(読み)メイ

デジタル大辞泉 「命」の意味・読み・例文・類語

めい【命】[漢字項目]

[音]メイ(漢) ミョウ(ミャウ)(呉) [訓]いのち みこと
学習漢字]3年
〈メイ〉
いのち。「命脈延命懸命身命人命生命絶命存命短命致命長命余命落命露命
言いつける。言いつけ。「命令違命厳命抗命使命待命勅命特命任命拝命復命奔命用命
名づける。「命名
名を記した戸籍。「亡命
天や神の意志。めぐり合わせ。「運命革命宿命知命天命薄命非命本命
目あて。「命中
〈ミョウ〉
いのち。「帰命寿命定命じょうみょう不惜身命ふしゃくしんみょう
言いつけ。「宣命
〈いのち〉「命綱
[名のり]あきら・かた・とし・な・なが・のぶ・のり・まこと・み・みち・もり・や・よし・より

めい【命】

いのち。生命。「が果てる」「を捨てる」
命令。「を帯びる」「に背く」
運命。「は天にあり」
[類語](2命令言い付けれい指令下命指示指図さしず号令発令沙汰さた主命君命上意達し威令厳令厳命

いのち【命】

生物が生きていくためのもとの力となるもの。生命。「にかかわる病気」「をとりとめる」「ある限り」
生きている間。生涯一生。「短いを終える」
寿命。「が延びる」
最も大切なもの。唯一のよりどころ。そのものの真髄。「と頼む」「商売信用だ」
運命。天命。
「年ごとにあひ見ることは―にて老いの数そふ秋の夜の月」〈風雅・雑上〉
近世遊里などで、相愛の男女が互い二の腕に「命」の一字、または「誰々命」と入れ墨をすること。また、その文字。
[類語](1せい・しょう生命人命一命身命しんめい露命命脈息の根息の玉の緒

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「命」の意味・読み・例文・類語

いのち【命】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 人間や生物が生まれてから死ぬまでの、生存の持続。
    1. (イ) 継続されるべき、ただし限りのある生の力。生命。また、寿命。
      1. [初出の実例]「伊能知(イノチ)の、全けむ人は」(出典:古事記(712)中・歌謡)
    2. (ロ) 生まれてから死ぬまでの期間。生涯。一生。
      1. [初出の実例]「天蒼氏(てんそうし)の賜(たまもの)すくなくうまれ出たるなれば〈略〉いのちのうちに富貴を得る事なし」(出典:読本・雨月物語(1776)貧福論)
  3. さまざまの角度からとらえた生存の意義。
    1. (イ) 天から与えられた定め。運命。天命。〔観智院本名義抄(1241)〕
    2. (ロ) 生存をつづけるための、物的または心的なよりどころ。唯一のたのみ。生き甲斐。→命にて
      1. [初出の実例]「常もなき夏の草葉に置く露をいのちとたのむ蝉のはかなさ〈よみ人しらず〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)夏・一九三)
    3. (ハ) 物事をそのものたらしめる本質的な価値。そのもの独特のよさ。真髄。また、一番大切なところ。
      1. [初出の実例]「能をせん程の者の、和才あらば申楽を作らん事易かるべし。これ此道のいのち也」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)三)
    4. (ニ) 人の世の中に生きつづける、物事、作品などの価値。
      1. [初出の実例]「詩の命(イノチ)は事実より確かです」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉六)
  4. ( 生きるよりどころの意味から特殊化して ) 一生をそれに捧げてもよい誠意を示す証拠立ての文字、また、転じてその語。多く遊里に行なわれた習慣で、相愛の男女が互いに二の腕へ「命」の一字、または「誰々命」と入れ墨して、二世も三世もと誓った。
    1. [初出の実例]「命(イノチ)の字を名の下にしるす事、古代よりありて」(出典:評判記色道大鏡(1678)六)

めい【命】

  1. 〘 名詞 〙
  2. まわりあわせ。運命。天命。
    1. [初出の実例]「孔子曰、受之於天、不変易者形也、受之於命、不請益者寿也」(出典:万葉集(8C後)五・沈痾自哀文)
    2. 「命をしれるものは天を恨みず。をのれを知者は人を不恨と」(出典:十訓抄(1252)九)
    3. [その他の文献]〔論語‐子罕〕
  3. いのち。生命。寿命。
    1. [初出の実例]「つはもののためにめいをはり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)祭の使)
    2. [その他の文献]〔論語‐憲問〕
  4. 仰せ。いいつけ。命令。
    1. [初出の実例]「湏達を七日が間、舎衛国の王と可為し〈略〉国の大小の事、湏達が命に可随し」(出典:今昔物語集(1120頃か)一)
    2. 「主君の命をおもんじて、私の命(いのち)をかろんず」(出典:平家物語(13C前)一二)
    3. [その他の文献]〔書経‐仲虺之誥〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「命」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

[字音] メイ・ミョウ(ミャウ)
[字訓] いいつけ・いのち・うまれつき・さだめ

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
令(れい)+口。令は礼帽を著けて、いて神の啓示を受ける形。口は祝詞を収める器の(さい)。神に祈って、その啓示として与えられるものを命という。〔説文〕二上に「ふなり。口に從ひ、令に從ふ」とし、口を以て使令する意とするが、もと神意を意味する字である。卜文・金文に令を命の意に用い、令がその初文。周初の金文〔大盂鼎(だいうてい)〕に「天のする大令(命)を受(さづ)けらる」とあり、のち〔賢(けんき)〕に「、事を命ず」のように、命の字を用いる。天命の思想は〔大盂鼎〕をはじめ、〔也(やき)〕などにも「顯たる受令(命)」とあって、周王朝創建の理念として掲げられたものであった。人の寿夭も天与のものであるから、列国期の金文に「永命眉壽」を祈る語を著けるものが多い。金文にまた賜与の意に用い、〔献(けんき)〕「厥(そ)の臣、獻(人名)に金車を令(たま)ふ」のように用いる。天の命ずるところであるから、人為の及ばないところをすべて命といい、君子は命を知るべきものとされた。

[訓義]
1. おおせ、いいつけ、神のお告げ、おしえ、あたえる。
2. いのち、うまれつき、さが、神よりうけたもの。
3. さだめ、運命、めぐりあわせ。
4. お上のいいつけ、命令、おきて。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕命 ヲシフ・イノチ・ノタマフ・マコト 〔字鏡集〕命 ツカヒ・マコト・ナヅク・ヲシフ・イノチ・イフ・ナ

[語系]
命mieng、令liengはもと一字。周初には大命・受命を大令・受令としるし、令を命の字義に用いる。

[熟語]
命案・命意・命運・命戒・命窮・命・命蹇・命限・命誥・命賜・命士・命氏・命書・命詔・命臣・命数・命世・命秩・命中・命途・命薄・命婦・命服・命分・命脈・命名・命理・命令
[下接語]
俟命・委命・威命・違命・遺命・一命・殞命・運命・永命・延命・捐命・恩命・下命・嘉命・改命・革命・官命・帰命・基命・寄命・貴命・休命・救命・拒命・教命・矯命・業命・命・寓命・君命・眷命・憲命・懸命・顕命・厳命・顧命・抗命・耿命・誥命・国命・佐命・策命・司命・死命・使命・賜命・自命・時命・辞命・失命・主命・殊命・寿命・受命・授命・宿命・駿命・順命・助命・承命・将命・詔命・上命・職命・申命・身命・人命・尽命・正命・生命・制命・性命・旌命・誓命・惜命・絶命・宣命・尊命・存命・大命・待命・短命・誕命・治命・知命・致命・長命・朝命・徴命・命・勅命・通命・定命・帝命・挺命・天命・伝命・特命・内命・任命・拝命・配命・薄命・反命・非命・微命・品命・稟命・符命・賦命・復命・文命・辟命・返命・方命・亡命・本命・奔命・末命・密命・明命・面命・有命・優命・余命・用命・落命・乱命・立命・霊命・禄命

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「命」の意味・わかりやすい解説

命 (めい)
mìng

古代中国で,天が人間に下した命令をいう。天が地上の聖人に天下の統治を命じた天命に対し,広く個人の寿命,運命をさすものとして用いる。この場合,吉福の命をうけるか凶禍の命をうけるかは,その人の行いいかんによって決定されるとの考え方(随命説)が伝統的であった。しかし後漢になると,命は生をうけた時点で決定され,吉凶禍福は個人の主体的努力の及ぶところではないとの宿命論へ展開していく。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【生命】より

…命(いのち)ともいう。〈生物の本質的属性〉と定義することが多いが,この定義はあいまいであり,生命,生物の両概念に関して循環論法的でもある。…

【三命説】より

…中国で,命(運命)に三色すなわち受命と随命と遭命があるとする説。命を分類することは孟子や荘子にすでに見られるが,三命のかたちをとるようになるのは前漢末の緯書に始まり,後漢になってほぼ固定した。…

※「命」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android