好・数奇・数寄(読み)すき

精選版 日本国語大辞典 「好・数奇・数寄」の意味・読み・例文・類語

すき【好・数奇・数寄】

〘名〙 (動詞「すく(好)」の連用形の名詞化)
① (形動) 物事を愛好する心持。すきこのむこと。また、そのさま。
※咄本・座笑産(1773)好物「ほうびをとらそふが、一ばんにおのしがすきはなんだ」
諺苑(1797)「亭主のすきの赤ゑぼし」
草枕(1906)〈夏目漱石〉九「あなたは小説が好きですか」
② 風流、風雅の道に深く心をよせること。風流の物好み。
無名抄(1211頃)「哥枕ども見んとて、すきに事寄せてあづまの方へ行きけり」
※虞美人草(1907)〈夏目漱石〉三「蒔絵の舌を気高しと思ふ数奇(スキ)も有(も)たぬ」
③ 風流、風雅の道。和歌茶の湯など。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「只今のすきは、あぢきなくぞ侍る」
日葡辞書(1603‐04)「Suqiuo(スキヲ) スル。〈訳〉茶の湯にはげむ」
④ (形動) 恋愛の情趣を好むこと。女色を好むこと。また、そのさま。色好み。
源氏(1001‐14頃)宿木「さはれ、なをざりのすきにはありとも」
黒潮(1902‐05)〈徳富蘆花〉一「いやに質味(じみ)な徳川翁も中々の好色(スキ)であった」
⑤ (形動) 自分の思うままにふるまうこと。また、そのさま。好き勝手
洒落本南閨雑話(1773)鋪の体「よふ、すきな事をいひねんすのヲ」
⑥ (形動) 物好きなこと。また、そのさま。
[語誌]②③の場合には、「数奇」「数寄」と表記されることが多い。この表記は、「元和本下学集」に「数奇(スキ) 辟愛之義也」とあるように、愛着程度が並でない状態を指していた。中世前期は、主に和歌についていったが、中世後期以降になると、茶の湯や華道について使用された。当て字と考えられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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