(読み)シュ

デジタル大辞泉 「朱」の意味・読み・例文・類語

しゅ【朱】

黄ばんだ赤色。
黄色みを帯びた赤色の顔料。天然には辰砂しんしゃとして産し、成分は硫化水銀。朱肉や漆の着色、油絵の具などに用いる。
朱肉」の略。
朱墨しゅずみ」の略。
朱墨で歌や俳句などに点をつけたり、添削したりした書き入れ。「を請う」
しゅ(銖)
[類語]真っ赤赤色せきしょく紅色こうしょくくれないべに真紅しんく鮮紅せんこう緋色あけあかね薔薇ばら小豆あずき臙脂えんじ暗紅あんこう唐紅からくれないレッドスカーレットバーミリオンマゼンタローズワインレッド

あけ【朱/×緋】

赤い色。特に、。また、赤く染められたもの。
馬の毛色で、黄がかった赤。赤毛。
緋袍あけごろも」の略。
[類語]真っ赤赤色せきしょく紅色こうしょくくれないべに真紅しんく鮮紅せんこう緋色しゅあかね薔薇ばら小豆あずき臙脂えんじ暗紅あんこう唐紅からくれないレッドスカーレットバーミリオンマゼンタローズワインレッド

しゅ【朱】[漢字項目]

常用漢字] [音]シュ(漢) [訓]あか あけ
黄をおびた赤色。「朱唇朱筆
朱色の顔料。「朱印朱肉皆朱堆朱ついしゅ
[名のり]あけみ・あや
[難読]朱欒ザボン朱雀すざく・すじゃく朱鷺とき

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精選版 日本国語大辞典 「朱」の意味・読み・例文・類語

しゅ【朱】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 黄色を含んだ赤。あけ。朱色。また、黄色みを帯びた赤色の顔料。成分は硫化水銀。耐酸・耐アルカリ性で隠蔽(いんぺい)力も大きいが、日光や熱には弱い。有毒。印肉、漆器、絵の具、ゴムなどに用いる。銀朱。
    1. [初出の実例]「碧地者以朱、〈略〉黒地者以白」(出典:続日本紀‐天平宝字六年(762)正月丁未)
    2. 「二の眼は朱(シュ)を解て、鏡の面に洒(そそ)けるが如く」(出典:太平記(14C後)二三)
  3. 赤い色の墨。朱墨。
    1. [初出の実例]「其の簿(ふだ)多し、朱を以て句したる有り」(出典:今昔物語集(1120頃か)七)
  4. ( を用いて書き入れたところから ) 和歌、俳句、習字、文章などを添削すること。また、それによって入れた朱字。→しゅ(朱)を入れる
  5. 義太夫節で、三味線の音譜。太夫の語る床本(ゆかほん)で記入したところからいう。
  6. しゅ(銖)

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普及版 字通 「朱」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 6画

[字音] シュ
[字訓] あか・あけ

[説文解字]
[金文]

[字形] 象形
木の幹の部分に、肥点を加えた形。〔説文〕六上に「赤心の木、柏の屬なり」という。本・末も同じようにその部位を示す指示的な造字法であるから、朱を株部を示す字と解することもできようが、金文においては朱は丹朱の意に用い、朱(しゅふつ)・朱黄(衡)といい、字をまたに作ることがある。は丹朱の製法に関する字であるらしく、西周の金文に、家臣の葬にあたってを賜うた例がある。の穴の部分は、蓋の左右に蒸気抜けの穴のある形で、おそらく朱沙を固めて木に著け、それを薫蒸して水銀を分離するアマルガム精錬法のような方法がとられたのであろう。殷墓の槨室からは朱塗りの明器や、またその朱の雕文がそのまま土に附著して残された花土などが、多く出土している。

[訓義]
1. あか、あけ、丹朱。材料は丹沙、朱沙。漆(うるし)を加えて塗飾する色を(とう)という。
2. 中心の赤い木、松柏の類。
3. 株と通じ、かぶ、木のかぶ、みき。

[古辞書の訓]
名義抄〕朱 アカシ

[声系]
〔説文〕に朱声として珠・・誅・殊・株・など十四字を収める。珠・などは朱の声義をとるものであろう。

[語系]
朱・tjio、赭tjyaは声近く、赭は赤土をいう。赤thjyakは大(人の正面形)に火を加えて修祓する意で、これによって罪が赦されるのである。朱や赤は丹と同じく神聖な色とされた。

[熟語]
朱靄・朱殷・朱帷・朱楹・朱・朱炎・朱鉛・朱夏・朱霞・朱火・朱果・朱華・朱閣・朱干・朱汗・朱柑・朱檻・朱顔・朱・朱羲・朱・朱愚・朱景・朱闕・朱軒・朱弦・朱絃・朱鼓・朱口・朱公・朱砂・朱・朱漆・朱実・朱雀・朱儒・朱襦・朱裳・朱脣・朱塵・朱丹・朱竹・朱邸・朱筆・朱・朱・朱市・朱黻・朱墨・朱明・朱目・朱門・朱陽・朱欄・朱欒・朱・朱輪・朱・朱楼・朱
[下接語]
鉛朱・加朱・画朱・金朱・朱・口朱・霜朱・奪朱・丹朱・堆朱・朱・陶朱・墨朱・藍朱

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改訂新版 世界大百科事典 「朱」の意味・わかりやすい解説

朱 (しゅ)
vermilion

赤色硫化第二水銀HgSの実用名で,水銀朱ともいう。天然には後述のようにシンシャ(辰砂)として産出するが,現在は人造朱が工業生産され,無機顔料である。酸,アルカリに不溶,王水および硫化ナトリウムには可溶である。無機顔料として耐薬品性はすぐれるが,耐光性は中程度で日光に長くさらされると黒変する。密閉反応容器に水銀,硫黄,苛性アルカリを原料として入れ,水蒸気を吹き込みつつ回転させ加熱反応させると,まず黒色の硫化水銀が生成し,次いで赤色硫化第二水銀に変化するが,アルカリをカリウムにするかナトリウムにするかにより,また温度の変化によって,赤から黄までいろいろな色調のものが得られる。これを水洗,ろ過,粉砕して所定の色の顔料を得る。漆器の着色,絵具,朱肉,朱墨に用いられるが高価である。
執筆者: 日本では古来,丹砂,朱砂,真朱,光明砂などと称され,成分の純度,色彩の具合で区別される場合もあるが,つまりは辰砂である。辰砂は中国の湖南省辰州の産が有名でこの名ができた。辰砂は古くから水銀とともに医療等に使用され,粉末にして朱漆とし顔料に用いられた。16世紀中期から中国産その他の辰砂,銀朱(人造朱)が水銀とともに輸入された。辰砂は7世紀末に伊勢,常陸,備前,日向,伊予の諸国に命じ献じさせ,豊後より真朱を貢させた。近世では伊予,豊前等で採取され,大和吉野川上の産は上品と称された。これらのうち辰砂,水銀の産で著名なのは伊勢丹生村(現,三重県多気町)である。人造朱の製法は藤原時代すでに知られたらしいといい,自然朱とともに漆工業発達などにつれ顔料として需要が増し,近世には朱の販売に独占が認められ,朱座の成立をみた。
執筆者:


朱 (しゅ)

義太夫節の奏法譜。狭義には義太夫三味線の譜を指し,朱章ともいう。浄瑠璃本などに朱で記入するところから発した名称。古来,種々の記譜法があったが,現在,一般に使用されているのは鶴沢清七が1781年(天明1)に創案したのを,幕末ごろ改めたもの。三味線の勘所(かんどころ)(左手の指でおさえる場所)を速記しやすい変体仮名で表し,補助符号,略符などを併用する。一方,太夫が語る文字譜や胡麻(ごま)章は墨で記すので,墨譜(ぼくふ)とか黒朱(くろしゆ)とも呼ぶ。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「朱」の意味・わかりやすい解説


しゅ
vermilion

天然には辰砂(しんしゃ)として産する。紀元前から使用されていた赤色顔料。水銀朱ともいう。硫化水銀(Ⅱ)HgSからできているが、最近ではカドミウムレッドCd(SSe)やモリブデンレッド(クロムバーミリオン)Pb(CrMo)O4などで置き換えられ、用途は狭くなっている。したがって、バーミリオンというとこのクロムバーミリオンと混同されるので、朱とよぶほうがよい。可溶性の水銀塩に硫化ナトリウムNa2Sなどを加え、生成した黒色の沈殿HgSを、アンモニア水中で、約一昼夜攪拌(かくはん)すると朱色に変色し、目的物が得られる。日本では漆の着色にもっとも多く使用され、また、一部は朱肉、プラスチックの着色、あるいは独得の赤の色調が珍重され油絵の具に使用されている。硫化水銀カドミウム(CdHg)Sの固溶体として、色調を調節することもある。

[大塚 淳]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「朱」の意味・わかりやすい解説


しゅ
vermilion; Chinese red

硫化第二水銀 HgSを主成分とする赤色系の顔料。天然には辰砂として産する。普通,硫化水素,稀酸およびアルカリに耐性があるが,硝酸と塩酸との混酸で溶解する。日光には比較的安定しているが,熱には弱い。有毒。印肉用,絵具,漆器,ゴムなどの着色用に使われるが,現在では高価なため使用量は減少している。中国では土器の彩色,殷代には甲骨文を記した亀甲にも塗ったものがある。日本では,縄文時代の土器や骨器の彩色に使われた跡がある。古墳時代には,墳墓内部に呪術的意味や防腐剤として大量に使われた跡もある。

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百科事典マイペディア 「朱」の意味・わかりやすい解説

朱【しゅ】

古くから使われてきた赤色顔料。主成分は赤色硫化水銀HgS。天然にシンシャとして産するが,人工的に水銀と硫黄から黒色硫化水銀をつくり,これを加熱・昇華させて得る。絵具,印肉,漆器,塗料などに使われるが,有毒で高価なため代用品も多い。
→関連項目弁柄/紅殻

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化学辞典 第2版 「朱」の解説


シュ
vermilion

銀朱ともいう.硫化水銀(Ⅱ)(α態)を成分とする赤色顔料.日光,熱に弱く,かつ有毒.高価で印肉用,絵の具などに少量使われるのみである.水銀と硫黄からつくられている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「朱」の解説


しゅ

江戸時代の金貨の単位
1両の16分の1。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【円】より

…銭・厘を補助単位とする十進法の計算体系をもつ。それまで流通の江戸期金貨には1601年(慶長6)制定の両・分(ぶ)・朱という単位が使用されていた。1両=4分,1分=4朱の四進法であり,鋳貨の形態にも小判形と方形との2種があった。…

【赤】より

…まず中国の字典《説文(せつもん)解字》によると,赤は〈南方の色なり〉という。《淮南子(えなんじ)》天文訓は天の五星を説明して〈南方は火なり,その帝は炎帝……その獣は朱鳥〉という。仏座や墓室に見られる四神の図のうち,南方に朱雀(朱鳥)が配されるのは,それが太陽(天の火)の方角だからである。…

【絵具】より

…緑色の緑青も同じく銅の化合物で,原料は孔雀石である。赤色には朱が広く使われた。朱砂は天然に産する硫化水銀を砕いたもので,とくに良質なものを中国の産地名にちなみ辰砂(しんしや)と呼んで,そのまま顔料名ともなっている。…

【塗料】より

…顔料の種類も増えており,前3000年ころにはエジプト青(天然物を焼いて得られるケイ酸銅)が開発されている。また天然シンシャから得られる朱(硫化水銀),マラカイト(炭酸銅)も知られていた。ギリシア文明ではもっと広範囲に顔料を用いた。…

【義太夫節】より

…そうしたなかで,個人様式としての風の伝承が重視されたり,伝書類の刊行も多くなる。鶴沢清七が現行の〈朱〉(朱章)のもとになるものを創案して曲を書きとどめるようにもなる。また,18世紀末には植村文楽軒の文楽芝居が出現し,幕末には義太夫節による人形芝居興行の代表的存在となった。…

【鶴沢清七】より

…引退後3世鶴沢友次郎を襲名。現在使用されている三味線の(奏法譜)のもととなる譜を,野崎検校門弟信都(のぶいち)の《律呂三十六声麓の塵》の影響下に創案し,後世の三味線方から崇拝されている。1781年(天明1)の《儀太夫節合控張》ほか6冊が最初の朱の例である。…

※「朱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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