(読み)サ

デジタル大辞泉の解説

さ【然】

[副]すでにある事物・状態などをうけて、それを指示する語。そのように。そう。
「これのみは余りに深く我心に彫りつけられたれば―はあらじと思えど」〈鴎外舞姫
「おまへたちも、必ず―思(おぼ)すゆゑ侍らむかし」〈更級

し‐か【然/×爾】

《指示代名詞「」+接尾語」から》
[副]そのように。さように。
「あいなかりける心くらべどもかな、我は―隔つる心もなかりき」〈・夕顔〉
「生あるもの、死の近き事を知らざる事、牛、既に―なり」〈徒然・九三〉
[感]肯定して相づちをうつときに用いる。そのとおり。そう。
「―、まことに侍り」〈落窪・三〉

ぜん【然】

[接尾]名詞に付いて、そのもののようなようすであるということを表す。「紳士とした人」

ぜん【然】[漢字項目]

[音]ゼン(漢) ネン(呉) [訓]しかり しかるに しかし しかも しか さ さる
学習漢字]4年
〈ゼン〉
ほかでもなく、そうなっている。そのとおり。しかり。「自然全然当然同然必然本然未然
他の語に付けて状態を表す語。「唖然(あぜん)隠然俄然(がぜん)愕然(がくぜん)毅然(きぜん)厳然公然忽然(こつぜん)渾然(こんぜん)燦然(さんぜん)釈然悄然(しょうぜん)騒然断然超然陶然突然漠然憤然平然猛然歴然
〈ネン〉に同じ。「寂然(じゃくねん)天然本然黙然
[名のり]のり
[難読]然様(さよう)然然(しかじか)徒然(つれづれ)

ねん【然】[漢字項目]

ぜん

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

大辞林 第三版の解説

さ【然】

( 副 )
前に示されていることを受けて、その事態を示す語。そう。そのように。 「 -思おぼしたり/源氏 桐壺」 〔平安時代以後にみられる語〕 → さこそさのみさだにさはさばかりさもさらで

ぜん【然】

( 接尾 )
名詞に付いて、いかにもそのようなさまの意を表す。 「学者-としている」

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

精選版 日本国語大辞典の解説

さ【然】

〘副〙
① 文脈上または心理的にすでに存する事物事態を、実際的に指示する。そのように。そんなに。そう。
※竹取(9C末‐10C初)「いとゐておはしましがたくや侍らんと奏す。みかどなどかさあらん、猶ゐておはしまさんとて」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「この折の後見なかめるを、添臥(そひぶし)にも、と催させ給ひければ、さ思したり」
② 文脈上または心理的に問題になっていることの、性質や程度を抽象的に指示する語。→さるべしさほど
※古今(905‐914)雑上・八七四・詞書「かめをおまへにもていでて、ともかくも言はずなりにければ、つかひのかへりきて、さなんありつると言ひければ」
[語誌](1)奈良時代には「しか」が主流で、「さ」は「さて」や「さても」のように複合した形でしかみえない。平安時代に入っても、和歌については「しか」が優勢で、物語などの散文で「さ」が発達してから和歌にも浸透し、一二世紀から一三世紀にかけて用例が激増した。それに対し、「しか」は漢文訓読文や和漢混交文に残るだけとなる。
(2)室町時代後期になると「さう」の例が見えはじめ、「さ」で表現すべきところを次第に「さう」で表現するようになる。
(3)現代では「そう」を用い、「さ」は「さよう」「さほど」などの複合語として残るのみで、単独では用いない。

さわれ さはれ【然】

〘副〙 (副詞「さ」に、助詞「は」とラ変動詞「あり」の命令形が付いた「さはあれ」が変化したもの) そうであっても。それはともかく。ままよ。さもあらばあれ。さまれ。さばれ。
※蜻蛉(974頃)中「つごもりより、なにごこちにかあらん、そこはかとなくいとくるしけれど、さはれとのみおもふ」
※宇治拾遺(1221頃)一二「とてもかくても、さはれ、一矢射てこそは、くらはれ侍らめ」

ぜん【然】

〘接尾〙 名詞または形容動詞語幹に付いて、まさにそのもののような状態や様子であることを表わす。
※浄瑠璃・蝉丸(1693頃)一「くんやくの声うばふの美きんきんぜんと悦びて、君がみかりを待がほにそらとぶ鳥も御車に」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「お嬢様然とした風をしてゐるけれども」

そ【然】

〘副〙 そのように。そう。
四河入海(17C前)九「そでもない事をそであると云て」

そう さう【然】

[1] 〘副〙 (「さ(然)」の変化した語)
① (前の語・文脈などを受けて) そのように。そのようで。
※両足院本周易抄(1477)四「天道は終れば始まるぞ。寒去れば暖になる様にぞ。人もさうぞ」
※虎明本狂言・鍋八撥(室町末‐近世初)「身共はあきんどじゃ。そういふてしかとたつまひか」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「『本田は一等上ったと云ふぢゃないか』『然(サ)うださうだ』」
② (連用修飾語として用いる時、その被修飾語を省略してその意味を含める。たとえば「そう多くは」「そう安くは」の「多く」「安く」などが省略される形) そのように…の状態。
※談義本・根無草(1763‐69)三「『五文にまけろ』〈略〉『〈略〉。盗物では有るまいし、半分殻(から)でもそふは売らない』」
③ 何かを思い出したり、相手のことばに応答したりする時に感動詞のように用いる。「そう」の指示内容は必ずしも明確に文面に表われない。
※歌舞伎・幼稚子敵討(1753)六「『それ、見やしゃったかの〈略〉』『イヤイヤ、さふじゃさふじゃ』」
[2] 〘感動〙
① 相手のことばに対する肯定や問い返し、または半信半疑の気持、感動などを表わす。
※名語記(1275)四「詞の返答に、しか也と云心をそうといへり、心、如何。これはそといふを、そうといひなせる也。そはそのの反」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「『アノー先刻此郵便が』『ア、サウ、何処から来たんだ』」
② すぐ前に述べた自分のことばを確かめたりそれから思いついたりする気持ではさむ。
※夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第二部「俺がお前に話してるやうなことを、寿平次さんはお里さんに話してるにちがひないよ。さうさな、ずっと古いことは俺にもまあよく分らないが」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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