精選版 日本国語大辞典 「安・易」の意味・読み・例文・類語
やす・い【安・易】
〘形口〙 やす・し 〘形ク〙
① 物事のなりゆきに障害や不安がない。平穏である。安心していられる。
② らくらくと物事を行なうことができる。容易である。たやすい。
※書紀(720)雄略元年三月(前田本訓)「産腹(はら)易(ヤスキ)者(ひと)は、褌(はかま)を以て体(み)に触(かから)ふに」
③ 責任が軽く自由である。気楽である。
※源氏(1001‐14頃)橋姫「心にまかせて身をやすくもふるまはれず」
④ (「廉」とも書く) 値段が高くなく、金がかからない。他と比べて、質や量のわりに値段が低い。低廉である。安価である。⇔高い。
※蘇悉地羯羅経延喜九年点(909)「価ひ復た最も賤(ヤスカラ)む」
⑤ 格が低い。身分が低い。品質が劣っている。〔観智院本名義抄(1241)〕
⑥ 粗末にあつかうようである。みくびるようである。
⑦ 人品などが下卑(げび)ている。下品である。〔新撰大阪詞大全(1841)〕
※万葉(8C後)四・五八三「つき草の移ろひ安久(やすク)思へかも我が思ふ人の言(こと)も告げ来ぬ」
※枕(10C終)二八「あなづりやすき人ならば後にとてもやりつべけれど」
⑨ ⇒やすくない(安無)
やす‐げ
〘形動〙
やす‐さ
〘名〙
やす【安・易】
(形容詞「やすい」の語幹相当部分)
[1] 〘語素〙
※万葉(8C後)一四・三五〇四「春へ咲く藤の末葉のうら夜須(ヤス)にさ寝る夜そなき児ろをし思(も)へば」
② 名詞や動詞と熟合して、たやすくそうすること、そのようにしがちであることを表わす。「やすうけあい」など。
※天延三年庚申朝光歌合(975)「枝弱み乱れやすなる青柳の糸のたよりに風なより来そ」
③ 名詞と熟合して、その物の値段が安いこと、安くて粗末であることを表わす。「やすもの」「やすやど」「やすね」など。また、金額を表わす語に付いて、ある時点の価格と比べてそれだけ安くなっていることを表わす。「十円安」
[2] 〘名〙 安いこと。安目。
やすき【安・易】
〘名〙 (形容詞「やすし」の連体形を名詞に用いたもの)
※仮名草子・浮世物語(1665頃)三「安(ヤス)きに居て危きを忘るる事なかれと言へり」
② まったく心配のない安定した状態であること。激しい変化がないこと。
※読本・春雨物語(1808)天津処女「本国の備前にくだりて、水害を除き、民を安きに置れし功労もありしかどとて」
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