(読み)ホノオ

デジタル大辞泉 「炎」の意味・読み・例文・類語

ほ‐の‐お〔‐ほ〕【炎/×焔】

《「の穂」の意》
気体燃焼したときの、熱と光を発している部分。液体・固体では、燃焼によって一部が気化し、反応している。ふつう最下部の炎心、輝きの強い内炎、その外にあり完全燃焼している外炎の三つに分けられ、温度は外炎内側で最も高い。火炎。「真っ赤な―が上がる」
ねたみ・怒り・恋情など、心中に燃え立つ激しい感情をたとえていう語。ほむら。「嫉妬しっとの―に狂う」
[類語](1ほむら火炎かえん光炎こうえん紅炎こうえん火柱ひばしら火先ほさき火の気火気種火火種口火発火点火着火火付き火加減火持ち残り火おき燠火おきび埋み火炭火火の粉火花火玉花火焚き火迎え火送り火野火

ほ‐むら【炎/×焔】

《「むら」の意》
ほのお。火炎。「燃え盛る―」
ねたみ・怒りなどの激しい感情や欲望で燃えたつ心をたとえていう語。「劣情の―」「瞋恚しんいの―」
[類語]ほのお火炎かえん光炎こうえん紅炎こうえん火柱ひばしら火先ほさき火の気火気種火火種口火発火点火着火火付き火加減火持ち残り火おき燠火おきび埋み火炭火火の粉火花火玉花火焚き火迎え火送り火野火

えん【炎】[漢字項目]

常用漢字] [音]エン(呉)(漢) [訓]ほのお ほむら
ほのお。「火炎外炎内炎余炎
燃え上がる。「炎炎炎上
ほのおのように激しい感情。「気炎情炎
燃えるように熱い。「炎暑炎天炎熱
体の局部に熱や痛みの症状を起こすこと。炎症。「胃炎筋炎肺炎結膜炎
[難読]陽炎かげろう

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精選版 日本国語大辞典 「炎」の意味・読み・例文・類語

ほ‐の‐お‥ほ【炎】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「火の穂」の意 )
  2. 赤く燃えたつ火。ろうそくなどの小さい火から、火事、地獄の火などの大きなものにまでいう。可燃性気体が、酸素や空気などの酸化性気体と燃焼反応を起こし光と熱を発生している状態。固体や液体の燃料でも炎を出すことがあるが、この場合は発生する熱のために可燃性の気体が出ているのである。ほむら。火焔。
    1. [初出の実例]「大地を 火穂(ほのほ)と踏みて」(出典:万葉集(8C後)一三・三三四四)
  3. 恨みや怒りまたは嫉妬の情で心が激するのを燃えたつ火にたとえていう語。
    1. [初出の実例]「ひとり居て焦がるる胸の苦しきに思ひ余れるほのをとぞ見し」(出典:源氏物語(1001‐14頃)真木柱)

えん【炎・焔】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ほのお。ほむら。
    1. [初出の実例]「火光は湿を帯ひて焔(エン)青く影(えい)暗く」(出典:花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一)
  3. 炎症。多く語素的に用いる。「盲腸炎」「肺炎」「扁桃腺炎」など。
    1. [初出の実例]「Rhochialgitis 脊椎痛ノ刺痛又炎」(出典:医語類聚(1872)〈奥山虎章〉)

炎の語誌

→「いえん(胃炎)」の語誌


ほ‐むら【炎・焔】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「火群(ほむら)」の意 )
  2. ほのお。火炎。
    1. [初出の実例]「火炎(ホムラ)盛りなる時に、生める児」(出典:日本書紀(720)神代下(兼方本訓))
  3. 転じて、心中に燃えたつ怨み、怒り、嫉妬、または欲望、情熱などのたとえ。
    1. [初出の実例]「人なしし胸のちぶさをほむらにてやく墨染の衣きよ君〈としのぶ母〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)哀傷・一二九四)

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普及版 字通 「炎」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

[字音] エン・タン
[字訓] ほのお

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
火+火。火炎の意をあらわす。〔説文〕十上に「火光上るなり」とみえる。

[訓義]
1. ほのお、ほむら。
2. もえる、やく、さかん、あつい。

[古辞書の訓]
〔字鏡集〕炎 ホノホ・ヒノハナ・アツシ・カゲロフ

[部首]
〔説文〕になど七字、〔玉〕に九字を属する。は炎の形声字。

[声系]
〔説文〕に炎声として・啖・談・(せん)・(こつ)など十五字を録する。は会意とみるべきであろう。

[語系]
炎・jiamは同声、は〔説文〕に「火行(めぐ)ることにしてたるなり」という。

[熟語]
炎靄・炎威・炎燠・炎鬱・炎裔・炎炎・炎・炎夏・炎火・炎赫・炎旱・炎漢・炎・炎気・炎暉・炎徼・炎光・炎荒・炎鑠・炎暑・炎・炎蒸・炎上・炎燧・炎節・炎天・炎土・炎毒・炎熱・炎風・炎氛・炎門・炎・炎陽・炎・炎涼・炎烈
[下接語]
威炎・火炎・赫炎・気炎・光炎・残炎・焦炎・余炎・陽炎・涼炎

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「炎」の意味・わかりやすい解説


ほのお
flame

「焔」とも書く。2種以上の気体が反応して熱と光を発している状態をいい、火炎ともいう。たとえば、家庭用のガスコンロの炎は、都市ガスの主成分の炭化水素や一酸化炭素の気体が空気中の酸素との燃焼反応によって生ずるものである。ガソリンアルコールのような液体、また木材や石炭などの固体の燃焼でも炎を生ずるが、これは液面でその成分が気化したり、固体中の可燃性成分が揮発して気体となり、反応して炎を生ずるのである。

 ガスバーナーなどではあらかじめ可燃性成分と空気を混合しておいて、爆発的に燃焼させる予混炎であるのに対し、ろうそくなどの炎では、炎の中へ外側の空気が拡散してきて燃焼するので拡散炎diffusion flameという。

 バーナーなどの炎は、一般に構造をもっており、強く輝いている部分と、輝きの弱い部分がある。また、バーナーの空気の供給量を調節すると炎の色が変化し、多いときは青くなり、少なくなると赤みを帯びてくる(空気孔を閉じると拡散炎となる)。炎の構造は、炎心、内炎、外炎の三つに分けられる。炎心は、炎の最下部であり、まだ燃焼は始まっていない。その上の部分の内炎は燃焼のおこり始めた部分であり、たとえば、ガスバーナーでは、一酸化炭素や水素など未燃焼成分が多く、さらに炭化水素の分解によって生じた炭素の微粒子などを含んでおり、炎の色は濃く、外炎と比べて温度は低く300℃程度である。内炎の外側が外炎で、この部分では燃料ガスと空気がよく混ざって混合し、完全燃焼するので、炎の色も淡く、温度も1500℃程度の高さとなる。炎でもっとも温度の高いところは、外炎の内側で、内炎の頂点のすこし上のところになる。

 内炎は一酸化炭素、水素、炭素などのような還元性物質で満たされているので、この部分では還元反応がおこりやすく還元炎という。外炎は、高温酸素などの酸化性物質があり、酸化反応がおこりやすく、酸化炎という。

 通常の都市ガスの炎では空気を利用しているが、酸素‐水素あるいは酸素‐アセチレンなどのような炎を利用すると、きわめて高い温度が得られ、前者では約2500℃、後者では約3000℃が得られる。

 炎を利用した分析法には、炎色反応、溶球試験吹管分析などがある。

[中原勝儼]

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百科事典マイペディア 「炎」の意味・わかりやすい解説

炎【ほのお】

2種の気体が相接して化学反応を起こし,熱と光とを発する部分をいう。普通空気中の酸素によって燃焼するときに見られるが,塩素ガス中で水素が反応して炎を生ずる場合などもある。固体,液体などが燃えるときに炎を生ずることもあるが,これは蒸発,分解などによって可燃性気体を生ずるため。ブンゼンバーナーなどで見られるガス炎は,一次空気(あらかじめ燃料ガスに混合された空気)によって燃焼する内炎と,一次空気,二次空気(炎の外部から供給される空気)の両者によって燃焼する外炎とからなる。前者は不完全燃焼なので温度が低く還元性(還元炎という)で,炭素粒が発光して明るく,後者は完全燃焼で温度が高く酸化性(酸化炎という)でほとんど無色。燃料ガスによって最高温度は異なり,石炭ガスで約2200℃,酸水素炎で約2500℃,酸素アセチレン炎で約3000℃。
→関連項目還元炎酸化炎

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「炎」の意味・わかりやすい解説


ほのお
flame

酸素を連続的に補給しながら可燃性の気体を燃焼させると,ほぼ一定の形の熱と光とを発する定常的な状態が出現する。この状態を炎という。ろうそくの炎では,酸素は外側の空気が炎の中へ拡散することにより補給されるので,この種の炎を拡散炎という。これに対してブンゼンバーナなどでは空気と燃料ガスは炎に入る前に混合し,炎の性質すなわち熱,光,気体組成などは下から順に層状に変る。したがって,この炎を層流炎という。層流炎では内炎と外炎が明瞭に分れ,その2つが円錐状の層となって重なっている。内炎は未反応ガスとその前面の激しい燃焼部 (反応層) から成り,多くの遊離基を含む。外炎は酸化炎といわれ,酸化作用が行われている。

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デジタル大辞泉プラス 「炎」の解説

炎〔曲名〕

日本のポピュラー音楽。「ほむら」と読む。歌は女性歌手、LiSA。作詞:梶浦由記、LiSA、作曲:梶浦由記。2020年発売。劇場版アニメ「鬼滅の刃 無限列車編」の主題歌。第62回日本レコード大賞受賞。

炎(ほむら)〔キャラクター〕

日本のテレビアニメ『機巧(からくり)奇傳ヒヲウ戦記』(2000-2001)に登場するからくりロボット。全高30尺。操縦者はヒヲウ、シン。

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