デジタル大辞泉 「ジン」の意味・読み・例文・類語
ジン(gin)
[類語]酒・
翻訳|gin
大麦麦芽やトウモロコシなどの穀物を原料にした蒸留酒に、ジュニパーベリー(セイヨウネズの実)を加えて製造する無色透明の酒。英国やオランダなど欧州を中心に生産している。日本でも近年、小規模メーカーが手がける「クラフトジン」が増えつつある。地元産の果物や草の根、木の皮などを加えた多様な香り付けが特長。カクテルのベースやソーダ割り、お湯割りなどの楽しみ方もある。
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ネズ(杜松)の実(ジュニパー・ベリーjuniper berry)の香りをもった蒸留酒。オランダで最初につくられたスピリッツであり、ジンの語源もオランダ語のジュニーバjeneverからきている。
[原 昌道]
17世紀の中ごろ、オランダのライデン大学のシルビウス教授が熱病の治療薬をつくる目的で、利尿剤として知られたネズの実をアルコールで浸漬(しんし)し、精油をとり、これを蒸留した。この酒は薬効があるのでgenièvreまたはgenièvreと名づけられ、ライデン市内の薬局で売り出された。その後特有の芳香が人々の間に知られ、薬より酒としてオランダ全土に広がり、名前もGeneva, Geneverとなった。さらにイギリスではginとなった。その後イギリスで発達したのは、17世紀末にオランダから迎えられてイギリスの王となったウィリアム3世が、ジンをイギリス国内に普及させるため、フランスから輸入されているワイン、ブランデーに重い関税を課す政策をとり、急速にイギリス国内に広めたことによる。以後、連続蒸留機の導入により、ロンドンを中心に、くせのないすっきりした現在のロンドンジンの基がつくられた。現在ではアメリカでも大量につくられ、日本、そのほかの国でも生産されている。
[原 昌道]
原料はおもにライムギとトウモロコシで、蒸煮(じょうしゃ)後、麦芽を加えて糖化し、その発酵液を蒸留する。留液を50~60%程度に水で薄め、これにネズの実などの香料植物を刻んで加えるか、蒸留釜(がま)の上部に設けられた室(ジンヘッド)の棚に香料植物を置き、この室にアルコール蒸気が通過するようにして蒸留する。このため留液はネズ特有の香気をもったものになる。そのほか、香料植物の精油を留液に加える方法もある。またジンエッセンスなどをアルコールに加えて製品化することも行われ、安価なジンにはこのような製法のジンが多い。ジンの成分は一般にアルコール分37.5~47.5%、エキス分0.3%以下である。
[原 昌道]
(1)オランダジン 原料にトウモロコシやライムギを使い、麦芽で糖化後、発酵させる。これを単式蒸留機で蒸留を繰り返し(普通は3回)、精留する。この留液には、穀粒からくる特有の香味が残っている。留液は通常アルコール分が50%になるように水を加えて薄め、これとネズの実などの香料といっしょに蒸留して製造する。オランダジンは、発酵したもろみの蒸留に単式蒸留機を使っているため、原料の香りが残っており、これにネズの実の香りが加わって複雑な香りを構成するから、ロンドンジンよりも香りが強く、味は重い。なおオランダジンの一種にシュナップスがある。これは、本来はポテトスピリッツにネズの実をつけて蒸留、抽出したエキスを用いてつくられた酒である。シュナップスはドイツ語で「グラス1杯の蒸留酒」を意味し、アルコールの強いジンのことをいうが、最近はジン類似の下級のスピリッツをさす。
(2)ロンドンジン 連続蒸留機で蒸留し、不純物をほとんど含まない無臭のアルコールをつくる。この点がオランダジンと異なる。次に留液を60%程度に薄め、ネズの実などの香料植物を詰めたジンヘッドをもつ蒸留釜に入れて蒸留する。初留と後留を除き、中留部の香りのよい部分を採取して製品とする。ロンドンジンはオランダジンに比べて香気が軽く、風味は爽快(そうかい)である。
(3)オールドトムジン ロンドンジンに1~2%の砂糖を加え、わずかに甘味をつけたものである。甘味をつけたものにはこのほか、ドライジンとオールドトムジンの中間ぐらいの味のプリマスジン、オレンジの香りのついたオレンジジン、レモンの香りのついたレモンジンなどがある。なおエキス分が2%以上になるとリキュールになる。
(4)アメリカジン アメリカの法律によれば、ジンの製造には留液のアルコール分が95%以上のニュートラルスピリッツを用いなければならない。それゆえ無色・無臭のアルコールがジン製造に使用される。したがって香味はロンドンジンよりもさらに軽い。
(5)シュタインヘーガー ドイツのウェストファーレン地方のシュタインハーゲンでつくられる。ネズの実は20%程度の糖分を含むので、これを発酵させて蒸留し、ほかのアルコールに加えて再蒸留し、中留分を製品とする。比較的香りの温和なタイプである。
(6)ドライジン 甘くないジン。本来は、オールドトムジンに対抗して、甘くないロンドンジンをドライジンといっていたが、一般には、オランダジンやアメリカジンなどのなかの甘くないジンをドライジンと称している。
[原 昌道]
穀類を原料とする蒸留酒の一種。いくつかの種類があるが,オランダ・ジン(ジェネバgeneva)とロンドン・ジンが代表的なもので,いずれもジュニパーベリー(杜松子(としようし)。ネズの実)の独特の香味をもつ。前者は17世紀半ばライデン大学のシルビウスによって創製された。genevaの名はフランス語のgenièvre(杜松子)から出ている。17世紀末ウィリアム3世時代にイギリスに伝えられたジェネバは省略して〈ジン〉と呼ばれた。ここにロンドン・ジンが生まれ,さらに世界各国にひろまった。ジェネバは,ライムギやトウモロコシに大麦の麦芽を加えて糖化発酵させ,このもろみをポットスチル(単式蒸留機)で蒸留し,この蒸留液にジュニパーベリーその他のボタニカル(草根木皮)を加えてもう一度蒸留し,短期間貯蔵したのち製品とする。これに対してロンドン・ジンは,もろみをパテントスチル(連続蒸留機)で蒸留してスピリッツをつくり,これをアルコール分60%程度にまで水で薄め,ジュニパーベリー,コリアンダーその他のボタニカルを加えて,ジンスチルと呼ぶ専用蒸留機で蒸留し,貯蔵を行わずにすぐ製品とする。ジェネバはアルコール分45%,淡黄色で重厚な風味があり,ストレートで飲まれる。ロンドン・ジンはアルコール分40~50%,無色,辛口でドライ・ジンとも呼ばれ,ストレートよりはジンフィズ,ジントニックなど,カクテルの基酒として広く用いられる。ドイツでつくられるシュタインヘーガーは,発酵前にジュニパーベリーを加えて蒸留するもので,マイルドな味をもつ。また,オールドトム・ジンというのは,ドライ・ジンに1~2%の砂糖を加えて甘みをもたせたもの,プリマス・ジンはその中間的な性格で,強いにおいをもつ。なお,スロー・ジン,レモン・ジンなどジンと呼ぶリキュールの一群があるが,これらはロンドン・ジンと同じ原料でつくったスピリッツにスロー(スモモの一種)やレモン・ピール(果皮)を浸漬したものである。
執筆者:大塚 謙一 17世紀末にオランダからイギリスに流入したジンは,アン女王治下の同国で大流行した。当時のイギリスは豊作続きで原料の穀類が安かったうえ,牛乳や茶は輸送費,保存料,関税などの関係でなお高価であり,ビールもホップが安くなかったために,ジンはたちまち貧民の飲料としてひろまった。しかし,アルコール中毒の弊害が目だったので,1736年に酒税を引き上げる法律が通過したが,これに反対する暴動が起こって成功しなかった。51年にいたってようやく〈ジン規制法〉が成立,さしもの〈ジン時代〉に終止符が打たれた。
執筆者:川北 稔
アラブ世界で信じられた,神の創造になる思考力ある生物。精霊,霊鬼とも訳される。ユダヤ教・キリスト教的背景とは関係なく,俗信として古くからその存在が信じられていたが,コーランの中でもその存在が認められていることにより,イスラム期以降,天使やサタン(シャイターン)の解釈と絡まりあってそのイメージはますます豊富なものとなった。ふだんは不可視の存在であるが,凝結すると視認でき,煙や雲のような気体状からやがて固体となって顕現する。奇怪な動物のような姿,とくに蛇の形をとるが,変幻自在である。煙の出ない火(または炎)から創造され,その誕生は,人間の祖で土から創造されたアダムより2000年も古いとされる。知力・体力ともに人間より優れ,知識量,創作能力,労働の耐久力に関するさまざまな逸話がある。ただソロモンにだけは対抗できなかったとされ,そのためジンの害悪からの厄よけにソロモンの名を用いることがある。人間と居住空間を同じくし,いたずら好きで,時には人間を死にすら至らせる霊鬼であり,とくにその頭領がイブリースIblīs(サタンのひとり)だとして恐れるのが一般人のジン観である。ジンに取り憑かれた人をマジュヌーンmajnūnといい,その語は後にもっぱら〈狂人〉の意味で用いられるようになったが,取り憑かれたジンの種類によってその特徴は異なる。マジュヌーンの一般的特徴は雄弁多才なことだとされ,詩人,歌手,巫女,占い師,説教師などは触霊によるとみられた。しかしジンの中にはムスリムのジンもあるので,こうした善性のジンに啓発された者は,ムスリム社会にとっても益をもたらすのであり,狂人が聖者扱いされる例がみられるのは,この観念の反映であった。人間に害悪を及ぼす悪性ジンは,その威力によってマリード,イフリート,シャイターン,ジン,ジャーンの順で格付けされているが,これらの悪性ジンは骨と死肉を主食とし,シトロン,赤いハト,鉄を忌み嫌い,コーランが読誦されると逃げ出すと信じられてきた。
執筆者:堀内 勝
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報
…コットンジンともいう。摘み取ってきた実綿(みわた)から種子を除くことを綿繰りというが,綿の繊維は種子の表皮に生えていて,手で引き離すにはたいへん手間がかかる。在来の綿繰器は,1対の木製のローラーが近接して枠にはめられていて,一方のローラーに付いているハンドルを回すと,ローラーの端に刻まれたらせん状の歯車により,他方のローラーが反対方向に回転するようになっている。この1対のローラーの間に実綿の繊維をかませると繊維はローラーの間に引き込まれていくが,種子は通り抜けられないので繊維から離され手前に落ちる。…
…(7)その他 ここに区分されるものはおもに外国起源の酒で,洋酒としている文献もある。白蘭地(ブランデー),威士忌(ウィスキー),金酒(ジン),俄斯克(ウォッカ),蘭母酒(ラム)などで,これらのうち烟台の金奨白蘭地は歴史も古く,全国名酒に数えられている。【鈴木 明治】。…
※「ジン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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