(読み)シ(その他表記)finger

翻訳|finger

デジタル大辞泉 「指」の意味・読み・例文・類語

し【指】[漢字項目]

[音](呉)(漢) [訓]ゆび さす
学習漢字]3年
〈シ〉
手足のゆび。「指圧指紋一指屈指十指食指弾指
ゆびさす。さし示す。「指揮指示指数指定指摘指導指標指名指令
〈ゆび〉「指先指輪親指薬指
〈さし(ざし)〉「指図さしず指物脇指わきざし
[名のり]むね

ゆび【指】

手足の末端の5本に枝分かれした部分。もとは手のものをてゆび、足のものをあしゆびとして区別した。動物では4本以下のものもあり、前後肢で数の異なるものもある。および。
[下接語]後ろ指大指親指薬指小指高高たかたか丈高指突き指中指名無し指人差し指紅差し指まむし三つ指
[類語]五指十指三つ指

お‐ゆび【指】

ゆび。および。
「左の―にて強くとらへ」〈読・雨月・夢応の鯉魚〉
親ゆび。おおゆび。
「『…まづこれほどな大きさでおぢゃる』と言ひて―を見する」〈虎明狂・察化

お‐よび【指】

ゆび。
「いとをかしげなる―にとらへて」〈・一五一〉

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精選版 日本国語大辞典 「指」の意味・読み・例文・類語

ゆび【指】

  1. 〘 名詞 〙 人間の手・足の末端の、それぞれ五本に枝分かれしている部分。また、人間以外の動物の、それに相当あるいは類似する部分。および。
    1. [初出の実例]「すぐしてし年をいくらと数ふればゆびもいとなく老いにけるかな」(出典:書陵部本躬恒集(924頃))
    2. 「黒糸の鎧甲に、指(ユビ)のさきまで鏁りたる籠手」(出典:太平記(14C後)一七)

いび【指】

  1. 〘 名詞 〙 「ゆび(指)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「月をさすにいひをのみ見るなどいひ」(出典:ささめごと(1463‐64頃)下)

および【指】

  1. 〘 名詞 〙 ゆび。
    1. [初出の実例]「そこなりける岩に、およびの血して書きつけける」(出典:伊勢物語(10C前)二四)

させ【指】

  1. 〘 名詞 〙 田掻きの牛馬の鼻につけて誘導する竿。させぼう。鼻取竿。→させとり(指取)

し【指】

  1. 〘 名詞 〙 ゆび。〔易経‐説卦〕

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改訂新版 世界大百科事典 「指」の意味・わかりやすい解説

指 (ゆび)
finger

脊椎動物の四肢の末端にあって,ふつう5本以内の数に分かれ,またいくつかに分節した部分。かつては前肢(上肢)のゆびfingerを〈指〉,後肢(下肢)のゆびtoeを〈趾〉と書いたが,現在は指に統一されている。

四足動物の前肢は魚類の胸びれと,後肢は腹びれと相同のものであり,指の起源は古生代の高等硬骨魚であった化石総鰭(そうき)類にさかのぼる。総鰭類の有対(ゆうつい)びれ(胸びれと腹びれ)は,現存の総鰭類であるシーラカンスと同様に,中軸の骨格と筋肉をもちうろこに覆われた柄(え)の部分と,その先に伸びた木の葉状の部分からなっていた。さらにこれらの魚類は,うきぶくろの代りに肺を備え,空気呼吸を可能にするいわゆる内鼻孔をも備えていたことから,こうしたじょうぶな有対びれを使って陸上にはい上がり,空気中でも生活することができたと考えられている。このひれの柄には,基部に1個,その先に2個の大きな骨があり,さらにその先に多くの小さい骨があった。この総鰭類を祖先として進化してきた原始両生類の四肢の構造は,総鰭類の有対びれのそれを受けついだものであった。すなわち,基部の1個の骨は前肢では上腕骨,後肢では大腿骨となり,その先の2個の骨は前肢で橈骨(とうこつ)および尺骨,後肢で脛骨および腓骨と相同のものとみられる。そして,さらにその先にあった多数の骨が原始両生類の前肢の手根骨と指の骨,および後肢の足根骨と指の骨に分化したと考えられている。つまり,祖先の魚類ではひれの広がりを支えていた骨格が,陸生動物になるに当たって物をつかむ器官の骨格として利用されたわけである。そして,この段階ですでに,指の数は前肢・後肢ともに5本ずつであった。

 各指の基部の骨はその先の骨より長かったが,これらが高等四足動物の中手骨(手掌の骨)および中足骨(足底の骨)になった。その先に接続する指骨(狭義の指の骨)は第1指(親指)で,最も短かった。このような手足とその指の構造は,現存の両生類でも,また原始両生類から派生した爬虫類でも,さらに爬虫類から進化した哺乳類でも,基本的に同様である。爬虫類には手足がいわゆる〈ひれあし〉に変形したものが数多いが,そのなかで魚類に似た形態に特殊化した中生代の魚竜類は例外で,指数・指骨数ともに著しく増加していた。1本の指にある指骨の数は種類によって多少とも異なるが,その数を第1指から第5指まで順にかぞえて並べたものを〈指骨式〉という。両生類の指骨はふつう2~3個ずつだが,原始爬虫類では2-3-4-5-3で,この基本数はその後の爬虫類の全体を通じてほとんど変わらない。なお,爬虫類以上の動物には,指の先端背面につめ(爪)が発達している。

 爬虫類の直接の子孫である鳥類では,一般に骨が融合・減少する傾向があり,四肢の骨格にもそれが見られる。前肢(翼)では第1・第2・第3指だけがかろうじて残っているが,それらの中手骨は一部融合しており,指骨も爬虫類の基本数より減少している。第1指と第2指の先端にはつめが痕跡的に残っていることがある。鳥類のこうした〈指〉は退化して物をつかむ働きをもたないが,とくに第2・第3指は翼面積の大きな部分をしめる初列風切羽(手羽)が生える重要な場所なのである。鳥類の後肢では,足根骨のうち近位のものは脛骨と融合して1本の脛足根骨となり,遠位のものは一体化した中足骨と融合して1本の足根中足骨となる。原型的な鳥では,その先に第1~第4指があり(第5指は消失),第1指は後ろ向き,他の3指は前向きに伸びており,これが最もふつうのタイプになっている。指骨数はふつう2-3-4-5-0で,爬虫類の基本数より多くはない。鳥類の足指の形態はくちばしの形態と同じく生活様式に適応してかなり多様である。第3・第4指だけ残っている二趾足(にしそく),第2・第3・第4指だけ残る三趾足,第2・第3・第4指が基部で束ねられた形の合趾足,第1・第4指または第3・第4指が後ろ向きになった対趾足,第2・第3・第4指の間に水かきの張った蹼足(ぼくそく),第2・第3・第4指が平たくなった弁足などが区別される。

 他方,爬虫類の高等化した古生代の哺乳類様爬虫類では,指骨数が基本数より少し減って2-3-3-3-3となり,これがそのまま原始哺乳類の基本数になった。ヒトを含む霊長類は原始型どおりにこの指骨式を維持している。現存の哺乳類では,最もよく原型をとどめている食虫類や霊長類のほか,前・後肢とも5指をもつ動物は数多いが,有蹄類では指数が減少し,つめがひづめ(蹄)になり,中手骨・中足骨が地面から高く離れたいわゆる蹄行性のタイプになっている。この仲間では第1指が早く消失したが,そのうちで4本の指(ブタ)または第3・第4指(ウシ,シカ,ラクダ)だけ残ったのが偶蹄類と核脚類であり,第2・第3・第4指(サイ)または第3指(ウマ)だけ残っているのが奇蹄類である(ただし,前肢の指が後肢より多いことがある)。第3・第4指だけ残っている特殊化の進んだ偶蹄類では,2本の中手(足)骨が互いに癒着して一体化し,いわゆる砲骨になっている。ウマでは第2・第4指の中手(足)骨は痕跡のようになって第3中手(足)骨の上部に付着している。このほか,齧歯(げつし)類のモルモット(前肢の指は4本,後肢の指は3本)のように指数が減少していることはしばしばあるが,どの場合も残っている指の指骨の数はふつう基本数と同じである。哺乳類の指は最大5本をこえることはなく,しかも指骨数が基本数以上に増えているのはクジラ類だけである。コウモリの翼は,前肢のとくに第2~第5指の中手骨と指骨が著しく伸長し,それらの間および第5指と後肢の間に飛膜が張ったものだが,指数は5本で,指骨数も基本数より多くはない。第1指または第1・第2指にはかぎづめがある。クジラ類と鰭脚類(アシカ,アザラシ)の前肢は,水かきが発達し外形的には指の形をとどめない〈ひれあし〉になっているが,骨格の指数は5本である。鰭脚類では後肢もひれあしであるが,指骨の先端(多くはつめをもつ)より先にさらに5本の指の形に分かれた軟部組織が伸びている。水生爬虫類がもつものも含めて,ひれあしは,祖先の総鰭類の有対びれの状態へ二次的に戻ったものということができる。このほか,各種哺乳類の生活様式に応じて手足とその指の形にはさまざまな変形が見られ,つめにも大きく分けて基本的なかぎづめ,それから変化したひらづめ(霊長類),ひづめ(有蹄類)の3型が区別される。

執筆者:

指は各手足に5本ずつあるが,ときには多指症といって過剰指のあることがあり,また反対に隣接指が癒着して見かけ上指数が足りないこともある。これを合指症という。指の構造は指骨がその支柱をなし,その背側と手掌側(足では足底側)とに指を動かす筋肉の腱がついている。指骨は親指では2個,他の指では3個あり,これがちょうつがい(蝶番)関節で連結されているから,各指は2節または3節に折り曲げることができる。骨格と腱の外を皮膚が包んでいるが,指の末端背側ではこの皮膚の表皮が角化して〈つめ〉を作っている。つめは骨とは直接の関係はない。また手掌側(足底側)の皮膚には指紋がある。指の皮膚には皮下組織の発達が悪く,皮膚が骨とかたく結合しているので,指の炎症のときには,特異の経過と激痛をきたす。
執筆者:

《和名抄》にあるように,平安時代までは〈および〉といった指は,中世以後〈ゆび〉となった。《和漢三才図会》は,指の間を〈扐(ろく)〉(指のまた),指の文(線条)を〈腡(か)〉(指のあよ)と呼ぶ《和名抄》を引用している。各指の名称は〈拇(ぼ)(指)〉(おほおよび),〈食指〉(ひとさしのおよび),〈中指〉(なかのおよび),〈無名指〉(ななしのおよび),〈季指〉(こおよび)で,《和漢三才図会》の説明には〈巨指大指也足大指曰拇 食指人指之指也 将指中指也俗云長高指 無名指俗云紅粉付指 季指小指也〉とあり,さらに足に力をかけるとき大指に最もかかり,手で物をとるとき中指が長くて,それぞれ指の将領だからこれらを〈将指〉というと述べる。示指を食指というのは食事にだけ用いたからで,《春秋左氏伝》宣公に,食指の動いた子公がスッポン料理に相伴(しようばん)させられないのを怒り,指を鼎(かなえ)につけてなめながら退出し,霊公の不興を買う話がある。無名指は薬師(くすし)が薬を調合するときにこの指を用いることが多かったので薬指となった。季は〈末〉または〈小〉の意である。

 英語でthumb,forefingerまたはindex finger,middle(long)finger,third finger,little fingerと呼ぶのもほぼ日本と似ている。ただし,拇指だけにfingerの語がなく,薬指は3番目のfingerと称している。先天性奇形の一つに指が5本とも手掌の先に平行して並ぶのがあってfive fingersと称するが,日本語に訳しがたい。thumbは古英語pūmaからきた語で,〈太い指〉の意である。ラテン語でも拇指pollexはpollereに由来して強い指のことで,フランス語pouce,イタリア語polliceとなった。forefingerは中世英語では〈触れるtouch指〉の意のtowcherで,アングロ・サクソン方言では射指scite (shooting) fingerと呼んだ。現在は指示する指index fingerまたは職長foreman,指示者pointerと呼ぶ。long fingerはのっぽlong manともいう。薬指medical fingerという呼称がすでにギリシア・ローマの時代に用いられたのは,この指で薬を調合すれば有毒なものが混じっても直ちにわかるとされたからで,今も薬指以外の指で軟膏を塗ったり肌をかくのは良くないとする迷信が広く残っている。またこれを環指digitus annularisとローマ人が呼び,黄金の指gold fingerまたはannular fingerとアングロ・サクソン人が呼んだのは,心臓とこの指とをつなぐ分枝のない血管(または神経)があるから,これに金の指環(ゆびわ)をはめれば心をとらえることができると信じられたからで,婚約指環は今もこの指にする。ラブレーの《第三之書パンタグリュエル》に,高価なガマ石をちりばめた美しい金の指環を女の薬指にはめる話があるのもこれである。また,little fingerは小人little manともいい,耳の穴をふさいで内なる神の声を聞くことからアングロ・サクソン方言では耳指ear fingerと呼んだ。今もフランス語でauriculaire(auriculeは〈耳〉の意)という。

 W.ブントが指摘するように,身ぶり語は聾啞(ろうあ)者にだけ必要だったのではなく,北アメリカのインディアンの例のように,発音ではなく手指のつくる形や動きによって会話し,抽象的な観念まで表現するものがあった(《民族心理学》)。一般に西欧,とくにフランスやイタリアには身ぶりによる表現が多く,ナポリ人のそれは有名である。古代宗教の予言者たちが民衆をひきつける際に,また古代ローマの法律的習慣として誓約や所有権の主張をするときに,指を掲げたり指示するなどの行為のなかにも身ぶり語はすでに見られたし,12~13世紀にヨーロッパに広がったシトー会修道院が無言の生活を旨として,身ぶりによる意思疎通を発達させた歴史的背景もある。したがって,いわゆる未開社会の風習としてだけでなく,宗教的ないし法律的習慣としても手指によることばが通用していた。これは仏教でも同じで,例えば合掌するときの左の指は,親指から順次人間・修羅・畜生・餓鬼・地獄を,右手は親指以下順次仏・菩薩・縁覚・声聞・天上の十界を表したり,同様にして十波羅蜜や十地を表示し,あるいは合掌する両側手指が五蘊・五大・五色・五仏ほかを表すなど,その象徴性は極限に達している。平安末期に流行した呪師(しゆし)猿楽の手印にも,仏教の影響を色濃く受けた陰陽道の姿が見られるとされる。これらに比べればナポリ人の手指による身ぶり語には日本の影絵遊びを思わせるものもあって直截(ちよくさい)的である。

 金山宣夫《ノンバーバル事典》には,示指を立てるのは主として数の1を表し,中指を立てればおもにペニスや性交を,示指と中指をV字形に立てれば勝利・平和・数の2を,また小指を立てれば女・矮小(わいしよう)・友情のいずれかを表す,などの詳しい例がみえる。握った示指と中指の間から拇指を出したり,片手の拇指と示指のつくる輪の中に他側の示指を出し入れするしぐさが,もっぱら性器や性交を示すなどとあるが,前者はすでに,シェークスピアの戯曲にも侮べつと性的罵倒(ばとう)のしぐさとして見られる。これらの身ぶり語を手話として体系化することは,17世紀にスペインで始められ,18世紀中葉パリに世界初の聾学校を建てたエペーによって本格的に整備されたといわれる。両手の指でアルファベットを表す方法で,やがてヨーロッパ各地に広がり,指による表意の方法を加えて改良を重ね,現在に及んでいる。指は日本の手話法でも活躍している。

 右利き,左利きは主として指の動作の巧拙できまる。人は生後まもなくは両利きだが,1歳に満たぬうちに利手がほぼ明らかになって生涯続くが,老齢になると利手の能力が衰えて再び左右差が少なくなる。言語中枢の偏在と関連するといわれ,利手を矯正しようとするとどもるなどというが,つまびらかではない。人以外の霊長類でも右利きが多く,熊には利手の差はないし,鳥の片脚立位が利足に関係するとすれば鳥類には左利きが多いという報告もある。遺伝と生活習慣との相乗によって人の利手はつくられるものと考えられるが,右利きが多いので右を優位とする価値観が古くからあった。ギリシア語,ラテン語,英語,ドイツ語,フランス語,イタリア語その他いずれも右は〈正しい〉の意である。古英語ではrightでなく〈強いstrong〉の意のswiðraであったが,同様の価値観によると思われる。これに反してleftは古英語left(〈弱い〉の意)による。〈左〉のラテン語,フランス語,イタリア語などはそれぞれ〈不幸〉〈ゆがみ〉〈不吉〉などを意味し,左利きは嫌われた。これは宗教にも表れてイスラム教徒は左を用便の手とする。ただし中国では時代によって左右の価値観は一定していないし,日本でもかつて,左は正しく右は歪曲(わいきよく)しているとみて,左大臣は右大臣より上位だった。ポリネシアマオリ族は,左に通常性を認めて右に禁忌ありとするから,利手の傾向と左右の価値観は必ずしも直結するとはいいきれない。

 ヨーロッパの占星術的手相学では,拇指は金星,示指は木星,中指は土星,環指は太陽,小指は水星の表徴で(B. ジョンソン《錬金術師》),指の相と運勢を詳細に論じているが,これは中国や日本の手相学でも同様である。また指という概念には,拇指,示指などを区別するものが含まれていないから拇指は指ではない,という白馬非馬論式の詭弁があるが,荘子はこれを退けて,指が指であって指でない道枢の立場を強調し〈天地一指也〉と唱えた(《荘子》内篇)。仏陀の手足の指は猿のように長くて,根もとは太いが先にいくにつれて細く,指先には毛の渦があって吉祥の印があったうえ,指間にはガンの水かきのような膜があったというが,各指が規格となって相互に連関しているのを網状とたとえたにすぎないとする説もある。エジプト神話には,ペピ1世が天上へのはしごを登ったときに,はしごの神が2本の指で支えて登るのを助けたとか,オシリスがラーの船に乗ったとき,ホルスが2本の指で運んでジャッカルの湖でみそぎをさせたなど,〈神聖な2指〉の伝説がある。キリスト教にも,使徒トマスを殺害した下手人が自分の指を食べる病気になったとか,グレゴリウスの祈りによってパンの1片が指に化したのをみて入信した女の話などがある(ヤコブス・デ・ウォラギネ《黄金伝説》)。日本では〈二本指〉といえば,男が女性器にたわむれる探春のことであり,〈指人形〉ともいった。川柳に〈門口で医者と親子が待っている〉とある。江戸時代の遊女が顧客への心中立てとして指をつめる〈指切り〉をしたのは,以後隠すことなく元に戻らない決意のあかしで,やくざの間では処罰の一法として行われる。約束の指切りのしぐさにはこの両者の意図が含まれている。
 →右と左
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普及版 字通 「指」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 9画

[字音]
[字訓] ゆび・さす・むね

[説文解字]

[字形] 形声
声符は旨(し)。旨に旨肉の意がある。〔説文〕十二上に「手指なり」という。第二指を食指というように、指は肉を執って食すべきものであった。またと通用する。は趣旨というときの旨にあたる字。

[訓義]
1. ゆび、手足のゆび。
2. ゆびさす、さす、さししめす。
3. かぞえる、ゆびおる、さしずする、むかう。
4. 旨・と通じ、むね、おもむき、こころ。

[古辞書の訓]
〔和名抄〕指 由比(ゆび)、俗に云ふ、於與比(および) 〔名義抄〕指 ユビ・オヨビ・ムネ・サス・シメス・ユビサス・ムナシ/指南 シルベ/指 ヒトサシ・ヒトサシユビ

[語系]
指・・旨tjieiは同声。趣旨の意では三字みな通用する。古くは旨・指の字を用いた。

[熟語]
指意・指引・指印・指遠・指瑕・指画・指画・指帰・指揮・指麾・指・指擬・指挙・指教・指抉・指訣・指呼・指顧・指語・指甲・指告・指婚・指痕・指使・指支・指視・指示・指事・指似・指日・指射・指尺・指趣・指受・指出・指疽・指省・指称・指証・指縦・指掌・指状・指食・指辰・指津・指針・指数・指趨・指正・指政・指斥・指切・指節・指尖・指・指嗾・指湊・指爪・指達・指端・指弾・指陳・指定・指摘・指・指点・指・指肚・指頭・指導・指南・指撥・指臂・指付・指諷・指腹・指拇・指名・指明・指迷・指目・指約・指要・指略・指令・指論
[下接語]
按指・意指・一指・運指・希指・耆指・技指・掬指・脚指・夾指・玉指・屈指・見指・建指・顧指・巧指・使指・辞指・十指・笑指・掌指・上指・食指・錐指・寸指・盛指・聖指・繊指・堕指・大指・断指・弾指・直指・臂指・微指・文指・拇指・本指・妙指・明指・目指・約指・諭指・要指・犖指・僂指・歴指

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「指」の意味・わかりやすい解説


ゆび

脊椎(せきつい)動物の四肢(しし)の末端で数本に分かれた部分をいい、ヒトでは左右の上肢、下肢にそれぞれ5本ずつあり、中手(足)指節関節から先の部分に相当する。指の骨を指骨とよび、各指は母指(ぼし)(親指(おやゆび))を除いて基節骨、中節骨、末節骨の3本から構成される。母指だけは中節骨がなく、基節骨と末節骨だけである。

 手の各指は橈骨(とうこつ)側(母指側)から順に第1指、第2指~第5指とよぶ。第1指は拇指(ぼし)とも書き、第2指は示指(しし)・人差し指・食指(しょくし)、第3指は中指(ちゅうし)(あるいは「なかゆび」)、第4指は環指(かんし)・無名指(むめいし)・薬指(くすりゆび)・紅(べに)さし指、第5指は小指(しょうし)(あるいは「こゆび」)などともよばれている。手の指の関節のうち、基節骨と中手骨(手のひらを構成する骨)との間(指の付け根に相当する)の関節は、母指の場合を除いて、球関節の構造をとり、自由な方向に運動できる。母指の場合は蝶番(ちょうつがい)関節で、屈伸運動のみである。このほかの各指節骨の間はすべて蝶番関節となるため、指は屈伸運動しかできない。指の大まかな屈伸運動は前腕の筋(きん)から出る長い腱(けん)によって行われるが、指の細かな屈伸運動や開閉運動、物をつかんだり、ねじるような運動は、手掌にある小さい筋群の協調的働きによって行われる。なお、母指と小指とを近づけるという、ヒトに特有の運動は、母指と小指の根元にある膨らみ(母指球と小指球)の中にある筋群によって行われる。

 足の指の骨の構成は、手の指の骨と同じであるが、運動性は、屈伸以外にはほとんどない。とくに足の小指は退化傾向が著しく、中節骨と末節骨とが骨性癒合していることもある。手および足の指の皮下組織は脂肪も少なく、神経や血管が豊富に分布しており、知覚もきわめて鋭敏である。指や爪(つめ)に炎症をおこしたとき、激痛に悩まされるのはこのためである。

[嶋井和世]

動物の指

指は、魚類でひれの先端を支えていた骨格が陸上生活に適するように変化して生じたと考えられている。両生類におけるその出現以来、指は5本に分かれていて(五指性)、あらゆる脊椎動物において基本設計は共通である。しかし、2、3、4本のこともあり、現生のウマでは1本だけが発達している。指にある指骨の数は、哺乳(ほにゅう)類では母指が2個、他の指が3個であるが、爬虫(はちゅう)類や魚類には4~5個からなる指もある。爬虫類以上の動物には指の背側にその末端を保護する、さまざまな形のつめをもつものがある。指は動物の生活様式による変異がみられ、樹上生活を営むものでは手が発達し、指が長い。コウモリでは前肢の母指に鉤(かぎ)づめがあり、他の指は長く伸びてその間に飛膜が張っている。クジラやアシカの前肢は水かきが発達しているが、内部の骨格は五指性を保っている。

[川島誠一郎]

民俗

各指には、それぞれの名称と使い分けがある。親指は、岩手県九戸(くのへ)郡あたりで「へびがしら」という。形がヘビの頭に似ているからであろう。悪い夢に襲われる人は、この指をかんで寝るとよいという。道で葬列や霊柩車(れいきゅうしゃ)にあうと、親指を中にして手を握り締めるという伝承は、いまも実行している人が少なくない。犬を怖がる人は、同様に手を握り締め、「戌亥子丑寅(いぬいねうしとら)」と三度唱えると、犬にほえられないというし、流行病の人を見舞いに行くときも、同じ呪法(じゅほう)によって感染が防げるというから、防衛呪術の一種であることがわかる。人差し指はその名のとおり人を指さす指である。衆人の前で1人を指名するとき、この指で当人を指さす。沖縄の婦人が手の甲から指先にかけて、矢のような模様のいれずみをしたのは、その指示の力を増大する手段であり、社会の統制も軍陣での進退も、いれずみを施した巫女(みこ)の指先の指示に従っていたのであろうという説がある。中指には、いちばん長いという特徴から、「高々指(たかたかゆび)」とか「高太郎」などの異名がある。

 薬指は、5本の指のなかでは日常はもっとも使われることの少ない指で、そのため汚れていないためか、粉薬をちょっとなめてみたり、塗り薬をつけたりするときに使う。この指を「紅さし指」とよぶ地域も広い。紅おしろいをつけて化粧することは、本来は変身を示すものであり、神がかり状態にあることを表示する手段でもあった。したがって紅をつける指にも神秘性が付きまとう。この指の名をあからさまによぶと、薬の効果が失われ、変身が順調に進まないと考えられ、名をよぶことが忌まれている。『和名抄(わみょうしょう)』では「ななしのおよび」と読ませており、いまでもこの指は無名指(むめいし)とよばれている。南島にはいまも異名が多い。奄美(あまみ)大島では名知らず、沖縄本島では名なし指・知らぬ指、与那国島(よなぐにじま)では涙指、波照間島(はてるまじま)では「いだしぐるさるびい(出し苦しい指)」などとよんでおり、これらの多くは忌みことばである。小指のことを秋田県鹿角(かづの)地方で「かんたらゆび」、青森県津軽地方で「かんこよび」という。酒の燗(かん)をみるとき、この指を酒の中に浸(つ)けて温度をみるからである。

 指が計数・計量に使われることはよく知られている。数をかぞえるときは指を折る。十進法は両手の指を数えることから出発し、十二進法はそれに両手を加えたものだという。親指と人差し指とを広げて、その間隔を長さの単位にしているし、指1本を伏せた幅を「伏せ」という。腕をいっぱい伸ばし、「前方の森から指3本左」などと、見えにくい目標を指示することもあるし、画家や写真家は親指と人差し指で枠をつくり、風景などのトリミングに利用することもある。

 指はまた、しぐさでなにかを表現するボデイランゲージbody languageに使われる。親指と人差し指で丸をつくると、お金またはOKを表し、人差し指の先を曲げると泥棒を表す。人差し指と中指でVサインを示せば勝利を示す。人差し指を口に当てると「静かに」の意、親指は男、小指は女を表す。また印(いん)をつくるとか結ぶとかいって、仏像の指で特定の形を示し、その形によって悟りや誓願の内容を表す。転じて真言密教(しんごんみっきょう)で僧が呪文(じゅもん)を唱えるとき、指で種々の形をつくることをいう。

 礼儀作法にも三つ指をつくなどのことがあり、人を指さすのは失礼にあたる。後ろ指をさされる、つまはじきなども、社交上の用語である。指に関する俗信は数多くあり、親指を隠すなども一例であるが、指の長さや指紋で占いをしたり、両手の指を組んだすきまから見ると化け物の正体が見えるとか、蛇を指さすと指先が腐るなどという。遊びでは、指笛、指相撲(ゆびずもう)、じゃんけん、指切りなどがある。

[井之口章次]


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百科事典マイペディア 「指」の意味・わかりやすい解説

指【ゆび】

脊椎動物の上下肢の末端部の分かれた部分。後肢の指を〈趾〉と書いて区別することもある。指の数は基本的には5本だが,癒合や退化により,見かけ上それより少ない数の指をもつものも多い。ヒトではそれぞれ5本ずつ。第1指〜第5指と呼ばれるが,手では親指(母指),人差し指(示指),中指,薬指,小指の名がある。各指は基節,中節,末節の3節からなるが,第1指だけは2節。末節先端背面には爪(つめ)をそなえ,手指ではその掌側面は丘状の触球というふくらみを作り,触覚が鋭敏で,指紋が明らかである。
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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【度量衡】より

…ただしこの単位の実体もあいまいであって,尺についていえばおよそ20~32cmにわたっていた(一般に時代が下るにつれ実長はのびた)。 (イ)の系統に属するものは,以上のほかにもいろいろあり,4本の指を並べた幅(日本のつか,イギリスのパームpalmなど),親指の幅(中国の寸,ドイツのダウメンDaumen,オランダのドイムduimなど),人差指または中指の幅(イギリスのディジットdigit,フィンガーfingerなど),げんこつの大きさ(ドイツのファウストFaust)その他,実例はきわめて多い。ただしそれらすべてが独立に基準として採用されたわけではなく,〈パームはディジットの4倍〉のように,いわゆる倍量または分量として間接的に定められた場合もあった。…

【バナナ】より

…直立した果軸に大きな果実がつくので,東南アジア系のバナナからすぐに区別できる。【堀田 満】
[栽培,生産,利用]
 商品としてのバナナの全果房もしくは果叢(かそう)はbunch,段切りした果掌または果段はhand,1本ずつの果実(果指)はfingerという。経済栽培の品種は全果房が十数段の果掌で,1果段に15本内外の果指を有し,1果指が約200gとすれば,1果房は20~30kgとなる。…

【手】より

…手ということばには二つの意味がある。一つは広義の用法であり,俗の呼び方でもあって,上肢全体を指す。もう一つは狭義の用法であり,解剖学用語でもあって,手首から先を指す。…

※「指」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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