地酒(鹿児島県特産の醸造酒)(読み)じしゅ

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

地酒(鹿児島県特産の醸造酒)
じしゅ

鹿児島県特産の醸造酒。清酒を上酒(かみざけ)というのに対する名称で、地元鹿児島県では「じざけ」という。かつては宮崎県でもつくられたが、いまはない。清酒と赤酒(あかざけ)(熊本県産)の中間的な性格の酒である。原料は米。仕込みは清酒同様に初添(はつぞえ)、仲添(なかぞえ)、留添(とめぞえ)と3段に分けて行う。1か月かけて熟成させたのち、柱焼酎(はしらしょうちゅう)といって焼酎を約1%(現在では30~40%のアルコールで代替)、木灰汁(あく)(樫(かし)材の灰)や糖液を加え、1週間後にこのもろみ布袋に入れて圧搾する。焼酎、木灰汁を加えるため、腐敗しにくいから、清酒と異なり、火入れ(加熱殺菌)をしない。寒季の10月~2月に製造する。色は清酒より濃い淡黄色で、甘味が強い。神事祝儀や一般の飲用のほか料理に用いられ、郷土料理「酒(さか)ずし」には欠かせないものである。1980年(昭和55)ころ県下4社で約350キロリットル製造されており、アルコール分は14%前後。酒税法上、戦前は清酒に分類されていたが、のちにリキュールに、現在では雑酒に分類されている。

[秋山裕一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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