(読み)アン

デジタル大辞泉 「安」の意味・読み・例文・類語

あん【安】[漢字項目]

[音]アン(呉)(漢) [訓]やすい いずくに いずくんぞ
学習漢字]3年
〈アン〉
変わったことがなく穏やかに落ち着いている。「安静安全安泰公安治安平安保安
心を落ち着ける。やすらかにする。「安心安堵あんど慰安
たやすい。「安易安直
値段がやすい。「安価
アンモニア。「硝安硫安
〈やす〉「安値格安目安割安
[名のり]さだ・やす・やすし
[難読]安芸あき安宅あたか安房あわ安母尼亜アンモニア

やす【安】

形容詞「やす(安)い」の語幹。
他より金額の安いこと。また、安くて粗末なこと。「アパート」「月給」
ある時期よりも金額が安くなること。「五円
軽々しく行うこと。「請け合い」

あん【安】

野球で、安打の略。ヒット。「右」「左

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精選版 日本国語大辞典 「安」の意味・読み・例文・類語

あん【安】

  1. 〘 名詞 〙
  2. やすらかなこと。危険がないこと。困難がないこと。
    1. [初出の実例]「安と危との機は、そっとちっとの処に謀で定るものなり」(出典:史記抄(1477)八)
    2. [その他の文献]〔春秋左伝‐襄公一一年〕
  3. やすめること。しずめること。落ち着けること。
    1. [初出の実例]「自得の術は止定静安慮の五者に在り」(出典:禅海一瀾(1862))
  4. ( 形動 ) 手軽なこと。値段がやすいさま。
    1. [初出の実例]「僕なぞの大食には、安(アン)で佳味で泰山ある物にあらずんば満腹愉快に至らぬから」(出典:胡瓜遣(1872)〈仮名垣魯文〉初)
  5. あん(案)
    1. [初出の実例]「かくの如く当座(たうざ)当座のあてがひの安(アン)、不安の差別(しゃべつ)によりて」(出典:拾玉得花(1428))
  6. あん(庵)
    1. [初出の実例]「合大四十歩者〈在神前番井里十五坪内〉右件安者、則松相伝安也、而今依有要用〈略〉売渡進事明白也」(出典:高野山文書‐元徳二年(1330)一一月一五日・則松安売券)

やす【安・易】

  1. ( 形容詞「やすい」の語幹相当部分 )
  2. [ 1 ] 〘 造語要素 〙
    1. 名詞と熟合して、平安・安穏の意を表わす。「やすくに」「やすむしろ」「うらやす」など。
      1. [初出の実例]「春へ咲く藤の末葉のうら夜須(ヤス)にさ寝る夜そなき児ろをし思(も)へば」(出典:万葉集(8C後)一四・三五〇四)
    2. 名詞や動詞と熟合して、たやすくそうすること、そのようにしがちであることを表わす。「やすうけあい」など。
      1. [初出の実例]「枝弱み乱れやすなる青柳の糸のたよりに風なより来そ」(出典:天延三年庚申朝光歌合(975))
    3. 名詞と熟合して、その物の値段が安いこと、安くて粗末であることを表わす。「やすもの」「やすやど」「やすね」など。また、金額を表わす語に付いて、ある時点の価格と比べてそれだけ安くなっていることを表わす。「十円安」
      1. [初出の実例]「下等(ヤス)料理屋めいた西洋舘の楼下は」(出典:くれの廿八日(1898)〈内田魯庵〉六)
  3. [ 2 ] 〘 名詞 〙 安いこと。安目。

やすらぎ【安】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「やすらぐ(安)」の連用形名詞化 ) 穏やかな気分。ゆったりと落ち着いた心持
    1. [初出の実例]「その馬鹿げたやうな浪費にも、黒田としては一種のやすらぎがあったわけだ」(出典:残夢(1939)〈井上友一郎〉三)

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普及版 字通 「安」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 6画

[字音] アン
[字訓] やすらか・おく・いずくんぞ

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
宀(べん)+女。〔説文〕七下に「靜かなり」とあり、宀に従うのは中の儀礼である。宀は家(かびょう)。新しく嫁する女は、中で鬯(かんちょう)(清め)の儀礼をし、祖霊に対して受霊の儀礼をする。卜文に水滴を垂らす字、金文に下に衣をそえる字形があるのは、その安寧の儀礼を示す。里帰りすることを帰寧(きねい)という。

[訓義]
1. 安寧の儀礼より、やすらか、安んずる意。
2. おちつく、しずか。
3. その家に安んずる、居る、おく、安置する。
4. (えん)・晏(あん)に通じて、たのしむ意。
5. 焉に通じて、いずくんぞ、なんぞ。
6. 抑に通じて、そもそも。

[古辞書の訓]
名義抄〕安 ヤスシ・イヅクゾ・シヅカナリ・ヒロシ・イカゾ・スウ・ヤウヤク・ヨシ・トドム・シタガフ・オク 〔字鏡集〕安 ヤスシ・サダム・アツシ・ヒロシ・シヅカナリ・ヲダヤカナリ・ヲサフ・トドム・ヲク・スウ・キビシ・ヨシ・トヅ・ヒラ・イヅクゾ・イヅクンゾ・ナンゾ・イカゾ・ヤウヤク

[声系]
〔説文〕に安声として宴・晏・案・按・など十一字を収め、おおむね安の声義を承ける。宴の初文は。秘匿の聖所(匸(けい))で、女子が頭上に玉(日の形)を戴いて魂振りする形で、安の字義と近い。晏は安ととを兼ねる形。按は安撫、は〔説文〕八上に「宴(たの)しむなり」とみえる。

[語系]
安・anは同声。晏ean、宴()ianも声義が近い。燕ianは宴の仮借通用の字。字はまた讌に作る。安an、焉ianは声近く、いずれも疑問副詞に用いる。

[熟語]
安安・安易安慰安怡安燠安佚・安逸・安穏・安歌安駕安臥・安懐・安閑・安危・安吉・安居・安近・安敬・安固安行・安康・安坐・安止・安肆・安車・安・安処・安徐・安舒・安詳・安帖・安心・安神・安靖・安静・安全・安然安息・安泰・安宅・安置・安定・安諦・安適・安・安寧・安排安否安轡・安分・安平・安便・安歩・安民安眠・安命・安愉・安楽・安和
[下接語]
晏安・慰安・永安・悦安・燕安・懐安・乂安・閑安・帰安・久安・吟安・好安・安・坐安・清安・静安・請安・大安・治安・長安・鎮安・定安・恬安・偸安・撫安・文安・平安・偏安・便安・問安・養安・楽安・隆安

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「安」の解説

やす

?-? 江戸時代前期の女性。
常陸(ひたち)(茨城県)那珂郡野上村の農民与次右衛門の妻。不治の病におかされた夫から離縁をせまられるが,ことわり,看護の合間に耕作し,姑をいたわった。これを知った徳川光圀(みつくに)より賞金をあたえられ,税をゆるされた。

あん

おあん

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