分上の地位。
- ① ( 天皇の玉座の意から ) 天皇の地位。皇位。また、天皇の地位にあること。在位。
- [初出の実例]「年長く日多く此の座(くらゐ)に坐せば」(出典:続日本紀‐天平宝字二年(758)八月一日・宣命)
- ② 朝廷の席次。等級。位階。
- (イ) 皇族・臣下の朝廷での席次。その制度は推古天皇一一年(六〇三)の冠位十二階に始まり、数次の改訂を経て、大宝令(七〇一)の位階制が平安時代以降も長く行なわれた。親王・内親王は一品(いっぽん)から四品(しほん)までの四階、諸王臣下は位と称して一位から初位(八位の下位)まで九等級を、それぞれ正・従(初位は大・少)に分け、四位以下はさらに上・下を区別して三〇階とした。
- [初出の実例]「更に爵位(クラヰ)の号を改む。仍て階級(しなしな)を増し加ふ。明位(みょうゐ)二階、浄位四階、階毎に大広有り」(出典:日本書紀(720)天武一四年正月(寛文版訓))
- 「位高くやんごとなきをしも、すぐれたる人とやはいふべき」(出典:徒然草(1331頃)三八)
- (ロ) 僧侶の功績を賞して朝廷から賜わる位階。僧位。
- [初出の実例]「定二僧綱位階一事。〈略〉国典所レ載、僧位之制、本有二三階一、満位・法師位・大法師位是也」(出典:類聚三代格‐三・貞観六年(864)二月一六日)
- (ハ) 明治二二年(一八八九)以降、華族、勅奏任官、または国家に功労のあった者を表彰するために与える称号。一位から八位までを各正・従に分け、一六階とする。四位以上は勅授、五位以下は奏授された。
- ③ 特定の社会集団での地位、身分の上下関係。階級。格式。また、その重要な地位。
- [初出の実例]「点者の位の人は、才覚は殊にありたし」(出典:十問最秘抄(1383))
- 「こちの抱(かか)へは名山といふて、松の位の太夫職」(出典:歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)三)
- [ 二 ] ( 令制下、官職にはそれに相当する位階が定められていて、たとえば左大臣は正・従二位、大納言には正三位の者を任じるというように、位を以て官をも表わしたところから ) 官職の地位。つかさ。身分。
- [初出の実例]「先づ大臣の位(くらゐ)を給ひて、明日上り幸(い)でまさむ」(出典:古事記(712)下)
- 「后のくらひも何にかはせむ」(出典:更級日記(1059頃))
- [ 三 ] 特定の分野での、力量の程度や到達し得た境地。
- [初出の実例]「六根をきよめて仏の境界に入り、諸のさはりをはなれて菩薩の位に入むと思ひ」(出典:観智院本三宝絵(984)下)
- 「堪能のたしなまざるよりは、終に上手の位にいたり」(出典:徒然草(1331頃)一五〇)
- [ 四 ] 人、または作品の品位。風格。貫祿。
- [初出の実例]「句の面白をば、傍(かたはら)になして、ひとへに位に心をかけ、たけ、面影、しなを旨とすべしとなり」(出典:所々返答(1466‐70))
- 「牡年曰、『附句の位とはいか成事にや』去来曰、『前句の位を知りて附る事也〈略〉』」(出典:俳諧・去来抄(1702‐04)修行)
- [ 五 ] 兵法で敵を制圧する位置。陣形。
- [初出の実例]「味方着陣の夜、物見をつかひくらゐを見、夜討をする事習ひなり」(出典:軍法極秘伝書(1579頃か)四)
- [ 六 ] 囲碁・将棋の用語。[ 五 ]から、将棋では敵陣を制圧する位置。盤面の中央に最も位があるとされる。将棋の格言に「5五の位は天王山」とある。
- [ 七 ] 十進法で、数を表わしたときの並べられた数字の位置。「百の位」「千の位」「十分の一の位」などという。二進法、五進法などでも準用される。
- [ 2 ] 〘 副詞助 〙 ( 「ぐらい」とも。体言または活用語の連体形をうけて程度を表わす。中世以後、生じた用法 )
- ① おおよその数量・程度を示す。ほど。ばかり。
- [初出の実例]「かしらをゆへは十位(クラヰ)も二十くらひもうつくしう見ゆると申が」(出典:虎明本狂言・鏡男(室町末‐近世初))
- 「越前の国主を梅永刑部殿と申すは、某と同年位と聞く」(出典:歌舞伎・傾城仏の原(1699)一)
- ② 比較の基準を示したり、あるいは、程度を軽いもの、または、重いものとして強調したりする。ほど。ばかり。
- [初出の実例]「げにも頭を延べて参る位ならば」(出典:太平記(14C後)二九)
- 「食物本草とも言れるくらいな大愚先生だから」(出典:滑稽本・七偏人(1857‐63)初)
位の語誌
( [ 二 ]について ) ( 1 )副助詞としての用法は、古代には「ばかり」が担っていたが、中世には「ほど」に移り、中世以降、次第に「くらい」が用いられるようになった。用例は、江戸時代後期になると口語資料に多く見られるようになる。地の文では、江戸時代後期になっても「くらい」よりも「ほど」が用いられることが多い。
( 2 )江戸時代には、名詞に付くばあいは濁音、コ・ソ・ア・ドに付くばあいは清音、活用語に付くばあいは清濁両形をとる傾向がある。
( 3 )ほとんどのばあい「ほど」と置き換えが可能であるが、②の用法のうち「程度を軽いものとして強調する」用法については、「ほど」と置き換えができない。
いヰ【位】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① くらい。座居(くらい)。位階。
- [初出の実例]「仏祖の位に証せる国師に」(出典:正法眼蔵(1231‐1253)心不可得)
- ② =い(威)①
- [初出の実例]「太夫職ことの外に見さめして位(イ)のないばかりにあらず」(出典:浮世草子・椀久二世(1691)上)
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙
- ① 物事の順位、等級、位階などを表わす。
- [初出の実例]「御車十五、御前四ゐ五ゐがちにて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)
- ② 死者の霊を数えるのに用いる。「英霊百位」
- ③ 計算上のくらい取りを表わす。「十位の数」「小数点以下二位」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
Sponserd by 
普及版 字通
「位」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
Sponserd by 
位 (くらい)
能,狂言の用語で,演技・演出全般を規定する理念。奏演する演目の曲籍(初番目脇能,二番目修羅能,三番目鬘能,四番目雑能,五番目切能)や曲柄(神舞物,序ノ舞物,早舞(はやまい)物,神楽物,狂女物,老女物など)・級位(大習(おおならい),重習(おもならい),九番習(くばんならい)など)と,演ずる人物の役種(シテ,ワキ,アイ,地謡など)と役柄(老人,女,男,僧,神,鬼など)の別をそれぞれ把握し,理解したうえで作られる全体的な表現方法。普通,〈位が重い〉〈位が軽い〉と表現されるが,これは演出効果の上で重々しい充実した感じをうけるか,逆に軽い爽快な感じをうけるかの違いを示す。位は〈謡,囃子,所作〉のすべてにわたり,それぞれの技法によって総合的に表現される。謡では音高(高低),速度(緩急),息扱い(強弱・抑揚の変化)などがポイントとなる。囃子のうち,打楽器は掛声(高低と長短),速度(緩急),音扱い(強弱),音高(高低),長短などが,また笛では速度,音高,長短のほかに修飾音(多少)がポイントとなる。所作では,全体の構え,足の構え・運び,動作の緩急などがポイントとなる。位は流派による差や個人差があるほかに,面,装束,曲籍などの変更によっても変化する。また,小書(こがき)がつくと一般に位は重くなる。
執筆者:松本 雍
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
Sponserd by 